離婚後も父と母の双方が親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした民法などの改正案について国会での審議が始まりました。

改正案に賛成 自民党 谷川衆院議員
「離婚しづらいような社会になる方が僕は健全だと」

改正案に慎重 立憲民主党 寺田衆院議員
「その家族観やその視点というものに強い違和感」

 今は、離婚後の親権は父母のどちらかが持つ「単独親権」のみが認められています。改正案では、離婚の際に父母が協議して「共同親権」か「単独親権」かを選び、折り合わない場合は家庭裁判所が判断することになっています。

 小泉法務大臣は、「離婚後も双方が適切な形で子どもの養育に関わり、責任を果たすことが重要だ」と述べ、改正の意義を強調しています。

 一方、離婚後に転居したり子どもの進学を決めたりする際、円滑に双方が協議出来なければ混乱するのではないか、と指摘する声があります。立憲民主党の枝野氏は、かえって子どもの不利益につながりかねないと批判しました。

立憲 枝野衆院議員
「父母間で円滑なコミュニケーションが取れなくなったから、離婚するケースが圧倒的多数。まず前提として、うまくいっていたら普通離婚しないですよね、大臣」

小泉法務大臣
「多くの場合はコミュニケーションが取れない、合意できないことがままあろうかと思いますけども、しかし、かといって親の離婚=親子の断絶に、イコールにしていくことへの問題意識から議論が始められて今日に至っている」

立憲 枝野衆院議員
「共同親権を認めないから親子を断絶させる、現行でもそういう制度ではありません」

 枝野氏はこう反論したうえで、改正案で「急迫の事情がある」場合などのみ認められている、母か父のどちらか単独で親権を行使できる具体事例について追及しました。

立憲 枝野衆院議員
「お子さんが慢性的な病気で、手術が必要だと、早く手術したほうがいい、こうしたケースでなかなか父母がコミュニケーションが取れない、この場合、3号(単独権の行使)にあたりますか」

法務省 竹内民事局長
「当該手術の緊急性によるのではないかと思われます」

立憲 枝野衆院議員
「そうですね、明確な基準がここからは読み取れないんですよ。本質的にね、やっぱりこの共同親権って離婚後も共同して親権を行使することを前提としているわけですよ。逆にしないといけないんじゃないですか。双方の真摯な合意がある場合に限って家庭裁判所の審判を経た場合だけ共同親権にできる」

法務省 竹内努民事局長
「離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについては、そのご家庭の個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をしていただきたい」

立憲 枝野衆院議員
「離婚の時に、もう協議離婚でもなんでも、とにかく早く、とにかく離婚しないと、というのは離婚のケースの相当なケースであり得るんですよ。ひっ迫してて。その場合には、真意でなく共同親権にしてしまう。合意してしまう。そうすると子どもが不幸ですよ」

法務省 竹内民事局長
「(裁判所は)子の利益のため、父母と子との関係のほか、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない、としております。その結果、例えば父母間での協議ができない理由などから、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるような場合には、その一方を親権者として指定することとなる」

 一方、賛成の立場から質疑に立った自民党の谷川衆議院議員は。

自民党 谷川衆院議員
「離婚するなら子供のことをしっかりと考えて、責任を持たせてからでないと離婚できないようにすることが、子の最善の利益を確保するために必要。共同養育計画書の作成や、子とどうやって付き合うか分からない家庭もあると思いますので、離婚後の養育講座の受講など、本法律案に追加で盛り込んで義務化すべきだと考えるが」

法務省 中野政務官
「養育計画を作成することや、子の養育に関する講座を受講することは、一般論として子の利益にとって望ましく、こうした取り組みの促進は重要な課題であると認識しております。他方で、結果的に離婚が困難になる事案を生じさせ、かえって子の利益に反するという懸念もあり、慎重に検討すべきである」

自民 谷川衆院議員
「私はですね、今のご答弁いただいていますけれど、特段の事情、DVや児童虐待がない限りですね、離婚しづらいような社会になる方が僕は健全だという風に思っています」

 この発言には、立憲から苦言が呈されました。

立憲 寺田衆院議員
「DVや児童虐待がなければ離婚しづらい社会がいいというのは、甚だ強い違和感を私は持ちました。離婚することで守られる子供の利益だってたくさんあるわけで」

 改正案を巡って、政府・与党は今の国会での成立を目指しています。ただ、立憲は問題点は多岐に渡るとして共同親権を原則としないことを盛り込んだ修正案をまとめ、協議したい考えです。