悪魔の血を引く少年・奥村燐(CV:岡本信彦)が、父親である魔神(サタン)を倒すために最強の“祓魔師(エクソシスト)”を目指す『青の祓魔師』のTVアニメ第3シーズン『島根啓明結社篇』(毎週土曜夜24:30-25:00ほか、TOKYO MXほか/U-NEXT・Hulu・dアニメストア・アニメ放題ほかで配信)。悪魔とのド派手なバトルが見どころのダークファンタジーながら、家族や友達との絆、葛藤や成長、青春コメディまで、少年漫画の醍醐味がギュッと詰まった大人気シリーズだ。3月9日に放送された第10話は、神木出雲(CV:喜多村英梨)と塾生メンバーたちが合流し、外道院ミハエル(CV:檜山修之)と戦う「仲間」。(以下、ネタバレを含みます)

■母の子供を想う愛情に涙!

出雲の母・玉雲(CV:大原さやか)を抱えながら屍人(ゾンビ)たちと戦う燐の元へ、塾生メンバーが駆けつける。一方で、出雲は九尾の強大な力の前に抗うことができず、自我を失い暴走を始めてしまうが、そこに立ちふさがったのが玉雲だった。九尾の攻撃を華麗な舞いで躱し続ける玉雲は、九尾を再び自分の身体へと戻すことに成功するが、力尽きて倒れてしまう。憑依が解けて自我を取り戻した出雲は、自分を助けた玉雲の行動に戸惑い反発するも、玉雲から優しい言葉をかけられて、泣きながらその最期を看取るのだった。

序盤のハイライトは、何と言っても出雲と玉雲の別れだ。自由奔放で子供っぽい玉雲に幼少時より振り回されてきた出雲は、九尾が暴走した事件のこともあり、母親のことを憎んですらいた。だからこそ、彼女が土壇場で自分のことを助けたことに対して戸惑う出雲。しかし、頭を抱きかかえられ「玉ちゃんの…宝物」と言われると、まるで堰を切ったように泣きじゃくる。長い確執を経てようやく母娘の関係を取り戻したふたりだったが、玉雲は出雲の頭を撫で「大、丈夫…みん…な、そばにいるわ…」と言いながら息絶える。これまで母親らしい振る舞いをしてこなかった玉雲が最期に見せた言動は、出雲への積年の贖罪でもあるだろうが、おそらくこれが玉雲の本質なのだろう。母親として至らないところはありつつも、子供を愛する気持ちは昔から変わることはなく、一瞬でも九尾から解放されたことで本来の精神を取り戻したのだと思える。そして何より、最期に母親の温もりを感じ取ることができたことは、出雲にとっても大きな出来事だったはずだ。このシーンにはSNSでも「出雲を守って死んだ玉雲と、燐を守って死んだ獅郎が重なるシーンで泣いた!」、「最期に分かり合えて本当によかった」などの反響があった。

■成長した出雲の新技「鎮魂の祓い」が炸裂!

玉雲と九尾を失い追い詰められた外道院は、セイバーの仮面を装着して自らに悪魔を憑依させる。周囲の屍人たちを捕食しながら襲いかかってくる外道院に対し、自分がケジメをつけるとばかりに立ち上がる出雲。するとそこに、消滅したはずの“御饌津(ミケ)・保食(ウケ)”が登場する。彼らは志摩廉造(CV:遊佐浩二)の手加減によって生かされており、さらに今の出雲になら「靈(たまゆら)の祓い」よりも強力な力を貸すと告げる。こうして出雲は大技「鎮魂(みたましずめ)の祓い」を発動し、外道院を無力化することに成功する。その後、正十字騎士團の救援部隊が駆けつけたことによって、事態は一応の収束を迎えるのだった。

中盤パートでは、出雲の「鎮魂の祓い」が炸裂した。九尾との主導権争いにおいて、塾生メンバーのことを「仲間」だと思っていることに改めて気づいた出雲は、さらに玉雲との別れを経て精神的に大きく成長しており、そのことを“御饌津・保食”が認めたことで、新技が使えるようになったのだ。またこのときの出雲は、塾生メンバーに向けて「みんな、私を助けて!」と言い切っていて、かなりの胸アツシーンとなっている。これまで人に頼ることを嫌っていた出雲だけに、ここまで素直に誰かを頼るのは初めてのことで、出雲の心の成長が窺えると同時に、「あたりまえだよ!」、「その為に来たんだからな」「言われるまでもないわ ボケ」など、即答する燐たちの姿もとても気持ちがいい。さらにその後の「鎮魂の祓い」の発動シーンは圧巻。長い祝詞のすえの“御饌津・保食”による超アクションは、今話のハイライトと呼べるものだった。

病院で目が覚めた出雲は、宝ねむ(パペットCV: 井上剛)から妹の月雲(CV:遠藤璃菜)が生きていることを聞かされ、月雲の家へと繋がる鍵を渡される。鍵を使い、とうとう5年ぶりの対面を果たす出雲だが、月雲は出雲のことを覚えていなかった。ショックを受けつつも別れを告げて病室へ戻ってきた出雲は、杜山しえみ(CV:花澤香菜)に、思わず自身の複雑な心境を洗いざらいぶつけてしまう。出雲の一方的な独白を受けたしえみは、感情を素直に表に出した出雲に対して、泣きながらも笑みを浮かべ「よかった」と呟くのだった。

終盤はまさに涙腺崩壊必至の展開だ。出雲にとっては生きる理由そのものだった月雲とようやく再会したのにも関わらず、相手が自分のことを覚えていないという衝撃。これは普通の少年漫画では考えられないくらいビターな展開だが、それゆえにしえみに自分の感情をぶつけるシーンは、最高にドラマチックなシーンに仕上がっている。これが単純なハッピーエンドとは違う感動を生み出していて、実に『青エク』らしいと言えるだろう。辛い現実を乗り越えるには己の強さだけではなく、それを支える友達の存在が必要不可欠であることが強調されたエピソードで、出雲というキャラクターが抱えていたテーマのひとつの決着とも言える。この一連のシーンには号泣した視聴者も数多く、「間違いなく神回。出雲の魅力がダダ漏れ!」、「何回観ても泣いちゃいます」、「出雲役が喜多村英梨さんで本当に良かった!」などの声が挙がっていた。さて次回第11話「ピンクスパイダー」は3月16日(土)放送予定。期待して待とう!

■文/岡本大介