阪神は18日の巨人戦(甲子園)に2―1でサヨナラ勝ちし、勝率5割に復帰。延長10回無死満塁の好機で打席に入った佐藤輝が快音を右前へ運び、ロースコアの接戦にケリをつけた。開幕から貧打に泣き、一進一退の戦いを強いられてきた猛虎だが、苦難の時は間もなく終わりそうだ。チームを昨季、38年ぶりとなる日本一に導いた「虎ベンチの守護者」が間もなく甲子園に帰還する――。

〝事件〟が起きたのは10日の広島戦(甲子園)のことだった。4回一死無走者の場面で打席に入った広島・アドゥワは漆原が投じたボールをファウルで粘ったが、ライナー性の打球は阪神ナインが陣取る一塁側ベンチ内に飾られていた「張り子の寅」を直撃。霊験あらたかな〝タテジマの守護者〟が、木っ端みじんに砕け散ってしまったのだ。

 この張り子の寅は奈良県内にある信貴山朝護孫子寺から寄贈されたものだ。同寺は聖徳太子が寅年、寅の日、寅の刻にこの地に立ち寄り毘沙門天から戦の必勝法を授かった故事から「トラの寺」としても知られ、多くの阪神ファンが参拝。開山の由来から、毘沙門天の使いとされる張り子の寅は授与品として人気を集めている。

 信貴山朝護孫子寺は第1次岡田政権時の2005年に、初めて張り子の寅を阪神球団へ贈った。そのご加護もありチームは同年のセ・リーグを制覇。10年には寅年であることと奈良―神戸間を結ぶ「阪神なんば線」が全通したことを記念し、二代目を寄贈した。さらに23年10月には既にリーグ優勝を決めていた阪神のポストシーズン必勝を祈願し、三代目を贈呈。そのご利益はこの上なく抜群で、第2次岡田虎はその後ついに12球団の頂点に立つこととなった。

 球団史上初となる連覇へ向けた祈りを込め、鈴木貴晶法主によって右後ろ足に「アレンパ」と筆をしたためられたのが四代目だ。しかしながら今春新たに球団へ贈られたばかりのところで、開幕11戦目にして胴体部分に打球が直撃。その衝撃で頭部は外れ、4本あった足のうち3本がもげ落ちてしまう悲劇となってしまった。だが同寺の関係者は「せめてもの救いは『アレンパ』と願いを込めて筆を入れられた右後ろ足だけが奇跡的に無事だったことです」と証言する。なんという驚異的な霊力なのだろうか…。

 球団からの相談を受け、翌11日には同寺関係者が甲子園を訪問し四代目を持ち帰ることに――。修復は不可能と判断し、新品の張り子の寅を阪神球団に寄贈することがすぐに決まった。腹部に「勝」、右後ろ足に「アレンパ」と新たに筆を入れられた五代目は現在、同寺の僧侶たちによって「14日から20日までの7日間、祈願を受けて力を込められているところです」(同)。

 祈願が終了する20日はチームにとっても縁起のいい「寅の日」。最速なら21日の中日戦(甲子園)、遅くても翌週26日のヤクルト戦(甲子園)までには虎ベンチへ〝帰還〟する見込みだという。

 悪夢の「ファウル破壊事件」から、この日まで8試合。阪神は全試合で2得点以下という苦しい戦いを強いられてきた。だがチームに何度となく栄光をもたらしてきた「張り子の寅」が戻ってくるとなれば、もう何も恐れるものはない。

 昨季日本一チームの実力がハリボテなわけないやんか――。