5月14日から20日までは、ギャンブル等依存症問題啓発週間です。
アメリカでは、LAドジャースの大谷翔平選手の元通訳・水原一平被告の裁判が続いています。自身を「ギャンブル依存症」だと告白したという水原被告。世界中を揺るがす事件にまで展開している「ギャンブル依存症」の怖さを、現在も治療を続けている山陰の当事者に聞きました。

ギャンブル依存症患者・Iさん
「最初は楽しいっていうところから入ったんですけど、いつのまにか借金をしてからは、借金を返すためにギャンブルをしていたなという風に思います」

松江市で開かれたギャンブル依存症啓発セミナー。当事者やその家族など約60人の前で、自身の体験を話すのは岡山県在住のIさんです。
Iさんは、20代から約10年間ギャンブルにハマり、23年8月までに借金はおよそ300万円に膨らみました。

ギャンブル依存症患者・Iさん
「今までも何回かやめた方がいいなとは思っていたんですけど、やはり自分の力で何とかできるとか、コントロールできるという風に思っていた時期もあって、もう嘘をついて、パチンコ屋に行ってたので、そこが一番辛かった」

23年の夏にギャンブルを辞め、今も借金は残っていますが、依存症からの脱却を優先させるために会社を休職し、東京都内の病院に入院。回復への道を歩んでいます。
現在30代のIさん。結婚し、子宝に恵まれマイホームを購入。順風満帆の人生は、ギャンブルにハマったことで一転してしまいました。実際にギャンブル依存症患者は、ほとんどが若年層です。ギャンブル依存症問題を考える会の調査によると、世代別では30代以下が約8割を占めていて、その割合は年々増加しています。
低年齢化の背景には、ギャンブルのオンライン化によって、スマホ1台で気軽に楽しめるという環境にあるといいます。
Iさんの場合、妻に嘘をついてまでギャンブルに行っていました。

ギャンブル依存症患者・Iさん
「最初はやはり申し訳ないなと思うんですけど、どうしてもギャンブルに支配されるというか、もう借金に支配されてしまっていたので、そうするしか手段がなかったというところになると思います」

この日のセミナーでは、ギャンブル依存症の専門外来を持つこなんホスピタルの福田院長が講演し、なぜギャンブル依存から抜け出せないのか説明しました。

こなんホスピタル・福田賢司院長
「治癒はありません。治癒はしないけど、回復はできます。回復は依存対象の物質の使用や行為を辞め続けることで得られる」

福田院長は、医学的には脳内で快楽物質が過剰に分泌されることが原因だと説明。
克服のためには、借金が膨らむ前にギャンブル依存の治療に取り組む病院や、同じ悩みを持つ自助グループに頼ることが大切だと話します。

ギャンブル依存症患者・Iさん
「依存症者というか、ギャンブル依存症者はなかなかプライドが高くてそういうところを言えない。やはり隠そうとするんですけど、これからの人生を楽しく生き直そうと思える仲間がたくさんいるので、その輪の中に一歩勇気を踏み出して来てもらえたら」

ギャンブル等依存症は、適切な治療と支援により回復が十分に可能です。重症化しないためにまずは本人が認知する必要があります。

ギャンブル依存症になりやすい人の特徴は、幼少期や青年期にギャンブルを体験している人、ギャンブルを始めた初期に大勝ちした経験がある人、ギャンブルの問題を抱えている家族がいる人などと言われています。山陰にも専門の医療機関や、市町村の専門相談窓口があります。早めの対応が回復への近道です。