ジャスティンミラノ(中)が1冠
ジャスティンミラノ(中)が1冠

皐月賞2024

[GⅠ皐月賞=2024年4月14日(日曜)3歳、中山競馬場、芝内2000メートル]

 14日、春のそよ風が吹き抜ける中山競馬場で行われた第84回GⅠ皐月賞(芝内2000メートル)はジャスティンミラノ(牡・友道)が前半5ハロン57秒5の激流の中で5番手の好位から抜け出して1分57秒1のコースレコードで勝利した。牝馬レガレイラが1番人気に支持されたように混戦とされた牡馬戦線。大接戦となった1冠目を制した走りの裏には、亡き戦友・藤岡康太騎手の献身があった――。

 偶然ではなく〝必然〟の勝利だったと言えるだろう。

 大方の予想を裏切り、道中はハナを切ったメイショウタバルが3馬身、4馬身と後続を引き離して逃げる形に。レコード決着の一因となった前半5ハロン57秒5の超ハイペースの中で先行して勝ち切るのは決して容易ではないはず。「前走も強い内容でしたので今回も馬を信じて乗りました。(前半は)いいリズムで行けましたし、少し3〜4角で戸惑っていたのかなというところはありましたけれども、しっかりハミを取って伸びていってくれました」とレースを振り返った戸崎圭。勝負どころから手応えが渋くなりながら迎えた直線では失速するどころかむしろグングンと加速する。ジャンタルマンタルをかわし、コスモキュランダの追撃をしのぎ切った。

 大接戦を制した伸び脚に、誰もが〝彼〟の存在を意識したことだろう。レース後、「この馬に関して、藤岡康太騎手が2週前、1週前と攻め馬をしてくれまして、事細かく状態も教えていただいて…最後の差というのは康太が後押ししてくれたのかなと、康太も喜んでるんじゃないのかなと思っています」と戸崎圭は涙をこらえながら言葉を絞り出した。友道調教師も「(ゴール前は)『康太!康太!』と叫んでいました。康太君が調教を手伝ってくれて、ジャスティンミラノを最後の最後まで乗ってくれていて…この勝利は彼のおかげだと思います」と涙を流しながら亡き戦友への感謝を伝える。

 レコード走という記録だけでなく、ジャスティンミラノを支えた「藤岡康太」の名もファンの記憶に永遠に刻まれるであろう今年の皐月賞。そんな〝ドラマ性〟だけが強調されがちだが、一歩引いて現実的な目線で見てみよう。1分57秒1のレコードを導いたのは紛れもなく道中のハイラップだが、それでもラスト3ハロンは12秒1→11秒7→12秒0と落ち込みはギリギリにとどめており、レースレベルの高さは否定できまい。役者が揃い始めた今、牝馬(レガレイラ)に一蹴された昨年末時点とは状況が違うというわけか。

 そんな1冠目を制した友道陣営もこの勝利に満足しているわけではない。友道師は「以前からダービーの方が競馬をしやすいと思っていたので改めて皐月賞馬として2冠を狙いに行きたいですね」とすでに無敗のダービー制覇に照準を合わせている。現役最多の3勝とダービーの勝ち方を誰よりも知るトレーナーの言葉は重く、そこにこの日の走りを重ね合わせれば、2冠制覇の可能性は決して低くなかろう。

著者:東スポ競馬編集部