コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、都内CMプランナーや漫画家として活躍するコンテくんさんの作品『ハリボテちゃん。』を紹介する。11月18日に同作がX(旧Twitter)上にポストされると、8000件を超える「いいね」を獲得。そこで作者のコンテくんさんにインタビューをおこない、同作が生まれた背景や注目のポイントついて語ってもらった。

■「心のハリボテ」を手にした彼女が得たものとは
「急げよ、とろい」「荷物邪魔」と喧噪が響くCMの撮影現場で、エリカは笑顔ですべてに対応しながら仕事を進めている。しかし、そんなデキる彼女にも実は秘密がある。

「お手洗い行ってきますねー」と現場を離れたエリカは、トイレで胸元を確認する。そこにはハート絵柄に、仕事中にかけられた罵詈雑言が矢のように刺さっていて…。エリカは「張り替えよ」とつぶやくと、その「ココロのハリボテ」を剥がして交換した。

エリカが「ココロのハリボテ」を手に入れたのは3カ月前、撮影現場に落ちていた不思議な商材を見つけた時だった。ハリボテをつけていれば、罵詈雑言に言われても心が傷つかなくなる。それ以降、相手の言葉に傷つかなくなったエリカは、次第に人に頼られるようになった。ただし、ハリボテの枚数も限られているので、ずっと頼れるわけではない。

ある日、同僚のキクタにハリボテのことがバレてしまう。エリカの話を聞いたキクタは「そのハリボテ少しもらえたりできないですか?」と依頼する。枚数が限られている中で、エリカが出した回答とは…。

X上では、「深すぎる」「私もそのハリボテが欲しい!」「思ってた内容と違って、ラストの方で泣いてしまった…」など好評の声が多数寄せられている。

■誰しもが持っている心のハリボテに向き合ってみた
――『ハリボテちゃん。』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

僕は身長が157cmで低い方なんですが、その『低さ』を良い意味で使っていました。例えば誰かにからかわれた時は「背が低いせいだから、仕方ないかー!」という感じに。本当はもっと性格的なところでからかわれたかもしれないのに、とりあえず背の低さを盾にして自分を守っていたことに気が付いたんです。

僕は特に背の低さを気にしてはいないのですが、そういう「コンプレックス」みたいなものって実は自分の心の芯が傷つかないためのハリボテになっているのかなと思って。そういう部分って、良くも悪くも誰しもが持っていると思ったので、それをテーマにすれば共感を得られるんじゃないかなと考えました。そこを着想にして生まれたのが『ハリボテちゃん。』ですね。

――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。

元々ネームで描いたので作画部分では完成されてはいないのですが、ファンタジー設定の中でエッセイみたいなリアルなセリフを意識しました。普段CMプランナーをしているので、冒頭の現場で飛び交っている怒涛や上司のねちっこい感じはリアリティあると思います…(笑) 。今と昔で改善されたところも、もちろんありますが。

あと主人公は女性なので、会社の女性後輩にリサーチしたりしました。そこで聞いた「(ねちっこい上司は)何か言いたいフェチなだけ」というセリフがなかなか面白いなと思ったので、実際に言わせてみました。このように日常生活で聞く言葉を拾って、漫画に入れ込むエッセイ漫画の手法みたいなものを今回取り入れていますね。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。

終盤のキクタの「絶対傷つきたくなかったのに、心に何も残ってないのが寂しくて、傷つきたかったと思っちゃってる」というセリフのシーンは特に思い入れがありますね。

心のハリボテのアイデアを思い浮かんでから使用者が実際にどんな気持ちになるかを考え始めた時に、自分のトラウマな思い出と一度向き合ってみたんです。ムカつくことや恥ずかしいこともありましたが、全部が全部黒歴史というわけではなくて、一部美化されていい思い出になってるものもあって。トラウマも悪いものではないのかもと思ったんです。

そういう自分の経験を重ねながら生まれてきたのがこのセリフで、一見矛盾しているように見えますが、なんとなく腑に落ちる言葉になったのかなと思います。実際にSNSで一番反響はあったセリフだったので、共感してもらえて嬉しかったです。

――コンテくんさんも普段生活していて厳しいことを言われた場合、どのように消化しているのでしょうか?

一度取り入れてみるようにはしていますね。みんな各々の成功体験を重ねて、自分ができあがってると思うので、一旦その人の人生に入り込んでみようかなと思います。自分との相性があるので、全部取り入れるのは難しいものはあると思いますが。ただやっぱり厳しいこと言われると多少はムカつくので、すぐ友達にはLINEすると思います笑。

――他の作品を含めて独特な切り口のものが多いように感じましたが、着想はどのように得ているのでしょうか?

人のバックグラウンドを知るのが好きなんですよね。真面目なのに5股している子や、人生で出会った中で最高に性格の悪い先輩、完璧超人でバランス感覚がよすぎる後輩…みたいな人たちと出会うと「なんでこうなったんだろう…?」と気になって、たまに本人に直接聞いてみたりしますね。「なんでそんなに性格悪いんですか?」みたいな感じで…笑。

でも意外と話してくれたりするので、そこから得た『生のセリフ』を大事にしている気がします。

――今後の展望や目標をお教えください。

現在、僕の中高6年間の男子校生活をゆるっと描いた『男子校の生態』の第2巻(2024年3月25日発売)の単行本作業をしている最中なのですが、それが落ち着いたら、「ハリボテちゃん」の続きをしっかり描きたいと思います。どちらの作品も多くの人に読んでもらえるように、今後もがんばって漫画を描いていきたいですね。