この週末、北東部でロシアと激しい戦闘となっているウクライナ。国内では徴兵逃れが横行するなどゼレンスキー大統領に不満の声あがっています。

■「自分は女性だ」妹の身分証を手に“女装”

ウクライナを出たい…ある者は川を渡ろうとした…そして、ある者は女性になりきろうとした…しかし、現実はそう甘くはありませんでした。
ウクライナとハンガリーの国境付近。今月7日、出国を試みた7人の男たちがウクライナの国境警備隊に身柄を拘束されました。ロシアによる侵攻開始後、ウクライナでは国家総動員令が出されていて、18歳から60歳の男性は原則、出国禁止になっています。
(拘束された男(44))「不法に国境を越えたかった」
こちらの44歳の男。6日にルーマニアとの国境を越えようとしたところ、女装を見破られました。「自分は女性だ」と妹のパスポートを手に言い張っていたといいます。
Q.手はどうした?
(拘束された男)「途中でけがをした」
時に命がけの国境越え。泳いでモルドバを目指した男はエアベッドをボート代わりに。ブローカーに2000ユーロを支払っていました。当局によると、これまでに25人の水死体が回収されているということです。
(キーウ在住ボグダン・パルホメンコさん(37))「皆さんこんにちは、きょうは実はキーウにおにぎり屋さんがオープンしたんです」
ウクライナの現状をYouTubeで伝えているボグダン・パルホメンコさん。ロシアの侵攻から2年、国民の間で起きているある変化を肌で感じているといいます。
(キーウ在住ボグダン・パルホメンコさん(37))「一番やっぱり大きくあるのはどこまでの代償を負いながらこの戦争を続けていけばいいのかという部分の、国民の中の感情の変化です。戦争が長期化してしまって、そこに対する代償がどんどん国民1人1人にのしかかっているような状況で、かなり苦戦を強いられています」

■「がれきの下に夫が…」ウクライナ北東部で戦闘激化

ロシア軍による砲撃で破壊された住宅。そのがれきの下から奇跡的に男性が助け出されました。
「足と手は動きますか、気を付けて、急がないで」
新たな攻撃にさらされているのはウクライナ北東部のハルキウ州。10日朝から国境を越えて侵入し、5つの集落を制圧したといいます。
「耳が聞こえなくなった。ちょうどソファーで横になっていたら天井が…家がなくなるなんて。もう人生が終わった」
ハルキウ州の知事によると、30の集落が砲撃を受け住民2500人以上が避難したといいます。
「安全な場所へ避難させますよ。気をつけて、転ばないように」
「爆弾が飛んできました。ミサイルか爆弾か何かわからない。5、6軒の建物が(破壊された)私は無事でしたが近づいたら家が燃えていました。そしてがれきの下に夫が…呼んでも反応しないの」
こうしたロシア軍の動きについて、ロシア領内に対するウクライナ側からの砲撃を防ぐため“緩衝地帯”を作ろうとしているのではないかという見方が出ています。監視団体が作成したウクライナ東部の地図を見てみると…ドネツク周辺などの前線の各地でロシア軍が攻勢を強めていて、ウクライナ軍の“苦戦”が続いていることがわかります。
(ウクライナ砲弾部隊の兵士)「もちろん砲弾は十分じゃない。以前と比べると1日100発撃っていたが、今は30発撃てば贅沢なくらいだ。人員と支援が必要だ。残念ながら人員不足にあるからだ。ここの兵士は疲れて、病気になったりしている」
Q.精神的にはどうですか?
「精神的にもそうだ。肉体的にも精神的にもぐったりだ」

■兵士不足で徴兵逃れ厳罰化“受刑者の入隊”も

ウクライナの最高議会は8日、収監されている受刑者の軍への入隊を認める法案を可決しています。
(麻薬密輸で刑期8年の受刑者)「受刑期間の代わりに契約が結べるなら戦う。ここにいるメリットがない。戦闘部隊にいられたらと思う」
国民の間に広がる戦争疲れから深刻な兵士不足が起きているウクライナ軍。先月、ゼレンスキー大統領は徴兵逃れの罰則強化などを盛り込んだ動員に関する改正案に署名しました。
(ウクライナゼレンスキー大統領)「国境やすべての前線でロシアの攻撃計画を妨害するため必ず撃破する」
Q.今国民はゼレンスキー氏にどのような感情を抱いている?
(ボグダン・パルホメンコさん)「次の大統領はないなという考えが大きくあります。すでに役目は終えているのかなと感じます」
(ボグダン・パルホメンコさん(開戦当時))「一応、充電コンセントもあるので携帯充電できそうです」
ロシアによる侵攻が始まった2年前、住宅の地下に避難したボグダンさんは、番組の取材にこう語っていました。
(ボグダン・パルホメンコさん(開戦当時))「非常に今支持率が高いです。たぶんゼレンスキー大統領以外で今の立場に入れる人はいないと思います」
(ゼレンスキー大統領)「私たちはみんなここにいます。独立をちゃんと守っています」
首都キエフに留まったゼレンスキー大統領。開戦直後の支持率は90%に及んでいましたが…今年2月、英雄として国民の人気が高いザルジニー総司令官を解任した直後には、60%に大きく低下しています。
(ボグダン・パルホメンコさん)「前線に行く必要が本当にあるのか、そして徴兵される意味はあるのか、そしてそういう戦いを続けること自体正しいのかという議論というのが、国民1人1人の中で起きてしまっているような状況でございます。それに伴ってゼレンスキー大統領、現政権への不満というのが日に日に強くなっていっているというような状況です」
実は、ゼレンスキー大統領の任期は今月の20日まで。戒厳令中のため職務の継続が見込まれていますが、ロシア大統領府のペスコフ報道官は…
(ロシア大統領府ペスコフ報道官)「ゼレンスキーの未来は封じられている。もうすぐウクライナ国内も含めて、多くの人が彼の正当性に疑問を投げかけるだろう」
ウクライナ国民の間では、次の大統領候補として9日に駐イギリス大使に任命されたザルジニー前総司令官の名前も挙がっているといいます。
(ボグダン・パルホメンコさん)「ゼレンスキー大統領が掲げたロシアとの停戦などはしないという部分なんですけども、実際に(停戦は)しない、じゃあ次はどうするんだという質問が生まれます。そこに対する明確なビジョンの提示というのがゼレンスキー大統領自身から提示できていません。大変な状況だけが国民にしわ寄せという形で来てしまっているというような状況なので、やはりそういう部分の対話を深めていけるようなリーダーが必要なんじゃないかと私は感じます」

■ゼレンスキー氏暗殺計画は「5万ドル以上」

さらには、ゼレンスキー大統領らを狙った「ロシアによる暗殺計画」の存在も…ロシアの情報機関と暗殺計画を立てたとして逮捕されたのは、要人の警護を担当するウクライナの国家警備局の大佐2人でした。
(ロシア連邦保安局職員)「任務を果たせば5万以上の報酬を支払う」
(暗殺の実行役)「5万以上?通貨は?」
(ロシア連邦保安局職員)「ドルだよ」
ゼレンスキー氏に対する暗殺計画はこれまでに「10回以上あった」といいます。
通算5期目、新たな6年間の任期をスタートさせたプーチン大統領。ウクライナ情勢を念頭に国民に結束を訴えました。
(ロシアプーチン大統領)「祖国の運命、その将来は我々一人一人にかかっている。勇敢なロシア軍に栄光あれ。ロシアのために、勝利のために、万歳」

5月12日『サンデーステーション』より