海から立山雄山3003メートルの山頂まで、総距離65キロを駆け上がる立山登山マラニックという過酷なレースがあります。このレースの6連覇に挑む富山県警山岳警備隊員を取材しました。
4月、春山シーズンを前に救助訓練を行う富山県警山岳警備隊。
28人の精鋭たちの中でも、際立った運動能力を持つ隊員がいます。
中才雄介さん28歳。日本海の海抜0メートルから立山雄山の山頂3003メートルまで65キロを駆け上がる過酷なレース、立山登山マラニックで5連覇を果たしているのです。
中才さん:「交通監視のほう行ってきます」
富山市の交番で「おまわりさん」をする中才さん。山岳警備隊員の多くは普段、それぞれの警察署で働いているのです。警察官を志したきっかけは?
中才さん:「自分の父は刑事でなかなか家にいなくて大変な仕事なんだなと思っていましたけど、事件の解決した後に感謝の手紙などをもらっているのを見て人のためになる仕事をしているんだ、すごいな、自分もそんな風になりたいなと思って」
大学陸上部での挫折が糧に…
中才さんは4人兄弟の長男。兄弟4人は小さいころから、走っていました。
母親がランニングクラブのコーチしていたのです。
富山商業高校時代は全国高校駅伝にも出場した中才さん。日本薬科大学に進学して陸上部に入部。関東学生連合チームでの箱根駅伝出場を目指しましたが…。
中才さん:「2番手だったもので出れずに残念ながら。出たかったですけど、それはそれで一生懸命やってきたことがあるんで、今に繋がるんかなと思います」
警察官になった後、目標にしたのが立山登山マラニックの優勝でした。「過酷」と言われる大会のコースとは…。
高低差3003メートルを11時間以内に…
午前4時に富山市の浜黒崎海岸をスタート。
常願寺川沿いを走り、立山駅を過ぎると傾斜が増していきます。
称名からは最大の難所、八郎坂630メートルを登ります。天空ロードと木道を走り室堂へ。
ゴールは立山雄山3003メートルの頂上です。制限時間11時間以内に、総距離65キロを走る厳しい大会です。
中才さん:「八郎坂までなかなか斜度がきついんでいかに足を止めないか、室堂まではあとは気合いで」
山岳警備隊入りはマラニックがきっかけ
4月18日、立山登山マラニックの実行委員会が富山市の藤井市長を表敬訪問しました。
実行委員:「今この大会のトップ選手が、県警の山岳警備隊の中才さん。毎年5連覇中で、やはりそこに憧れていらっしゃる方も選手でたくさんいるみたいで」
藤井市長:「へえ。すごいな」
中才さんの5連覇に驚く藤井市長。手元にあったのはできあがったばかりの大会のポスター。そこに写っていた選手はなぜか中才さんではありません。
ポスターに写っていたのは富山市の東優介さん。立山登山マラニック3回連続で2位の選手です。
東さん:「中才さんは、称名までのロード区間も山岳地帯も強くて特に山岳が強くて、別次元の人だなって思います」
中才さん:「連覇するとまた連覇せんなんっていう気持ちで重圧はそれなりに少しあります」「自分にとってマラニックは人生を変えたっていうか今の警備隊になるきっかけになった大会でもあるので…」
実は立山登山マラニックは、山岳警備隊員になるきっかけになった大会だといいます。
中才さん:「2回目に出場したときにたまたまゴールして、室堂のほうに帰ってきているときに警備隊の出動する現場を見まして、自分があんなにヒイヒイなってあがったところを警備隊の先輩たちが軽々と走って現場に向かっている姿が、自分もせっかく警察になったんだったらすごい先輩たちみたいになりたいなと思い、警備隊を志望して今警備隊になることができました」
娘にいいところを…6連覇へ駆け上がる
5月1日、観光客と登山者でにぎわう室堂の派出所に中才さんがいました。
山岳警備隊の同僚から見た中才さんは?
富山県警山岳警備隊 小高浩明警部補:
「非常に足の速いところがありますので、去年の夏の現場でも救助現場に一番に駆けつけてくれたことが何回かありまして、最初に第一現場臨場して的確に判断してもらっている」
ゴールデンウィークの登山者を守るため立山周辺の警備に向かいます。
中才さん:「第一臨場し迅速に活動できるようにしていきたいと思います」
立山登山マラニックまであと3ヶ月。
中才さん:「こどもが1人、マラニックの時はちょうど誕生日近くなので2歳なる前にいいところを見せたいなと思います」
まもなく2歳になる娘のためにも…今年8月、6連覇を果たすため中才さんは立山を駆け上がります。