小林製薬が扱う商品群。日用品や医薬品まで多岐に渡る(撮影:尾形文繁)

原因が特定できず、リスクの大きさも予想することができない時点で、どのような対応を取るべきなのか? 難しい問題だが、企業がこうした問題に直面することは少なからずある。

一般的に言えば、その時点で把握できている情報を適正な範囲に公開し、並行して対応を行うことは重要だ。

小林製薬がそうしていれば、健康被害ももっと小規模なものに留められたのではないか?という見方は当然生じるだろうし、そうした迅速な対応をとらなかったことは批判されてもやむをえないことだ。

少なくとも、監督官庁である厚労省に早い段階で状況を報告し、相談することはできなかったのだろうか。厚労省への報告義務はなかったとはいえ、関係各所と適切に連携を図ることは、リスク対応においては重要である。監督官庁に報告しておけば、リスクの分散を図ることもできたはずだ。

「有事対応」の体制ができていなかった?

軍事用語から借用して、リスクマネジメントにおいて、問題が起きていない通常の状態を「平時」、危機的な問題が発生している状態を「有事」と呼んでいる。

国家の運営と同様、企業経営においても平時対応と有事対応の両方が重要になる。しかし平時、つまり平和な状態が続くと、つい有事対応に疎くなりがちだ。平時においては業績が好調で評判もよい企業が、有事対応を誤り、さらなる危機に陥ってしまうことがある。

やや古い事例になるが、食中毒事件への事後対応を誤ったこともあって、経営危機に陥った雪印乳業の事例を思い出してみればよいだろう。

小林製薬についても、有事における初動対応が不十分、不適切であったがゆえに、現在の危機に陥ってしまったと言える。