ヒーローインタビュー、今週は世代を超えてチャレンジできる、ボウリング。
17歳の高校生ボウラー、宮城県大崎市にある古川学園高校の我孫子美葵(あびこ・みき)選手です。
ユースの全日本ナショナルチームのメンバーにも選出された逸材。国際大会にも出場し、安定した成績を残す彼女の強さの秘密とは。
「スタバ行くとか無理だな」練習の日々
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「ボウリング始めたのが小学校1年生からなので、父と母が最初ボウリングをやってまして、最初はハウスボール、ボウリング場に置いてあるボール投げて楽しいなと思ってそこから マイシューズとかマイボールを買ってもらって そこから本格的に投げ始めた感じです」
学校を終えたらボウリング場へ、ひたむきに10本のピンと向き合ってきました。
その奥深さに魅せられた我孫子選手は、遊びから競技へ、アスリートとしての道を歩み始めたのです。
アジアジュニア選手権銀メダル、かごしま国体で個人6位など、キャリアを積んでいる安孫子選手ですが、高校生らしい悩みも…。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「練習もいっぱい入ってますし。もちろん休みとかないので、友達と放課後プリクラ取りに行くとか、一緒にご飯食べに行くとかスタバ行くとか無理だなって 」
ボウリングは繊細な競技
レジャーとしては広く知られるボウリングですが、競技として向き合うと、知られざる”繊細さ”があります。
我孫子選手の手の指には、いくつものテープが巻かれていました。
番組ディレクター:
「なんか怪我しているのかなって」
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「これテープで、ボールの指の穴の中にもテープ張ってて。親指ここにもテープ張っているので、入れてみて、その日の気温とか指のむくみとかによって調整する」
番組ディレクター:
「そうゆう微妙な違いなんですね」
さらに重要なのは、レーンのオイルです。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「見たときに(レーンにオイルが)塗ってないところあるの分かりますか。端っことか投げてみて曲がらないなってなったら、もうちょっと強いボールで投げてみるとか。ストライク出るぞってところを、早く見つけておくことが結構重要です」
フォームの安定はもちろん、変化する環境への柔軟な適応も不可欠です。
彼女の難敵「ベビースプリット」
長年とりくんでも、そびえ立つピンはいまだ彼女を悩ませます。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「ベビースプリットって言って右側3本並んでいるんですけど、そのうちの真ん中がないんですよ。真ん中がないパターンなんですけど、この微妙な間を狙うっていうのが(難しい)」
番組ディレクター:
「体は温まりました?では、それを見せてください」
右側3本のうち、真ん中の1本がない2本の状態、これがベビースプリット。番組ディレクターのオーダーでこの2本を倒せるのか。
1回目のトライは、1本だけ倒れました。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「もう1回やります」
今度は見事、成功!
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「よっしゃ!」
思わずガッツポーズの我孫子選手、ボウリングは奥深いものだと話します。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「ストライクって、やっぱかっこいいっていうか、10本ピンが倒れるってかっこいいじゃないですか。でも、やっぱりそうじゃなくて、1本残りのスペアはちゃんと取るとか。ストライクよりもスペアの方が大事。ボウリングは地道な作業。奥深さがある分、すごいやって楽しいと思うので、そこはボウリングのすごくいいところなのではないかなと思います」
恩師の存在
ストイックなボウリング道を突き進む彼女には、その成長を支え、教え導く重要な人物がいます。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「自分がボウリングを始めた頃からレッスンしていただいてる松宮宏プロっていう方がいるんですけど、ボウリングの大事な部分をすごく教えてくれた方なので」
安孫子選手を小学生時代から指導している元プロボウラー、その姿はやはりボウリング場にありました。
松宮宏さん。1970年にプロ入りし、77歳の現在もジュニアの育成や競技の普及を続けています。
松宮さん曰く、ボウリングはそもそも単純なスポーツ、変わらぬレーンと変わらぬ10本のピン。それを複雑にするのは人間の心だと語ります。
元プロボウラー 松宮宏さん:
「無の境地だと思う。俗に言うゾーンに入るっていうじゃないですか。何のスポーツでも一緒だと思うんですけど、ボウリングなんか特にそうだと思うんですよ。 (安孫子選手は)リズムがうまい、取り方があってる。毎回、同じようなリズムでできてる。何も考えないで投げているんだと思うんだけど、ただ淡々と同じにできてる。勝てる人間になると思う。いいものもってるもんね」
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「決勝戦とか1対1とかの時は、なるべく自分のスコアだけに集中してスペアを確実に取れるかとか。松宮先生がいなかったらほんとに今の私は無いなって」
実戦でみせた強さ
4月、仙台市内で高校の公式戦、彼女の強さは実戦でこそ発揮されます
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「東北高校選手権の予選に出ます。頑張ります」
東北高校選手権の予選。日々、腕を磨く学生ボウラーたちが練習の成果を試します。それぞれ6ゲーム、合計スコアの勝負です。
安孫子選手、まずはレーンの感触を確かめます。
ストライクを取って好スタート、と思いきやすぐさま、ボールの指穴にテープをはり、微調整。本人にしかわからないミリ単位の修正です。
できるだけ早くストライクコースを読み取ることに集中、しかし、この日はゲーム中盤、連続でピンを残す場面もありました。
どれだけ極めてもストライクを出し続けることは不可能。
なぜピンが残るのか、その原因を自分自身に問いかけます。
表情を変えない安孫子選手、果たして何を思うのか。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「ほかの人の投球をみることによって、この人はここのライン投げてるからちょっとオイル伸びてきてるのかなとか。ちょっと右にズレた方がいいかなとか」
あらゆる考察をもとにベストな答えを見い出す作業。
残ったピンを確実にしとめながら苦しい時間を乗り切り、徐々にその答えが見え始めました。
連続ストライクから、苦しい場面をスペアで耐え、再び連続ストライク。
彼女の群を抜く強さがスコアとなって現れます。
出場した高校生でただ一人、全ゲームでスコア200超え。驚異のアベレージです。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「勝ち上がった先に待っているのがメンタルだと思うので、誰にも影響されない自分との戦いで、どういうときも落ち込まないで次々と切り替えていかないといけないスポーツだと思うので、メンタルが一番だと思います」
結果にとらわれず常に最善を尽くす。ボウリングは、深い。
古川学園高校 我孫子美葵選手:
「アジア大会とか世界大会とかにも、ナショナルチームメンバーとして派遣していただけるのであれば、もちろんそこはちゃんとメダル獲得に向けて練習頑張っていきたいなって思ってます」
【tbcテレビ ヒーローインタビューより】