生々しい話ですね。「お前が受かったら、この学校の再建ができる」なんて、子どもに聞かせるべきではないという人もいると思います。それでも、この話を聞いて、生徒はちょっと納得したのでしょうし、少しだけ先生に心を開いたのではないかと思います。

「大人と子どもの違い」というのはいろんなものが考えられますが、僕は「感情にコントロールされるのが子どもで、感情をコントロールするのが大人」だと考えています。

例えば「ムカつくからあの先生の授業は聞かないぞ!」とか「あのクラスメイトとは喧嘩したから話さないもんね!」など、子どものときは感情のまま行動することがよくあります。

それが、大人になるにつれて、「感情のままに行動していると、利益がなくなってしまう」ということに気づきはじめます。

「本当は謝りたくないけれど、謝ったほうが無難にこの場を切り抜けられるな」と思ったら謝る、というのが大人が取る行動であり、感情と利益を天秤にかけて、「利益」を取りに行くことができるのが、大人なのだと思います。

桜木先生は、矢島に対して「大人になれ」と諭していましたが、東大生の親御さんは、子どもに対して早い段階からそれを教えているのではないかと思います。

「大人扱い」をすると子どもは成長する

先ほど、テストの点数が悪くて泣いている子どもに「泣いていても仕方がない」と言った親御さんの話を紹介しましたが、確かに泣いていても物事は好転しないですよね。

感情的になって一時的に涙を流すこともあるかもしれませんが、泣いてるのではなく、次にその涙を流さないようにするためにはどうすればいいか、ということを考えたほうが「利益」が得られます。

「大人扱い」というのは、このように感情ではなく利益を取るための訓練を子どものうちからさせている、と言えるのではないでしょうか。

少子高齢化でコンプライアンスの考え方も浸透している今、子どもは大人から「子ども扱い」されることが増えていると感じます。

厳しいことを言う人は少なく、先生から本気で怒られた経験があるという生徒は少ないです。

子どもは、生々しい話やつらい話からは遠ざけられて、大人の本音を見ないまま大人になっている場合も多いでしょう。しかしそんな時代だからこそ、子どもを大人として扱うことで、子どもが成長する部分もあるのではないかと思います。

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著者:西岡 壱誠