能登半島地震発生から間もなく3か月。いまなお、住民の大きな困りごとの1つが、水道復旧の遅れだ。いつも通りに水が使えない状況は生活の質を下げることに直結してしまう。横浜市が進めている「災害応急用井戸」をご存じだろうか。現時点で戸塚区内に211あるこの井戸を取材した。

市内の個人敷地内を中心に1873ある「災害用応急井戸」(2023年3月31日時点)。1995年1月に発災した「阪神・淡路大震災」を受け、横浜市が非常時に水を確保する対策の1つとして、同年4月以降に始めた制度だ。市や区が地域住民に募集の広報をしたほか、自治会町内会からも協力の呼びかけを行ったという。トイレや屋外の清掃などに活用する「生活用水」と位置付け、飲用や炊事用、食器洗浄用には使用しないこととしている。

指定までの流れ

市が指定するまでの流れはこうだ。▽制度に賛同した井戸所有者が区の福祉保健センター生活衛生課へ申出▽同課職員による井戸の調査▽指定要件を満たしている場合は指定(満たさないときは改善策を助言)▽「災害用井戸協力の家」プレートの提供--となる。

所有者や管理者がいる市内の井戸(湧水)であることのほか、pHや臭気などの「水質」、防水密閉や井戸を汚染するようなものが周囲にない「構造」が基準となる。

年々減少へ

区によると、区内の同井戸数は、2021年3月31日時点では231あったが、2023年同日は219、現時点では211となっており、年々数が減ってきているのが現状だ。区はその理由を、土地所有者が代替わりした際に保有を中止したことなどによるものとみている。また、課題として井戸水の汲み上げが電動式のものがあるため、停電時は活用がしづらくなると予想される。

柏尾町で同井戸を提供する住民は「昭和30年代に掘った。時代の移り変わりで周辺でも何件か井戸をやめてしまったところがある。うちは電動式で市から非常用バッテリーの提供があると助かる」と話した。

区担当者は「『困ったときはお互い様』で提供者は協力していると思う。災害時に使用する場合は所有者に配慮を。また、協力者を随時募集している」と語る。

区・市内の同井戸の所在地は市のHP内に掲示されている。