企業は世界の動向につねに多大な影響を及ぼしてきた。そして企業は、誕生した当初から、共通善(社会全体にとってよいこと)の促進を目的とする組織だった。しかし今、企業はひたすら利益だけを追い求める集団であり、人間味などとは無縁のものであると考えている人は多い。では、企業はどこで、どのように変節してしまったのか? 今回、古代ローマの「ソキエタス」から、現代の「フェイスブック」まで、8つの企業の功罪を通して世界の成り立ち知る、『世界を変えた8つの企業』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

過去2000年の企業の目的

社会で広く信じられてきた考え方を覆すようなことを書くのがひとつの流行になっている。世の中の全員がじつは間違っていたと論じられることもあれば、まったく新しい洞察が提示されることも、世界が見た目よりも複雑であることが指摘されることもある。

しかし、社会で広く信じられてきた考え方は、だてに広く信じられてきたわけではない。そこには知恵が含まれている。いつも正しいとか、例外も条件もないということではない。

アリストテレスが政治哲学について述べているように、「それはほとんどの部分において正しい。おおよそ、大要において正しい」ということだ。古くから知られてきた真実を捨て去るのでなく、それを取り戻すことが最善の方策である場合もある。

本書がめざしたのは、過去2000年のあいだに人類が学んだことを明らかにすることだった。企業とは何か、企業は何のためにあるのかについて、これまでにどのような考え方があったのかを振り返り、それをなんらかの形で現代に生かそうと試みた。特に、ひとつの根本的な原則に注目した。すなわち、企業の目的は、今も昔も、共通善の促進にあるということだ。