スーパースターの名門球団加入は、意外なところで大きな効果をもたらしている。

 現地4月6日、ロサンゼルス・ドジャースは敵地でシカゴ・カブスと対戦し、4対1で勝利。先発した山本由伸が5回を投げ、被安打3、奪三振8、無失点という素晴らしい内容で待望のメジャー初白星を挙げた。一方、大谷翔平は「2番・指名打者」で先発出場し、4打数2安打で3試合連続のマルチヒットをマーク。後輩の活躍をバットで後押しした。

 ドジャースはここまで8勝3敗で、ナショナル・リーグ西地区首位を快走している。昨年オフには大金を惜しげもなく投入し、大谷と山本を獲得。さらに、先発タイラー・グラスノー(前タンパベイ・レイズ)や主砲テオスカー・ヘルナンデス(前シアトル・マリナーズ)などを補強し、移籍市場を大いに賑わせた。トレードやFAで積極的に獲得した選手たちが評判通りの活躍を見せており、4年ぶりのワールドシリーズ制覇に向けて投打がうまく嚙み合っている。

 圧倒的な強さを見せる常勝軍団には、現地メディアからも高い関心が寄せられている。米紙『The New York Times』のジル・コーワン記者は「ショウヘイ・オオタニの登場は、ドジャース・ファン、そしてロサンゼルスの多様性を反映している」と題した興味深い記事を配信し、日本人スターの獲得はチームに計り知れない大きな変化を与えたと言及している。

 春季キャンプからドジャースを追いかけている同記者は、普段のキャンプとは異なる光景に注目。その一部始終を次のように説明した。

「アリゾナの日差しが日増しに明るくなるなか、ファンは1時間以上も前から集まっていた。親たちは野球ボールを手に、サイン用のペンを構えて、子供たちを最前列に押しやった。そして、二刀流スーパースターのショウヘイ・オオタニがジョギングをしながら控えめに手を振って現れると、歓声が沸き起こり、興奮が電流のように群衆に波及した」
  大谷を取り巻く熱狂に驚きを隠せないコーワン記者は「スプリング・トレーニングで、私は多くの日系アメリカ人のドジャース・ファンに会った。彼らの多くにとって、オオタニのロサンゼルス到着は活気を与える瞬間だった」と回顧している。

 さらに同記者によると、日本語やスペイン語を話すファンがたくさんおり、みんな大谷の名前がプリントされた背番号17を着ていたと報告。球団職員は、大谷のドジャース加入効果を反映するように「多種多様なファン層を開拓できた」と強調するほど、その波及は絶大だという。チームの指揮を執るデーブ・ロバーツ監督もファンの変化を認識しているようで、「私たちの国を偉大にしているのは多様性であり、ドジャースをアメリカと同じレベルに置くつもりはないが、私の目からもそう見える」とコメントしている。

 史上空前の大谷フィーバーに目を輝かせているのは、コーワン記者だけではない。1980年から90年まで、ドジャースで通算141勝を挙げたメキシコのスタープレーヤーで、現役引退後は球団のスペイン語中継の解説を長年務めているフェルナンド・バレンズエラ氏は「ロサンゼルスの人々は、すでにオオタニを愛している」と表現。現役時代にラテン系ドジャース・ファンを数多く惹きつけたと言われている伝説的左腕からも、大谷人気の過熱ぶりには目を細めている。

 前日のカブス戦では今季2本目のホームランを放つなど、3試合連続のマルチ安打で打率は.304、出塁率と長打率を足し合わせたOPSは.875と打撃が上向きつつある大谷。背番号17の一挙手一投足に、周囲の注目は尽きない。

構成●THE DIGEST編集部

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