4月28日、古馬ステイヤーの頂点を決める春の天皇賞(GⅠ、京都・芝3200m)が行なわれ、単勝1番人気に推されたテーオーロイヤル(牡6歳/栗東・岡田稲男厩舎)が圧勝。長距離重賞3連勝で頂点へと駆け上がった。

 2着には後方から鋭い末脚を繰り出したブローザホーン(牡5歳/栗東・吉岡辰弥厩舎)が入り、過去3年連続で2着となっていたディープボンド(牡7歳/栗東・大久保龍志厩舎)は粘って3着に健闘。4年連続で馬券圏内に入る快記録を残した。

 一方、2番人気に推された昨年の菊花賞馬ドゥレッツァ(牡4歳/美浦・尾関知人厩舎)は15着に大敗。牝馬ながら3番人気に推されたサリエラ(牝5歳/美浦・国枝栄厩舎)は12着に沈み、昨年の日本ダービー馬のタスティエーラ(牡4歳/美浦・堀宣行厩)も直線で伸びを欠いて7着に敗れた。
  終わってみれば、テーオーロイヤル『一強』の天皇賞(春)だった。ゲートが開くと、20年前にイングランディーレで本レースを逃げ切った横山典弘騎手が手綱を取るマテンロウレオ(牡5歳/栗東・昆貢厩舎)が果敢にレースを引っ張り、ディープボンドが2番手を確保。やや行きたがる素振りを見せたドゥレッツァがその後ろに付けて、直後を鞍上の菱田裕二騎手とピタリと折り合ったテーオーロイヤルが悠々と進んだ。

 マテンロウレオが後続を引き離して単騎逃げとなった通過ラップを見ると、1000mが59秒7、2000mは2分01秒7と、入りがやや速めで中盤が緩むという過去の天皇賞(春)の傾向通りの流れになった。そして2周目の第3コーナーから、以前よりさらにズブさを増したディープボンドが仕掛けて出ると、テーオーロイヤルもそれに連れて進出。騎手の手が激しく動くドゥレッツァやタスティエーラの苦闘をよそに、すんなりと先頭に並びかけるところまで位置を押し上げて直線へと向いた。

 逃げバテたマテンロウレオを交わしてディープボンドが先頭を奪うが、それは一瞬のこと。いよいよラストスパートに入ったテーオーロイヤルがディープボンドを外から交わし、一気に突き放して確勝と思われる差を付けた。後方からブローザホーンが激しく追い込むが、2着に上がるのが精一杯。テーオーロイヤルが2馬身差を付けて、余裕の手応えでGⅠタイトルを手に入れる栄光のゴールを駆け抜けた。「今まで生きてきた中で一番嬉しいです。最後は意外と冷静で、第4コーナー回ってくる時は、20年前に天皇賞を見に来ていた自分に『(このレースを)見ておいてくれ』という気持ちで追っていました。みなさんに感謝の気持ちでいっぱいです」

 これがGⅠ初勝利となった菱田騎手は、自らが騎手になることを決心したレースを挙げてコメント。自身のデビューから12年経ったいまも厩舎に所属して騎乗を続ける彼は、師匠の岡田調教師に初のGⅠタイトルをプレゼントできたことも含め、感慨を新たにしていた。

 6歳になって頂点を極めたテーオーロイヤルだが、単なる晩成ではなく、骨折で1年近くの休養を余儀なくされたり、レース中の事故に巻き込まれたりと、決して順調と言えるものではなかった。

 昨秋には休養明けのアルゼンチン共和国杯(GⅡ)で10着に大敗したが、レース勘を取り戻した彼はステイヤーとしてのポテンシャルの高さを発揮し、続くステイヤーズステークス(GⅡ、中山・芝3600m)で2着に健闘。今年に入ってからは、ダイヤモンドステークス(GⅢ、東京・芝3400m)と阪神大賞典(GⅡ、阪神・芝3000m)を連勝。なかでも後者では、2着に5馬身差を付ける楽勝で、走力のフェーズがそれまでよりひとつ上がったことを感じさせる強い内容だった。

 6歳とはいえ、キャリアは18戦とそれほど多くはなく、まだ伸びる余地も十分あると思われるテーオーロイヤル。小笹公也オーナーは「検疫の都合などがあるとは思いますが、メルボルンカップ(豪GⅠ、フレミントン・芝3200m)も視野に入れたいですね」と語り、この圧勝劇をステップに海外遠征へ結び付けたい意向を示した。
  デビュー以来堅実な走りを続け、今年1月の日経新春杯(GⅡ、京都・芝2400m)の優勝で注目を集めるようになったブローザホーンは、持ち味である末脚の切れを活かし、GⅠ初挑戦ながら2着に健闘した。エピファネイア産駒らしい気性の難しさはあるものの、好意で競馬ができれば、ビッグレースでの一発が期待できそうだ。

 3着のディープボンドには、本当に頭が下がる思いだ。7歳になった今年は上位争いが厳しいのではないかと安易に疑った筆者の浅知恵が恥ずかしい。シルバーコレクター、ブロンズコレクターとも呼ばれたランニングフリー、ナイスネイチャなどと同様に”名脇役”となったいま、これからも元気に走り続けてくれるよう願っている。

 さて、どう捉えていいのか悩まされるのは上位人気に推されたタスティエーラ、ドゥレッツァの2頭である。

「今年の明け4歳のレベルには疑問が残る」という意見は早くから囁かれてきた。しかし筆者は、まだ伸びしろがあると思われる段階でのそうした判断には与してこなかったが、今回の結果を見ると、残念ながら「世代間格差」を認めざるを得ない頃合いかと感じている。他の世代にまったく歯が立たないとは思わないが、大舞台では評価を一段階割り引く必要があるのが現実だろう。

取材・文●三好達彦

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