上薗恋奈 インタビュー前編(全2回)

 彗星のごとく現れるーー。

 2023−2024シーズンの上薗恋奈(13歳/LYSフィギュアスケートクラブ)は、まさにその形容そのものの躍進ぶりだった。


愛知・モリコロパーク アイススケート場でインタビューに応じた上薗恋奈

 ジュニアグランプリ(GP)シリーズのイスタンブール大会で2位、ポーランドのグダニスクで行なわれたソリダリティ杯で優勝、北京でのジュニアGPファイナルで3位と表彰台に立っている。

 全日本ジュニア選手権も3位に入ると、全日本選手権にも出場。ジュニアデビューシーズンにもかかわらず、坂本花織など錚々たるシニアメンバーのなかで、なんと4位に入った。

 そして今年3月、台北で開催された世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得し、鮮烈なシーズンを締めくくっている。

<これからの日本のフィギュアスケートを背負う逸材>

 関係者の間で噂される上薗の実像とはーー。13歳、中学2年生の少女の「今」に迫った。

【ひとりで表現できるスケートの魅力】

ーー3歳の頃、浅田真央さんがソチオリンピック後に名古屋を凱旋した時、「手を振ってもらった」というのがきっかけでスケートに興味を持ったそうですが、浅田さんにはその後、会う機会はあったんですか?

上薗恋奈(以下同) (浅田真央が座長を務めたアイスショーの)『ビヨンド』でお会いしたことがあります。(樋口)美穂子先生がお話をしていて、私はごあいさつをしただけですが......ソチオリンピックのフリーは憧れなので、お会いできてうれしかったです。

ーーフィギュアスケートを始めたのは5歳の時。最初に何に夢中になったんですか?

 自分の場合はジャンプが好きでした。新しいジャンプが跳べるようになったり、同じジャンプでも質が上がったり、そういうのがすごくうれしくて。それに、スケートは大きなリンクで、ひとりで氷の上に立って表現できるっていうのがすごくいいなと思いました。

ーー大勢の注目を一身に浴び、緊張はしませんか?

 試合の時は、やっぱり緊張はあります。けど、みなさんに見られているから緊張するというのはなくて、逆に見てもらっているほうがうれしいです。応援してくださっている方々のためにも頑張れるって思うので、むしろ見てほしいなと。

【快挙のシーズン前にあった猛練習】

ーーそれにしても、13歳のシーズンでこれだけの記録を残し、演技でインパクトを残せると思っていましたか?

 去年の今の時期(2023年5月)は、ジュニアグランプリの選考会に出られるのが決まっていて、先生方と追い込んだ練習をしていました。もともと、出たいなという気持ちは強かったので、シーズン最初にすごく頑張ったという記憶があります。

 それで先生方のおかげで結果もついてきて、ケガなくシーズンを過ごすことができました。本当に、みなさんのおかげだなと感謝しています。

ーー昨シーズン、いきなり頭角を現した理由はどこにあるのでしょうか?

 美穂子先生が「練習で全力を出す」ことを教えてくださったのが大きいのかと思います。

ーーそれが試合につながったのですね。樋口先生に、これまで一番よく言われたアドバイスって何ですか?

 めっちゃ、いろいろ言ってもらってるので(笑)。でも、自分はジャンプの跳び急ぎがあり、ジャンプの調子が悪くなっちゃうと、プログラム全体もよくなくなってしまうことがあるので、そこは先生に教えてもらったように心がけるようにしています。

【活躍を支えるコーチの言葉と観客の応援】

ーージュニアデビューシーズンの13歳で、全日本選手権4位は快挙と言えるでしょう。ショートプログラム(SP)が終わった段階で最終グループ入りし、メディアのなかでも「小学5年生で表彰台に立った伊藤みどり以来、43大会ぶりの快挙か!?」と騒がれていたほどで......。

 フリーの最終グループに入れて、自分でもやっていて楽しかったです。あの舞台で自分の演技をできたのは、すごくよかったなって思います。

ーーSPが終わったあと、樋口先生からはどんな言葉をかけられましたか?

 先生には「13歳での全日本はこれで最後だよ」って言っていただきました。そして、「集中して頑張って滑って」って。おかげで自分の演技に集中できました。

ーー練習と同じ精度で試合でも滑っているように見えました。それは決して、簡単なことではありません。

 練習は好きです。練習をしっかりやっておかないと、試合でも自分の演技を出せないので。どっちも大事だと思ってやっています。

ーーフリーでは体力的にかなりきついはずの構成なのに、むしろ終盤に活力が増したようにすら映りました。

 やっぱり演技を続けていると体力は減っていきます(笑)。でも、会場の手拍子で頑張れたっていうのはありますね。本当に、先生方にいろいろ教えていただいたおかげで、あそこまでできたのかなって。

ーー全日本のSPは火星を想起させるような深紅の衣装、フリーは白地にゴールドで王女のような衣装でした。これを着たい、と思う衣装は?

 衣装は......先生と衣裳の方にお任せしています!

【スピードを出しながらのジャンプが強み】

ーー全日本のフリーでは冒頭、3回転ルッツ+3回転トーループの大技をみごとに決め、3回転フリップ+2回転トーループも完璧に降りていました。トージャンプが得意ですか?

 アクセルとルッツが好きです。アクセルはトリプルも挑戦していきたいです。(最高難度の)ルッツはトリプルをやるようになってから、得意になってきて。ルッツはアウトじゃないと跳べなくて、どちらかというとフリップにアテンションがついてしまうことがあるんですけど。

ーーインタビューのなかで、「自分の魅力を見せたい」と強調している記事を見かけましたが、「自分の魅力」とは?

 スピードを出しながらジャンプを飛べること、だと思います。また、プログラムの曲に合った表現をすることが好きなので。自分のできることを全力でやって、観ている方々に届けられる演技がしたいですね。

後編<「休日はおしゃれしてお出かけしてます!」13歳・上薗恋奈が意識するオンとオフ...来季はトリプルアクセルに挑む>を読む

撮影協力/愛・地球博記念公園(モリコロパーク)

【プロフィール】
上薗恋奈 うえぞの・れな 
2010年、愛知県生まれ。5歳の時からフィギュアスケートを始める。現在は、樋口美穂子コーチのLYSフィギュアスケートクラブに所属。2023−2024シーズンは、ジュニアGPファイナル3位、全日本ジュニア選手権3位、全日本選手権4位、世界ジュニア選手権3位など大躍進。

著者:小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki