日本ダービー2024

[GⅠ日本ダービー=2024年5月26日(日曜)3歳、東京競馬場・芝2400メートル]

 いよいよ競馬の祭典、第91回日本ダービー(26日=東京芝2400メートル)が今週末に開催される。まずは、ダービーを最もよく知る第一人者の言葉に耳を傾けて、栄光の1週間をスタートさせよう。歴代最多の34回騎乗&6勝を誇る武豊は今年、キタサンブラックの弟・シュガークンでV記録更新を狙う。その〝インテリジェンス〟に三嶋まりえ記者が迫った。

武豊に三嶋まりえが迫る!

ダービー男・武豊(右)を三嶋まりえ記者が直撃
ダービー男・武豊(右)を三嶋まりえ記者が直撃

 ――今年もこの時期がやってきました。改めて、武さんにとって、〝ダービー〟とはどんなレースですか

 武豊 何回乗っても、何回勝っても、やっぱり目標のレースだし、毎年の目標だよね。特別なレースです。

 ――明確にダービーを意識したのは、いつですか

 武豊 子供の時、親父がロングエースという馬で勝った。まだ3歳か4歳だったけど、なんとなく親父がダービーを勝ったのを雰囲気で察して、特別なレースなんだな、と。その辺からかな。自然と特別なレースだと刷り込まれていたのかもしれないね。その時から毎年楽しみに見ていたよ。

 ――初騎乗が1988年コスモアンバー(16着)でした。初騎乗の前と後で、心境の変化はありましたか

 武豊 子供の時から憧れていたレース。競馬学校時代も観戦しに行ったし、テレビやスタンドから見ていたから、まず新聞の「東京優駿」のところに自分の名前があるのが不思議だった。本馬場入場したときも、いつもとは逆の光景。鮮烈に覚えている。

 ――その初騎乗は

 武豊 ただぐるっと回ってきたような感じだったなあ。連闘で急に出れて、その雰囲気を味わえたっていううれしさはあったけど、勝ち馬(小島太元騎手騎乗のサクラチヨノオー)がはるか彼方に離れていた。だから、どんな馬がダービーを勝つのかなとか、ダービーってどうやったら勝つのかなとか、すごく遠い存在に感じていたかな。その後だんだん乗っていくうちに、そのうちチャンスはあるという手応えはあったけどね。

〝競馬界の七不思議〟の声も…

1998年のスペシャルウィークで初めてのダービー制覇
1998年のスペシャルウィークで初めてのダービー制覇

 ――ダービー初勝利が1998年のスペシャルウィーク

 武豊 あの時はまだダービーを勝ったことはなかったけど、自信を持って乗れた。力を出せば勝てると思っていたし、うれしかったですね。やっと勝ったという感じだった。

 ――当時は、武さんがダービーを勝てないことが〝競馬界の七不思議〟と言われていたそうですね

 武豊 なんか言ってたけど、今考えたら20代で勝つやついないよな(笑い)。まあ、他をいろいろ勝っていたからね。でも、焦りとかはなかった。ただ、子供の時から騎手になってダービーを勝ちたいと思っていたから、10回目、騎手11年目で、やっと夢がかなったというのは思った。

 ――そこから99年アドマイヤベガで連覇。1回勝つと気持ち的には違うものでしょうか

 武豊 どうなんだろう。でも、いい馬だったし、チャンスはあった。ただ、勝てないとか言われない分、気が楽だったかな(笑い)。でも、乗る上での特別意識は持たないようにしているから。もちろん、ダービーというレースは特別だけど、乗ることに関しては、東京の2400メートル、3歳限定のレースと思えば、よく乗っているレースだからね。

 ――最多の6勝を挙げていますが、ダービーを勝つコツがあるんですか

 武豊 コツはないけど、やっぱり強い馬じゃないと勝てないなと思う。このレースに限っては、マグレとかはないかな。レースも厳しいよ。みんなここを目標にしているから。東京の2400メートルは力を出しやすい設定だしね。

 ――これまで勝った6頭に共通点はありますか

 武豊 やっぱり、すごい実力の持ち主。6頭ともすごい馬たちだった。みんな強い馬だった。

 ――印象的な勝利インタビューが多いイメージもあります

 武豊 えっ、そう?

 ――「ギムレットで乾杯してください」と呼びかけた02年のタニノギムレット、「僕は帰ってきました!」と話した13年キズナ、22年ドウデュースの「感無量です」というコメントも感動的でした

 武豊 特に、そこまでは考えてないけどね。このレースは、本当に競馬関係者の夢のレース。その代表者だから、勝利騎手インタビューでそういうのは伝えたい。ダービーと有馬記念だけ見る人も多いし、競馬の良さを知ってもらいたい、伝えたい、というのは意識するかもしれないね。

キタサンブラック半弟シュガークンと7度目の制覇へ

3連勝中のシュガークンと7度目のダービー制覇へ
3連勝中のシュガークンと7度目のダービー制覇へ

 ――世代の頂点を決める一戦に、今年はシュガークンと挑みます

 武豊 血統的にも、やっぱり生まれた時からダービーを意識されていた馬だと思う。新馬戦から乗せてもらっていて、当然そこは頭にあった。ただ、2月のデビューだったし、さすがに新馬戦の時は、ダービー出るのは厳しいかな、と思った。しかも、2着だったからね。だけど、2戦目で未勝利戦を勝った時に、あ、これなら、うまくいけば出走に間に合うんじゃないかなって思った。

 ――その後、青葉賞を勝利。重賞タイトルもゲットしました

 武豊 3連勝すればダービーに出られるなと思っていて、それが実現した。一回ずつ馬がグッと良くなっているし、勝ったら青葉賞に行こうという話できっちり行けた。一つでも落としたら行けないところをきっちり勝っていけたのは大きいよね。

 ――ダービーへ向けて

 武豊 テンションがレース当日ちょっと上がっちゃうんだけど、この間もレースは上手に走ってくれていた。間隔も短いし、東京でみんな盛り上がるからね。そこだけかな。まあでも、上昇していっている感じで次もいってくれれば、なんとか強いメンバーでも頑張れないかな、という感じだね。

 ――JRA通算4500勝のインタビューでは、ダービー6勝ではまだ足りないと話していました

 武豊 何回勝っても勝ちたいですよ。勝った素晴らしさも味わっているからね。ダービーを勝つって特別だなって思うし。周りにはもういいでしょ、いい加減にしてくれって言われるけど(笑い)。

 ――あの時のインタビューで印象的だったのが〝目標は次の1勝〟という言葉

 武豊 どんなレースでも、みんな一生懸命にやって、勝とうとしている。勝つのはそんなに簡単じゃない。

 ――「みんなでいいレースがしたい」というのも、武さんからよく聞く言葉のような気がします

 武豊 これだけ日本で競馬が盛り上がっているのは、多くのファンがいるから。その中で競馬をさせてもらっている。それに応えなきゃいけない。後味の悪いレースやつまんないレースをやっているようじゃファンも離れてしまう。

 ――今年のダービーもそういうレースに

 武豊 頂点のレース。そういう馬たちが集まったし、今年もすごいレースになると思いますよ。

著者:三嶋 まりえ