レジェントからの〝金言〟とは? スポーツクライミング男子でパリ五輪代表の安楽宙斗(17=八千代高)が本紙の単独インタビューに応じた。シニア転向1年目から世界で存在感を示す若きクライマーは、マークされる立場となっても泰然自若の構えを崩していない。そんな高校生らしからぬ雰囲気を醸し出すメダル候補が、レスリングの五輪3連覇女王・吉田沙保里から受けた言葉、真夏の祭典の位置づけなどを明かした。

 ――パリ五輪まで残り3か月ほどになった

 安楽 シニア転向1年目の昨季はいろいろと波に乗れて、いい感じに運も重なって勝てたけど、2年目のここが勝負だと思っている。1年目はあまりプレッシャーを感じなかった部分もあるが、過去の成績を背負って2年目を戦っていくという点では、今季はより一層昨季と違う形で頑張っていこうと思っています。

 ――スポーツブランド「ラ・スポルティバ」主催のイベントでは、レスリング女子で五輪3連覇の吉田沙保里と話す機会があった

 安楽 英語は自分にとって絶対に必要だと思っているので、英語の勉強をしている。クライミング以外でもやらないといけないことがあると思っている。なので、吉田沙保里さんがイベント時におっしゃっていたように、ちゃんと集中して、限られた時間で頑張ることが大事だなと思いました。

 ――通う高校が進学校ということもあり、周りは受験モードに入っているのでは

 安楽 そうですね。勉強がある程度できる生徒が集まっているので、ガラッと受験の雰囲気に切り替わったかな。でもそれをうまく利用して、今までなかなか手をつけてこられなかった英語を頑張ろうと思っています。

 ――今年度は大学受験も控えるが、まずはパリ五輪に全集中か

 安楽 母親からは「ある程度(進路の候補は)決めておきなよ」と言われたけど、先のことを考えるのが苦手で…。「大学に行って何したいんだろう」とか、将来像をあまり思い浮かべていないというか、将来もクライミングをやるけど、あまり想像できていない。今までも近い目標を設定してこなしたので。

 ――パリ五輪を見据える上で、普段の練習時に意識していることは

 安楽 負けず嫌いっていろいろ分かれていると思っていて、みんな負けたくない思いはあるだろうけど「負けないためにどうするか」と考える力は強いと思っている。練習では結構負けていることが多くて、正直練習では負け慣れているけど、大会でも練習でもちゃんと勝つために、負けず嫌いの心を持っている。だからこそ、練習もより一層力を入れて頻度も高く頑張れている。やっぱり妥協しないことが大事で、ケガをしている時以外は、やるかやらないかとなった時にやった方がいいかなと思っています。

 ――色紙にパリ五輪は「発表会」と記したが、その理由は

 安楽 W杯のいろんな試合や練習、今までの経験とかを全部パリ五輪で出したい。大事な大会なので、今まで学んだことを出したい。ただ、五輪後も選手を続けるので、パリ五輪がゴールになってはいけない。吉田沙保里さんが「(五輪後に)1年休むのがよくわからない」と話していたけど、僕も同じ考え。なので、いつも通りというか、W杯などのいつもの大会よりもより集中して挑みたいです。

☆あんらく・そらと 2006年11月14日生まれ。千葉県出身。小学2年時に父親と近所のクライミングジムに足を運んだことがきっかけで競技を始めると、年代別の全国大会で活躍した。国際大会では21、22年世界ユース選手権のリードで2連覇を果たし、23年世界選手権のリードでは銀メダルを獲得。23年シーズンのW杯ではボルダーとリードの年間王者に輝いた。2種目同時達成は史上初の快挙。同年11月のアジア大陸予選で優勝してパリ五輪切符を手にした。千葉県立八千代高在学中。168センチ。