<ダンジョン飯>死闘の終わりに待っていた残酷な現実。絶望の衝撃シーンに「死生観がエグい」
■作戦大失敗。鍋は直に持ってはいけません!
レッドドラゴンに食べられてしまったファリン(CV.早見沙織)を救出するため、ここまで過酷な冒険を乗り越えてきたライオスたち。迷宮地下5階で、ようやく目的のドラゴンと遭遇する。しかし、ドラゴンの全身は剣も魔法も通さない硬い竜鱗に覆われているため、今の戦力ではまともに戦っては勝ち目はない。そこでライオスが立てた作戦は、瓦礫でドラゴンを押し潰し、動きを止めたところで喉元にある唯一の弱点、逆鱗に剣を突き立てるというものだった。
建物に起爆の魔法を施していくマルシル(CV.千本木彩花)。ライオス、センシ(CV.中博史) 、チルチャック(CV.泊明日菜)はドラゴンを仕掛けの地点に誘導していくが、その前に一番危険な火の息を使い切らせないといけない。そのために大活躍するのがセンシ愛用のアダマント製の鍋…のはずだったが、火の息を受け止めた鍋はみるみる熱せられ、直持ちしていたライオスは思わず鍋を放り投げてしまう。
鍋を直に掴んだらヤケドする。考えてみれば当たり前のことなのに、誰も気づけなかったうっかりミス。Xにも「先週の作戦会議のときに、わたしも“熱くて持てなくなるのでは”ってならんかったのなんか悔しいなww」「そりゃそうだけど、俺も気づけんかったのよ乙」などのコメントが上がり、視聴者もついついライオスと同じ思考にハマっていたようだ。
■決死の策で逆鱗を貫いたライオス
崩落での作戦も失敗し、窮地に陥るライオスたち。逃げた“ケン助”を回収するために、センシとチルチャックは体を張る。ファリンの救出はライオスとマルシルにとっては諦められないことだが、お金で動いているというチルチャック、成り行きで仲間になったセンシにとっては本来そこまでする理由はないはずだ。それでもドラゴン相手に命を懸けて協力しているのは、ここまで苦楽を共にし、ライオス、マルシルのファリンへの想いに触れているからなのだろう。
2人のおかげで何とか脱出したライオスはマルシルと合流し、爆発魔法の勢いでドラゴンに飛び移るという決死の行動に出る。片足をわざと食わせ、激痛に耐えながら突いたドラゴンの逆鱗。急所を貫かれたドラゴンはここまでの死闘がウソのように、あっけないくらいに崩れ落ちていった。
これで、ようやく叶えられるファリンの救出。例え亡くなっても、迷宮の中でなら生き返ることができる。それを望みにドラゴンに挑んだライオスたちだったが、割いた胃袋の中に見たのは残酷な現実だった。
■ライオスが取り上げた頭蓋骨は…
ドラゴンの胃の中は空だった。腸の中を調べても、骨の一片も残っていなかった。どうやらドラゴンが不眠で動き回っていたため、普段より消化が進んでしまったようだった。マルシンは顔色を変えて取り乱すが、そこでライオスははっと何かを思い出す。
レッドドラゴンは消化しにくいものを体内にまとめ、それを火を吐くときの燃料にする。一縷の望みを託し、それをさらいだすライオスたち。そこから出てきたのはファリンと同じ色の髪の毛と、彼女が使っていた杖。そして、「ファ…ファリン…」と消え入るような声を出したライオスが取り上げたのは、妹の頭蓋骨だった。
残酷な結末で終わった第11話。ギャグを交えて見せてきた本作だけに、今話の結末には衝撃を覚えた視聴者も多かった。「ファリン…辛すぎ、エグすぎ。急に落とすのやめれ」「まさかダンジョン飯でトラウマを植え付けられるとは思わなかった」「ファリンの変わり果てた姿見せられるの温度差がエグすぎる」など、Xにはラストシーンに胸を痛めたファンのコメントがあふれていた。
また、「死生観がエグい」といった感想も見られたが、確かに本作はただのダンジョングルメアニメではない。生き物の生態系を描き、食を通して描かれる死生観はリアルさを超えた哲学的なメッセージにもなっている。迷宮の中において死は生の終わりではなく、だからこそライオスたちも死ぬことを重く受け止めていなかった節がある。骨だけになってしまったファリンを見て、今初めて彼女の死に絶望したのかもしれない。迷宮内で死んでも魂は肉体に縛られるということだが、その肉体がなくなった今、ファリンは復活することができるのだろうか。
■文/鈴木康道