4月13日(現地)のドジャース戦に先発したマット・ウォルドロン(パドレス)は、現役メジャーリーガーでは唯一と言っていいナックルボーラーだ。

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 2019年、ドラフト18巡目でネブラスカ大リンカーン校からでインディアンス(現ガーディアンズ)に入団。指名順位が示すように決して注目株ではなく、翌年には早々とトレードでパドレスへ移籍。環境が変わってもくすぶり続ける時期がしばらく続いた。

 転機が訪れたのは21年。リトルリーグ時代に双子の兄弟と遊びで投げていたナックルを実戦でも使用し始めたことで道が開けた。昨年6月24日にメジャーデビューを果たし、マイナーとの往復を繰り返しながら9月16日に初勝利を挙げた。

 実は、この勝利はナックルボーラーとしては実に5年ぶりの白星。フィルとジョーのニークロ兄弟、ティム・ウェイクフィールド、サイ・ヤング賞も獲得したRA・ディッキー……。“絶滅危惧種”と言われながらも、常に第一線で活躍する実力者がいたナックルボーラーだが、ディッキー引退後は本当に絶滅の危機に瀕していた。

 それだけに、ウォルドロンにはナックルボールという伝統を守り、次代に受け渡す存在としての期待もかかっているのだ。迎えた今季はオープン戦で防御率1.35と好投し、開幕ローテーション入りを勝ち取った。 実は、ウォルドロンはナックルボーラーとしては異色の部類に入る。ナックルの投球割合は4割程度で、4シームやシンカー、スイーパー、カッターなど他にも多彩な球種を操る。

 その意味では“純正ナックルボーラー”とは言い難い部分もあり、本人いわく「ナックルボールが優れていればいるほど、他の球種がさらに良くなる」。パドレスのマイク・シルト監督は「ナックルボーラーのラベルを貼りたくはない」とさえ語っている。

“新種”のナックルボーラーはドジャース打線を相手に5回1失点と好投。対大谷は2四球、三塁ライナーという結果だったが、自慢のナックルでムーキー・ベッツを三振に仕留める場面もあった。21世紀以降ではわずか10人しかいない魔球使いの今後の投球に注目したい。

文●藤原彬


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