昨年公開された映画から映画批評家たちによる選考員が独自の視点で選んだ「第33回日本映画批評家大賞」の受賞者、受賞作品が10日、発表され、主演男優賞に東出昌大が輝いた。対象作は「Winny」。

 三浦貴大とダブル主演した「Winny」は、2002年に登場した実在するファイル共有ソフト名。革新的ツールは広く利用される半面、違法アップロードの悪用も呼ぶ。開発者の金子勇氏は著作権法違反幇助の罪に問われ、一審で有罪判決が下るも二審で覆り、最高裁で無罪が確定した。法廷闘争を闘い抜いた金子氏だが、その2年弱余り後の13年に43歳の若さで病死した。

 東出はWinny事件をもとにした同作で金子氏役を演じた。批評家大賞の各賞へのコメントでは、映画評論家の松崎健夫氏が「Winny事件で誹謗中傷を浴びた金子勇と、自身のスキャンダルでバッシングされていた東出昌大の人生の岐路と岐路とが、奇遇にも『Winny』という映画によって交差したという不可思議がある」と指摘している。

 松崎氏は、金子氏の親族が同氏を演じる東出の姿を見て涙したとの伝聞を紹介。2人の外見は決して瓜二つなどではないが、生き写しのように見えたとの話も加えた。故人の姿を記録した映像や音声はほとんど残っていなかったという。「そのため、東出はエンドロールにも使用されている記者会見の動画を繰り返し再生することで、人物像を作り上げていったのだと述懐」というエピソードも紹介した。こうした努力に加え「『東出昌大は東出昌大である』という唯一無二の個性が、映画そのものを輝かせる要素のひとつになる」という。

 ほかに同賞では、作品賞に「ほかげ」(塚本晋也監督)、監督賞に荻上直子氏(「波紋」)、主演女優賞に同じく「波紋」の筒井真理子、助演男優、女優賞は、それぞれ磯村勇斗(「月」)、新垣結衣(「正欲」)が選ばれた。授賞式は都内で5月22日に開催される。