日向夏のライトノベルをアニメ化した「薬屋のひとりごと」(毎週土曜深夜0:55-1:25、日本テレビ系/ABEMA・ディズニープラス・Huluほかにて配信)の第16話が1月27日に放送された。宮廷御用達の彫金細工師が残した不思議な遺言を調べることになった猫猫。その鮮やかな謎解きが注目を浴びた。(以下、ネタバレを含みます)

■「薬屋のひとりごと」とは

同作は、日向夏の小説を原作とする後宮謎解きエンターテインメント。小説は「ヒーロー文庫」(イマジカインフォス)より刊行中で、「ビッグガンガン」(スクウェア・エニックス)および「サンデーGX」(小学館)でのコミカライズも展開されており、シリーズ累計2400万部を突破。中世の東洋を舞台に、「毒見役」の少女・猫猫が宮中で起こるさまざまな難事件を次々に解決する姿を描く。

TVアニメは長沼範裕監督(「魔法使いの嫁」や「劇場版 弱虫ペダル(2015)」など)のもと、TOHO animation STUDIOとOLM(「オッドタクシー」や「古見さんは、コミュ症です。」など)がタッグを組みアニメーション制作を担当。CVは猫猫役を悠木碧、壬氏役を大塚剛央が務める。

■またもや謎解きを依頼される猫猫

とある宮廷御用達の彫金細工師が、弟子である息子たちに秘伝の技術を継承せずに亡くなった。代わりに、長男には離れの作業小屋、次男には細工の施された家具、三男には金魚鉢を遺した細工師。遺言状には「皆 昔のように茶会でもするといい」と謎の言葉が書かれていた。

その遺言状の解読を、細工師の知り合いである軍部の高官・羅漢(CV:桐本拓哉)たっての希望で、猫猫が請け負うことに。壬氏から概要を聞いた猫猫は、食中毒事件と同じく武官の馬閃(CV:橘龍丸)に付き添われて細工師の家を訪れる。

最初に2人を迎え入れたのは、三男。親切な三男に、猫猫と馬閃は作業小屋に通される。小屋は不思議な造りで、真ん中に箪笥が床に固定された状態で配置されていた。箪笥にはいくつか引き出しがあって全て鍵がかかっている。それらしき鍵は残されているが、穴に入らない。

これでは、折角の形見も意味がないと嘆く長男と次男。対して、三男は金魚鉢といえども高価なガラスで出来たもので、3人の中では最も使い道がある。彼らの兄弟仲はあまり良くないらしく、遺言状の通りに小屋で茶会を開くも会話はない。そんな中、猫猫は唯一外から入る光がもうすぐ箪笥へ当たりそうなことに気づくのだった。

■遺言状に隠された亡き父の思い

光が入る細長い窓の前には棚が……。三男曰く、以前は金魚鉢で金魚を飼っており、茶会の間はその棚の上に置いていたという。その瞬間、何かが猫猫の中で噛み合った。金魚鉢に水を入れ、棚の上に置く猫猫。すると、太陽光が金魚鉢を通して一点に集約され、箪笥の真ん中にある引き出しの鍵穴に届くーー。

「皆 昔のように茶会でもするといい」という細工師の言葉に従えば、引き出しの鍵は開くようになっていた。上部3つの引き出しからは、それぞれ異なる金属が出てくる。鉛と錫、そして青みがかった結晶のようなもの。おそらく、ビスマスと呼ばれる希少金属の一種だろう。ビスマス・鉛・錫を一定の割合で混ぜ合わせると、“ローズメタル”という合金ができる。細工師はそのレシピを伝えようとしていたのかもしれない。

細工師の意図に、三男だけが気づいたようだ。長男と次男は父親のいたずらに振り回されたとして苛立ちを覚えるが、三男が「僕たち兄弟に仲よくしてほしくて遺言を残したんだ」と父親の思いを汲み取り、それを二人に伝える。長男と次男には、父親に兄弟の中で一番目をかけられている三男への嫉妬があった。しかし、三男曰く父親は二人のことも認めていたという。

回りくどい遺言状は、3人に力を合わせて家業を切り盛りしていってほしいというメッセージだったのだろう。


■羅漢は猫猫の実力を試した?

その後、長男と次男は職人から足を洗ったそう。長男は売上の管理、次男は販路の開拓と、それぞれの別の方面から家業を支えているらしいと、後日羅漢から壬氏に伝えられた。

「まぁ 要するに 適材適所に落ち着いたということですな」と嬉しそうに語る口ぶりからは、彼がこの結末を見据えていたように思える。その上で外廷で噂される猫猫の実力を試したのだろうか。相変わらず、底が知れない人物だ。

壬氏が気になっている、妓女の希少価値を下げる方法についても彼ははぐらかした。その妓女は今どうしているのか。羅漢や妓女と、猫猫の関係性も気になるところ。猫猫の観察眼と洞察力が光ると同時に、その裏で手を引く羅漢のあやしさが増した第16話に「相変わらず猫猫の謎解きが凄い」「今回の猫猫も見事な名探偵ぶりだった」「薬以外のことも“もしかしたら…”と思った事を実証していく様は圧巻でしたね」「羅漢の持ち込んだ今回の謎解き…何か裏がありそうな」といった視聴者からの感想がSNSで挙がった。

◆文=苫とり子