アメリカの投資ファンドKKR傘下の物流大手・ロジスティード(旧・日立物流)は5月9日、中堅物流会社のアルプス物流をTOB(株式公開買い付け)によって子会社化すると発表した。TOBは8月中旬頃から開始の予定で、アルプス物流は上場廃止となる。

電子部品と車載電装品などを主要貨物とするアルプス物流は2023年10月、親会社のアルプスアルパインから株式売却を含む資本関係の見直しを打診された。新たな資本提携先を絞るために行われた入札には、複数の物流会社や投資ファンドが関心を示していた。

その中で他社を圧倒する価格で入札を制したのがロジスティードだった。勝敗を分けたのはアルプス物流の抱える人手や物流網のみならず、倉庫や配送センターといった「不動産」への評価と見られる。

買収プレミアムは約70%

「価格が高すぎる」。ある物流大手の幹部は、ロジスティードが提示した買収額に仰天した。

昨年12月に行われた1次入札には事業会社やファンドなど15社が参加。うち11社が意向表明書を提出し、ロジスティードを含む3社が2次入札に進んだ。その後、買収額などの調整を経て、今年4月にロジスティードに内定した。

ロジスティードによる買収額は約1051億円。買い付け価格である1株5774円は、5月8日にロジスティードによるTOBの観測記事が出される前の株価に対して約70%ものプレミアムが付与されている。直近の業績から逆算したPER(株価収益率)は57倍と、ほかの物流会社の株価水準と比べても突出している。