現在、5歳の女の子と3歳の男の子のきょうだい育児に奮闘中のフリーアナウンサーの吉田明世さん。新年度の始まりとともに、新しいことにチャレンジした経験について聞きました。育児エッセイ第48回です。

祖母からの伝承『お背中カイカイ』

わが家には、代々受け継がれている入眠方法があります。その名も『お背中カイカイ』。
ネーミングですでにお察しいただけるとは思いますが、寝る時に背中を優しくさするように掻くことで、気持ち良さのあまりいつの間にか眠りに落ちるという技法です。

私が小さいころにしてもらった寝かしつけで、いちばん記憶に残っているのは、母にしてもらったカイカイではなく、なぜか祖母にしてもらったカイカイでした。
祖母の家に泊まりに行った際、日々の家事仕事により少しカサカサした祖母の指先がなんとも気持ちよくて…。母と離れて眠ることの寂しさを忘れることができるほどの効力をもつ祖母のお背中カイカイは、寝る前の大好きな時間でした。

そんな私もいつの間にか成長し、1人で眠るようになってからは自分が昔カイカイしてもらっていたこと自体をすっかり忘れていたのですが、ある日突然、娘に「ママ、カイカイして」と頼まれたことにより、30年ぶりに当時の記憶がよみがえりました。
一体どこでカイカイの気持ち良さを覚えたのか?と思ったら、どうやら娘が実家に泊まったときに、私の母が娘の背中をカイカイして寝かしつけていたようです。カイカイの気持ちよさを知ってしまった娘。私がカイカイすると「ママのカイカイより、ばあばのカイカイのほうが気持ちいいんだよなぁ」と発言するところも、昔の自分と同じなもんで笑ってしまいます。(家事仕事歴はもちろん母のほうが先輩ですから、指先のカサカサ具合も母にはかないません。笑)

ひょっとしたら、この『お背中カイカイ』は祖母のまた祖母、そのまた祖母と、世代を超えていつの間にか受け継がれていたのかもしれません。今となっては祖母に聞くことはかないませんが、母から子へ受け継ぐものは、愛情表現の一つとしてこんなところで現れるのかもしれないなと思うととてもうれしい気持ちになりました。
もしいつか自分に孫ができたら、お背中カイカイを受け継いでいきたいなぁなんて夢がふくらみます。

新派閥登場!『ママの腕スリスリ』

ちなみに息子はというと、どうやら『お背中カイカイ』はそこまで求めておらず、ハマっていない様子。その代わり、寝る前は必ず一心不乱に私のパジャマの袖をめくり、私の腕におでこや唇、顔面を擦り付ける『ママの腕スリスリ』という謎のリラックス方法がお気に入りの様子。

左手はカイカイ、右手はスリスリ。毎晩私の両手は大忙しですが、これもきっと今だけのお楽しみですね。「もう、1人で寝る」と言われてしまうその日まで、求めてくれる日が続く限り、自分の眠けと闘いつつこの瞬間の幸せをかみしめながら、今夜も夢の中へ行くのでした。

文・写真/吉田明世 構成/たまひよONLINE編集部

●記事の内容は2024年4月の情報で、現在と異なる場合があります。

吉田明世さん(よしだあきよ)

PROFILE
1988年生まれ。2018年5月に女の子を、2020年12月に男の子を出産した。TBSのアナウンサーを経て、19年にフリーとなり、東京FM「ONE MORNING」(月〜金6時〜9時)「THE TRAD」(月・火15時〜16時55分)レギュラー。ほかにTV、イベント、コラム連載など幅広く活躍中。保育士資格のほか、絵本専門士の資格も取得。2022年、初の絵本「はやくちよこれいと」(インプレス)を出版。