――ビッグモーター事件を受けて、大手のネクステージやIDOMは自社工場を対象とした社内調査の結果を公表しました。一方、カーチスからは何の発表もありませんでした。社内調査をしなかったのでしょうか。調査した結果、何も問題がなかったのでしょうか。

当社は他社と違い、整備工場が6拠点に限られている。データを基に1件1件を細かくチェックすることができる。そこで問題が見つからなかったので結果を公表しなかった。

――インセンティブが不正の誘因になったと考えて、インセンティブを廃止した会社もあります。

当社は上場企業なので、通期の連結業績予想がある。それを達成するために各社、各店舗に予算を毎月設定している。ただし、それが達成できなくてもペナルティはない。

インセンティブはある。社内のコンセンサスを得られてはいないが、個人的にはインセンティブをやめるべきだと思っている。中古車業界では、給与全体に占めるインセンティブの割合が高く、結果的にインセンティブが生活給の一部になってしまっている。そうではなくて、ベースとなる給与や賞与を上げてインセンティブの比重を極力下げたい。

インセンティブをたくさん稼ぐために、一部の会社では悪いことを考える人もいた。それをここで変える必要がある。インセンティブありきのビジネスになってしまうのを断ち切るべきだ。今は他社を含めて断ち切ることができる環境にあるわけなので、当社も大きく変えたいと考えている。

車を何台買い取りました、何台販売しました、ではなく、お客様と生涯にわたる関係を築けるような買い方ができたのか、売り方ができたのか。評価はそこだ。そういったポイントを、しっかりと社員に還元できるような仕組みにしたい。

「呪われたカーチス」が生き残った理由

――カーチスでも、創業からこれまでにさまざまな問題が発生しました。2001年には創業者が業務上横領で逮捕され、2006年には当時の筆頭株主だったライブドアが証券取引法違反に問われました。その後も問題企業が大株主になったことがあります。

何かで調べたら「呪われたカーチス」とかいうワードが出てくるし、まさにその通りだ。だが、それでも生き残っている会社だ。あれだけのことを経験しながら、これだけオーナーが代わり、経営陣が代わっているのに長年続いているのは、私はすごいなと思う。

それはひとえに、中古車買い取りというビジネスモデルを始めたジャックHLD(カーチスHLDの旧社名)から派生するビジネスに優位性があり、会社として存在意義があるのだろう。

――中古車業界として信頼を回復させるにはどうすべきですか。

中古車業界の横のつながりが必要だ。業界全体としての動きがまだまだ足りていない。現状は、「業界としてビッグモーター問題にどう対応するべきなのか」「業界がどう変わっていくべきなのか」ということを語る場がない。そういうネットワークはきちんと持つべきだ。

――議論の場を持てたとして、各社首脳でどのようなことを話し合うべきですか。

ビジネスモデルのあり方そのものについて話し合うのがよい。中古車の価値は最終的に価格だけになりかねないが、そこにどれだけ付加価値をつけられるかが重要だ。車という商材から、いろいろなサービスが派生できる。そこは業界の既存企業もそうだし、異業種も含めて何か新しい試みができないかなと考えている。

中古車は古い業界だが、オーナー経営者は代替わりしていく。伊藤忠商事によるビッグモーターの再建が変化のきっかけになる。きちんとネットワークとして組織化することで、もっと健全な仕組みを作れていくだろう。

著者:村松 魁理