2020年の全仏オープンで自身初の四大大会ベスト16入りを果たした男子テニス元世界ランク58位のユーゴ・ガストン(フランス/現108位)が、試合中にスポーツマンシップに反する行為を犯したことを理由に、ATP(男子プロテニス協会)から14,4000ドル(約2,000万円)の高額な罰金を科されたことが明らかになった。仏大手メディア『レキップ』の他、複数のメディアが報じている。

 今回ガストンに罰金が科されたのは、現地4月29日に行なわれた男子テニスツアー「マドリード・オープン」(ATP1000)シングルス2回戦でのあるシーンが要因となっている。

 同ラウンドでボルナ・チョリッチ(クロアチア/現16位)と対戦したガストンは、1ブレークのリードを許して迎えた第1セット第9ゲームのサービスで、40-ADとブレークおよびセットポイントを握られてしまう。そこでガストンは意表を突きアンダーサービスを打つも、チョリッチにバックハンドの強打で難なく対応されてしまう。ガストンは高いロブを上げて時間を稼ぐのが精いっぱいだった。

 問題のシーンが起こったのはその直後。チョリッチがスマッシュを打とうとした瞬間、ガストンはポケットに入れていたボールを咄嗟に取り出し、故意にコート内に落としてポイントのやり直しを求めるという信じられない行動に出たのだ。

 テニスストリーミングサイト『TENNIS TV』でアーカイブ配信されているこの試合の映像を見てみると、確かにガストンは上記のポイントでチョリッチがスマッシュを打つ直前に右手でボールをコート内に転がしていることが確認できる。
  主審はガストンのポイントやり直しの要求を却下し、スマッシュを決めきったチョリッチのポイントを認める判断を下した。これにより第1セットを3−6で落としたガストンは、続く第2セットも3−6で取られ、ストレートで2回戦敗退となった。

 海外メディア『UBITENNIS』によると、2023年度版のATPルールブックには「ATPマスターズ1000大会における反スポーツマンシップ行為には最高で60,000ドル(約830万円)の罰金が科される。ただし、同じシーズン内に同様の違反行為があった場合は罰金がその100%の割合で追加される」と記載されている。

『AP通信』によればガストンは23年シーズンが開幕してから違反行為を繰り返しており、今回の“ボール落とし”が実に今季4度目の反スポーツマンシップ行為になるという。そのためガストンに追加制裁を下すこととなったようだ。

 一方でATPは現地5月22日の公式声明で「ガストン選手の控訴により、今後1年間で新たな違反行為を犯さないことなど一定の条件の下、同選手の罰金は半額の7万2000ユーロ(約1074万円)に減額された」と報告している。

 フェアプレー精神に反する行動を取ってしまったガストン。ファンやプロ選手を目指す子どもたちを失望させかねない姑息な手段であったことは言うまでもない。今後は2度とこのようなことがないように猛省してもらいたい。

文●中村光佑

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