伊藤沙莉がヒロインを務める連続テレビ小説「虎に翼」(毎週月〜土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月〜金曜の振り返り)。第3週「女は三界に家なし?」では当時の女性の立場の弱さを物語る理不尽なエピソードが生々しく描かれる中、それらに誠実に向き合う寅子のキャラクターに好感の声が上がっている。(以下、ストーリーのネタバレがあります)

■法廷劇をきっかけに露呈した偏見

「虎に翼」は、日本初の女性弁護士の一人となった三淵嘉子をモデルにしたオリジナルストーリー。昭和の初め、女性に法律を教える日本で唯一の学校へ入学し、法曹の世界に進んだ主人公・猪爪寅子(いのつめ・ともこ)と仲間たちの奮闘を描く。

第3週では、女子部の有志学生たちが披露した法廷劇をきっかけに、世の男性たちの女性に対する偏見が露呈した。男子学生からは「法廷劇というよりおままごとだ」「誰も弁護士になんてなれねえよ」とヤジを飛ばされ、よね(土居志央梨)の身の上話からは彼女がいかに女性として搾取されてきたかが明らかになった。4月18日放送の第14回ではさらに、法廷劇の筋書きが「無知で愚かな女性のほうが同情を買いやすい」という目線で改変されていたことも判明した。

■フラットな視線で…寅子の「はて」が随所に光る

そんな中、目の前の出来事を男性も女性もないフラットな視線で見つめ、違和感があれば「はて」と口にする寅子のキャラクターが光る。

これまでも「女のくせに生意気だ」と見下してくる見合い相手、法律に規定された「婚姻状態にある女性は“無能力者”」という表現にも、まっすぐな心で「はて」と異を唱えてきた寅子。第3週でも、よねが級友たちに「私はあんたらと違って本気で弁護士になって世の中を変えたいんだ」と吠えるのを見て「はて、私もそうですよ。たとえあなたの本気が勝っているからといって、誰かをけなしていいわけじゃないと思うの」ときっぱり。

その一方で、よねが働くカフェーのマスターが彼女の身の上話を口にしようとすると「やめておきます。よねさんの話を、よねさんがいないところで、よねさんじゃない人から聞くのは違うと思います」と制した。主人公がほかのキャラクターの身の上を人づてに聞く演出はドラマではよくあること。まして1回15分の連続テレビ小説であれば尚更だが、寅子は、そんなドラマ進行上の妥協にも異を唱えていく。

また、第14回では、よねが無知なまま戦おうとしない女性たちを「愚かだ」と否定するのを聞き、すかさず「それは絶対に違う!」「法という盾を、武器を持ちつつある私たちだからこそ、今日は最後まで寄り添って考え抜きたいの」と真正面から訴えた。

■伊藤沙莉のコミカルな魅力が中和剤に

おかしいことはおかしい、違うと思えば違うと口にする、真っすぐな寅子。だがそれがくどくもないし重くもならない。そこに、演じる伊藤ならではのコミカルな魅力が生きてくる。

第14回では、よねの想像を絶する重い過去を知り、なんとか彼女の気持ちを明るくできないか、慰められないかとあれこれ考えをめぐらし言葉を探す寅子の姿があった。かける言葉を何パターンか考えては寅子が自ら「ダメ」「違う」「これじゃケンカになるだけ」とダメ出ししていく妄想シーンは、よね役・土居のキレのある返答も相まって軽快でコミカルな仕上がり。よねの身の上という重いエピソードの後の中和剤としての役割も果たした。

法律や、女性の立場といったやや堅いテーマを扱い、女性が理不尽な扱いを受けた当時の生々しいエピソードを挟みながらもドラマ全体のトーンは明るくからっと、そんな絶妙なバランスの上に成り立つ「虎に翼」。その中心にいる伊藤に、視聴者からも「沙莉ちゃん、寅子にぴったり!」「寅子の明るいキャラクターに救われる。沙莉ちゃんのあのお顔と声、大好き!」「沙莉ちゃんが演じる寅子、寄り添ってくれる感じがすごくする。推せる!」の声が多く上がっている。

法廷劇で取り上げた事例の真実を知ってショックの寅子たち。4月19日(金)放送の第15回では、事実を知った寅子たちが出す結論、そして花江(森田望智)の思いも明らかになる。

文=ザテレビジョンドラマ部