その姿からきれいで優雅なイメージのあるハクチョウ。しかし実は凶暴な一面も持ち合わせています。春の繁殖期に攻撃的になるとされていますが、生活環境の変化も凶暴化の背景にあるようです。

FNNビデオポストに寄せられた映像。車をくちばしでつついているのは大きなハクチョウ。音を立てて何度も何度もくちばしを車体にぶつけています。
つつかれた車はどうなったのか…

映像を投稿した永田和正さん
「被害にあった車がこちらです。ハクチョウにつつかれた跡がここからここまでです」

永田さんの車のボディには無数の傷が残っています。

映像を投稿した永田和正さん
「穏やかな動物だと思っていたので、とりあえずやり過ごすそうと待っていた」

被害に遭う直前、細い道路を走っていた永田さんの車のドライブレコーダーの映像には、車を気にも留めず道路を堂々と歩くハクチョウの姿が映っていました。
永田さんは車を止めて、ハクチョウが渡りきるのを待つしかありませんでした。

永田和正さん
「恐怖だっけでした。どうしようもなくて…」

近くの水辺で見かけることはありましたが、陸上では初めて出くわしたといいます。現場で当時の状況を振り返ってもらいました。

永田和正さん
「ハクチョウが道を横断するのを待っていたけど、渡り終わってから攻撃された感じです」

永田さんが説明していたその時…。

「あっ!います!」

姿や声などに反応したのか、道路脇の茂みからハクチョウが姿を現し、ノッシノッシと威嚇するようにゆっくり歩いて向かってきました。その後一旦川に向かいますが…。

村上遥アナウンサー
「先ほど急に現れたハクチョウが、こちらに近づいてきます。威嚇しながら迫ってきます」

さらに、永田さんに対してもクチバシでつつく様な動きを見せて追いかけます。
車を傷つけたハクチョウと同じ個体かは分かりませんが、近所の人によると、約5年前からつがいのハクチョウが近くの川に棲みついていて、道路を歩く姿をよく見かけるといいます。
このハクチョウの正体は、そしてなぜ攻撃的なのか、専門家に聞くと。

島根大学生物資源科学部・荒西太士教授
「コブハクチョウですね。泳いでいる時のような優雅な生き物ではない。生きてはいけないですから」

正体は外来種の「コブハクチョウ」。かつて観賞用として輸入されましたが、日本各地で野生化して繁殖しています。渡り鳥の「コハクチョウ」とは違い、基本的に1年中同じ場所で生息しています。山陰でも川を占拠するかのようなコブハクチョウの群れが確認されるなど、継続的に繁殖して数を増やしていました。
個体数を増やすコブハクチョウ。今回の動画のように凶暴化する理由は。

島根大学生物資源科学部・荒西太士教授
「おそらく車に映っているコブハクチョウが、自分のライバルだと思って、自分だと思わずに攻撃したのではないかと推察される」

春の繁殖期には特に凶暴になり、目に映るものすべてを攻撃するケースがあるといいます。そしてもうひとつ理由が。

島根大学生物資源科学部・荒西太士教授
「ここ最近、水草がピークを迎えて減りつつあるので、ひょっとすると競争が激しくなっているのかもしれない」

コブハクチョウの大好物・水草の減少です。10年ほど前から松江市の川で大量に繁茂していた水草。国や市などが対策に乗り出したこともあり、2021年をピークに減少傾向に。水草が少なくなったことで、エサを求めて凶暴化しているといいます。ではコブハクチョウを見かけた時はどのように対処すればいいのでしょうか。

島根大学生物資源科学部・荒西太士教授
「近づかないのが一番良いと思います」

法律では、コブハクチョウを許可なく保護したり駆除したりすることが禁止されていて、見かけた場合は、近寄らないこと、そして絶対にエサを与えないことが重要です。