3歳牝馬クラシックの第1弾、GI桜花賞(阪神・芝1600m)が4月7日に行なわれる。

 昨年は、リバティアイランドが単勝1.6倍という断然の支持に応えて快勝。そのまま、GIオークス(東京・芝2400m)、GI秋華賞(京都・芝2000m)も制して、牝馬三冠を達成した。

 しかし、桜花賞の歴史を振り返ってみると、1番人気の馬は意外と苦戦している。昨年のリバティアイランドの勝利も、2014年のハープスター以来、実に9年ぶりとなる1番人気の勝利だった。

 はたして、今年はどうか。スポーツ報知の水納愛美記者はこう語る。

「今年は、昨年のリバティアイランドのような絶対的な存在がいないうえ、GIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)を牡馬相手に勝利したレガレイラがGI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)へ向かうことになって、かなりの混戦模様と見ています。

 そんななか、最も信頼度が高いのは、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)の覇者アスコリピチェーノ。3戦無敗の2歳女王で、競馬ぶりも安定しており、その実績どおり人気を集めるはずです。ただ、桜花賞は過去10年で1番人気がわずか2勝。絶対視するのはどうでしょうか......」

 確かに、過去にも無敗で桜花賞に臨んで人気を背負いながら、思わぬ敗戦を喫した馬が何頭もいる。2015年のルージュバック(9着)、2017年のソウルスターリング(3着)、2018年のラッキーライラック(2着)らがそうだ。そうした例を見る限り、アスコリピチェーノも決して盤石とは言えない。

 さらに、水納記者は他の人気馬にも疑問の目を向ける。

「予想を難解にさせている存在とも言える、チェルヴィニアです。GIIIアルテミスS(10月28日/東京・芝1600m)の勝ち方から相当な素質を感じますが、左後肢の違和感で阪神JFを回避。今回は、約5カ月ぶりの実戦となります。

 さすがにこの間隔での出走を軽く考えることはできません。最終追い切りでは軽快な動きを見せていましたが、実戦感覚がどうか。気になるところです」

 人気どころに不安要素があるなか、水納記者が注目したのはクラシックの前哨戦だ。

「近年、クラシック本番への直行ローテを選ぶ陣営が増え、有力各馬の仕上がりの見極めや、他馬との実力比較が難しくなっています。そこで、目を向けたいのがトライアル組です。

 桜花賞においては特に、同じコース、同じ距離で行なわれるGIIチューリップ賞(阪神・芝1600m)組は無視できません。昨年もチューリップ賞2着のコナコースト、3着のペリファーニアが、桜花賞でもそれぞれ2着、3着と好走。同じ舞台の重賞で結果を残している馬には、やはり注意を払うべきでしょう。

 ですが、先にも触れたとおり、今年は昨年のような"1強"ムードではなく、群雄割拠の様相。馬券的な妙味をより求めるなら、"王道"のトライアル以外の前哨戦を勝ってきた馬。穴馬候補とするなら、そういった面々でしょうか」

 そこで、水納記者は2頭の激走候補の名前を挙げた。

「1頭目は、ライトバック。出世レースでもあるリステッド競走のエルフィンS(2月3日/京都・芝1600m)の勝ち馬です。

 とにかく印象的だったのは、同レースでの勝ちっぷり。狭いスペースの馬群を割って抜け出す姿に勝負根性を感じましたし、先に先頭に立った2着馬をきっちり差しきったのも見事でした。その2着馬がチューリップ賞で豪快な差しきり勝ちを決めたスウィープフィートという点も価値があります。


エルフィンSを勝って桜花賞に臨むライトバック。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 気性面を考慮し、陣営は当初から『桜花賞に行くなら(エルフィンSからの)直行。賞金が足りなくてもトライアルは使わない』と表明していました。それだけに、今回のゆったりとしたローテーションは何よりの好材料です。

 また、同レースで手綱をとった坂井瑠星騎手が、この馬について『折り合いをつけるのは難しいが、今年乗った3歳牝馬のなかではかなり能力が高い』と評価。そのまま、同騎手が継続騎乗で本番に臨めるのは心強い限りです」

 水納記者が推すもう1頭は、GIIIフェアリーS(1月7日/中山・芝1600m)を勝って挑むイフェイオンだ。

「過去10年でフェアリーSを勝って桜花賞に直行した馬が馬券に絡んだのは、2021年に3着となったファインルージュだけですが、同馬を含めて直近5年でフェアリーSの上位馬が3頭も桜花賞で馬券圏内に入っています。ファインルージュのほか、2020年に3着に入ったスマイルカナ、2022年に勝利したスターズオンアースがそうです。となると、この馬も軽視は禁物です。

 同馬の武器は、何と言っても立ち回りのうまさ。未勝利を勝ったときから、位置を取る早さ、道中の折り合い、上がりの鋭さと、すべて優秀でした。

 フェアリーSでも有利とは言えない8枠13番からの発走でしたが、そこからスムーズに先団につけて、直線で鮮やかに抜け出していきました。阪神競馬場は未経験ですが、中山のマイルを難なくこなしているので、問題なく対応できるでしょう。

 同馬を管理する杉山佳明厩舎は開業4年目でクラシック初挑戦となりますが、2022年のGINHKマイルCでは最低18番人気カワキタレブリーの3着激走という結果をもたらしました。今回も、いい意味でファンを裏切るような仕上げで臨んでくるのでは? と期待しています」

 熾烈な争いが予想される今年の桜花賞。その分、どの馬が勝ってもおかしくない。無論、ここに名前が挙がった2頭が勝ち負けを争って、高配当を演出する可能性も大いにある。

著者:土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu