コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、ピエール手塚さんが漫画を、藤見登吏央さんが原作を手掛ける「いじめ撲滅プログラム」。

この作品は「いじめをこの世からなくそうとする男の漫画です。」として、2024年4月25日にX(旧Twitter)に投稿されると、瞬く間に1.7万件以上のいいねを集めて話題になった。このポストには「あり得る未来」「私が学生の頃に導入されてほしかった」「AIの倫理分野はなかなか面白い」といったコメントが殺到。この記事では作者のピエール手塚さん・藤見登吏央さんに、作品のこだわりなどについてインタビューを行った。

■人には限界がある。人が人である限りいじめはなくならない。

新米教師の明は、自分が担任するクラスでいじめの現場に遭遇する。被害者と加害者を冷静に見極め、どう対処すべきか考えている最中、教室中にアラートが響き渡る。

「イジメアラートを確認。計測を開始します。」

AIが心拍数やストレス度合いなどから被害者と加害者を割り出し、自動的にいじめとして認定、制裁を下していく。この学校が力を入れている”いじめ撲滅プログラム”とは、AIがいじめと認定した事案に対し、加害者の脳に手を加え、二度といじめをしないように優しい人に改変するというものだった。

自身もいじめを受けた過去があり、本気でいじめをなくすために教師になった明。いじめではないことにまで制裁を下し、暴走していくロボットに疑問を感じていく。いじめから守ってくれた恩人との最悪の再会も果たし…。

”いじめを根絶するため”正義と正義がぶつかり合う。誰も予想しなかった衝撃のラストに「社会的に重要な役割りを果たす作品」の声続出。


■漫画・ピエール手塚さん「いじめをなくすことに対して考えるきっかけになれば」

ーー『いじめ撲滅プログラム』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

手塚:最初のきっかけは、僕がネットに上げていた漫画きっかけでヤングキング編集部とお話をさせて頂いたときに、藤見さんの原作シナリオを読ませて頂いて、漫画化すると面白そうだと思ったことです。

藤見:いじめってどうしたらなくなるんだろうという問いが頭の片隅にずっとあっていじめ加害者一人ひとりに訴えかける方法ではなく、なにかいじめをしなくなるような仕組みがあればいろんなものをすり減らさずになくなるんじゃないかと考えたのがきっかけです。

ーー今作で「こだわった点」や、「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

手塚:文章の原作を漫画に置き換えるにあたって、いかに絵的に面白くし、漫画として分かりやすく伝えるかという部分にこだわりました。人の表情を描くのが好きなので、そこにも注目してほしいです。

藤見:迫力のあるリアクターの造形やそれが一斉に揃うシーンです。徐々に牧人とのバディ感が出てくるところも見て欲しいですね。それと作画のピエール手塚先生は悪い人の表情がとても上手なのでそこを見て欲しいです。プログラムを行使する牧人、プログラムを利用しようとする大人、いじめ加害者、彼らの見せる顔がこの作品をとても盛り上げてくれています。

ーー今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。


手塚:いじめ撲滅ベンチャー企業「アイムファイン」というのは原作にはなかった要素なのですが、僕にとって印象深いいじめの漫画「元気やでっ」のタイトルからとって名付けました。

藤見:1つは黒板が開き、その中からリアクターがでてくるシーンですね。シナリオ作成時、リアクターのイメージはそれほどなく、お任せしてしまったのですが原稿を見た時、こんなのでてきたら怖すぎる…!と思いました。それと、女子後編でそのリアクターが複数でてくるシーンがあるのですが、1体だけでも威圧感が相当あるのに複数機揃うとなると、とんでもない迫力がありますのでそこもとても気に入っています。

ーー本作は4万件以上のいいねを獲得しています。多くの反響を呼んだことについて率直な感想をお教えください。

手塚:いじめというものが、誰しもにとって身近に存在し、なくならないものであるため、いじめに対する意見や思いを持つ人がとても多いからではないかと思います。

藤見:多くの人に読んでもらえて嬉しかったです。この作品を通していじめについていろんな意見にふれることができて、自分自身とても勉強になりました。

ーーご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

手塚:現在ヤングキングで「ひとでなしのエチカ」という漫画を連載しております。今やっているエピソードがそろそろクライマックスなのでよろしくお願いします。

藤見:自分だったら…と捉えていろんな意見が交わされるような作品を生み出したいです。

ーー最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

手塚:いじめ撲滅プログラムを描くにあたって、原作を読みながら、いじめについて様々な角度から考えたのは貴重な体験でした。読んでくれた皆さんにとっても、いじめをなくすことに対して考えるきっかけになれば嬉しいです。

藤見:この作品を読んでいじめ問題について考えるきっかけ、そして小さくても少しでも解決につながる1つになってくれたらといいなと思います。