北米市場では3列シートSUVの「CX-90」に続いて、2列シート仕様の「CX-70」も発表されたマツダの“ラージ商品群”。その第1弾モデルである「CX-60」の実力を改めて検証すべくゴルフに出かけてきました。乗り心地に難があると指摘されてきた同車ですが、最新仕様は“快適なゴルフ旅”を楽しむことができたのでしょうか?

マツダのスポーティSUV「CX-60」の最新版でゴルフに出かけてみた

 昨今、ゴルフ場の駐車場でもよく見かけるようになったSUV。そこで今回は、SUVで快適なゴルフ旅を楽しめるのかをチェックしてみました。

 今回、ゴルフ場への往復の“アシ”として活躍してくれたのはマツダ「CX-60」。なかでもマイルドハイブリッド仕様の3.3リッター直6ディーゼルターボを搭載する「XDハイブリッド プレミアムスポーツ」です。タンカラーのスポーティかつ豪華な内装が目を惹く最上級グレードを選択しました。

 目的地は静岡県裾野市にある、とあるゴルフ場。東京・世田谷の自宅からだと片道105kmほどの距離にあり、復路にレストランや道の駅に立ち寄ることなどを考えると往復250kmくらいの走行距離が見込まれます。

「CX-60 XDハイブリッド プレミアムスポーツ」の燃費は、カタログ記載のWLTCモードで21.0km/L。燃料タンク容量は58リットルなのでトータル1200km以上の航続距離を見込めます。気持ちよく飛ばしてしまうと燃費は思いのほか悪化してしまいますが、「燃費がいい」といわれる「CX-60」のマイルドハイブリッド・ディーゼルがどの程度の燃費データを記録するかにも注目です。

 いよいよラウンド当日、「CX-60 XDハイブリッド プレミアムスポーツ」でゴルフ場を目指します。

 筆者の自宅は住宅地にあるため、早朝、クルマで出発する際にはエンジン音が近所迷惑にならないか気になってしまいます。

「CX-60 XDハイブリッド プレミアムスポーツ」は最新のディーゼルターボを搭載するためエンジン音はかなり抑えられていますが、それでも電気自動車などと比べてしまうとエンジン音が耳に届きます。モーターだけで走行できるモードなどがあるといいのに、と感じました。

 住宅街の狭い道を抜けて環八(東京都道“環状八号線”)へと進み、東京インターチェンジから東名高速に入ります。休日の朝だけに交通量は多めで、特に環八では赤信号での停止と加速の繰り返しとなります。

 踏力の強弱で制動力をコントロールしやすいマツダ車のブレーキに対して、違和感を覚えるという人もいますが、今回の試乗車では悪い印象はありません。アクセルペダルから足を離すと回生ブレーキなどによりスピードが徐々にダウンし、そこからフットブレーキを踏み込んでいくことでスムーズに制動力が強まります。

 確かに、マイルドハイブリッド機構のないピュアディーゼル仕様の方が、ブレーキペダルの踏み始めからブレーキタッチに剛性感があります。とはいえ、マイルドハイブリッド仕様の3.3リッター直6ディーゼルターボを搭載する「XDハイブリッド プレミアムスポーツ」もブレーキフィールは良好です。

 また、青信号で動き出す際には、モーターアシストによってスムーズな発進が可能。アクセルペダルを軽く踏み込むとスーッと気持ちよく車速が伸びていきます。

 ただし、ストップ&ゴーが連続する区間では、トルクコンバーターレスの独自のトランスミッションの辺りから生じるノイズが気になることも。各部がアップデートされたと思われる最新仕様のそれは初期モデルと比べてギクシャク感が大幅に減っていますが、音に関してはさらなる進化に期待したいところです。

 東名高速に入った後は、一路、裾野インターチェンジを目指します。

 3.3リッターという大排気量ディーゼルターボは254psを発生、そこにモーターによる16.3psのアシストが加わった「XDハイブリッド プレミアムスポーツ」の動力性能は、パワフルのひと言。アクセルペダルを踏み込むとグイっと前へ押し出される豪快な加速を味わえます。

 それでいて、周囲の流れに合わせたジェントルなクルージングも得意科目です。ディーゼルエンジン特有の厚いトルクと8速ATの恩恵で、100km/h走行時のエンジン回転数はわずか1500rpmほど。こうしたクルージング時の低い回転数も、3.3リッターとは思えない驚異的な燃費データに貢献しているのでしょう。

 普段から交通量の多い東名高速は、時折、路面にわだちやひび割れの補修跡が見られます。デビュー当初の「CX-60」はそんな荒れた路面が苦手で、場所によっては通過する際に車体が大きく揺すられたり、一度生じた揺れがなかなか収まらない状態が続いたりしました。

 しかし、今回ドライブした最新仕様の「CX-60」はサスペンションがアップデートされたのか、車体の揺れが以前よりも収まりやすくなった印象です。路面からの突き上げ感も緩和されているように感じました。確かにまだ硬めではありますが、この乗り心地であれば不満はさほど感じないと思います。

 裾野インターチェンジで一般道へと降り、目的地であるゴルフ場を目指します。

 途中、コーナーが連続する区間で走行モードを「スポーツ」にすると、アクセルレスポンスが格段に高まり、ドライブするのが楽しく感じます。「CX-60」の「XDハイブリッド プレミアムスポーツ」は車重が1940kgという重量級ですが、それを一切感じさせない軽快なフットワークはお見事です。

 また、マイルドハイブリッド仕様の3.3リッター直6ディーゼルターボは高回転域まで豪快に吹け上がり、パワーがモリモリと湧き上がっていく印象。その際に耳に届くエンジン音も心地いいものがあります。

 さらに、独自のトルクコンバーターレス8速ATは、低速域でこそラフな振る舞いが気になるケースこそあるものの、ワインディングでは水を得た魚のよう。小気味いいダイレクトな変速でSUVとは思えないスポーツカー顔負けのドライブを楽しませてくれます。

後席の背もたれを倒すと奥行き1710mmの荷室が出現

「CX-60」の走りを楽しんでいると、あっという間に目的地に到着。エントランスでラゲッジスペースからキャディバッグを降ろします。

アップデートが図られた足回りにより、休日のゴルフ旅をさらに快適に楽しめるようになったマツダ「CX-60」。荷室の使い勝手のよさも魅力的だ

 フロア下のサブトランク込みで570リットルの容量が確保された「CX-60」のラゲッジスペースは、タイヤハウス後方の左右がえぐられています。荷室幅は最大約1275mmとワイドなため、フルセットのキャディバッグも横向きに積載することができます。

 ただし、大型のキャディバッグでは結構ギリギリなので、長尺ドライバーを収めたキャディバッグは、横向きには収まらないかもしれません。

 その場合は、4対2対4分割式リアシートの背もたれを一部倒すと、縦向きに積み込むことができます。今回は中央の「2」の部分と右側の「4」の部分を倒して積み込んでみましたが、そこに2セットのキャディバッグを楽に積み込むことができました。

 また、リアシートの背もたれはラゲッジスペースに備わるレバーで倒すことができるので、荷物の大きさや量に合わせて楽に荷室をアレンジできます。

 ちなみに、ラゲッジスペースの後端からフロントシート背もたれ背後まで使った際の荷室の奥行きは1710mmもあるため、長尺ドライバーなども難なく積み込めます。これだけの長さがあれば、ゴルフ以外の趣味、例えばフィッシングのロッドを積んだり、車中泊を楽しんだりするのにもよさそうです。

 しかも、ラゲッジスペース自体が広大なため、左側の空いたスペースに着替えなどを入れたボストンバッグやシューズケースなどを整理して積むことができました。

 さらに「CX-60」の荷室でうれしいのが、リアゲート開口部の下端と荷室フロアの高さが同じで段差がないこと。段差を避けるためにいちいちキャディバッグを持ち上げる必要がないので楽に積み下ろしができます。

 早朝からラウンドを楽しんだ後、復路はACC(アダプティブ クルーズ コントロール)を活用して都内を目指します。

「CX-60」のACC設定スイッチはステアリングに集中して設置されており、また、スイッチ類を操作した際の節度感もしっかりしているため確実に操作できます。

 作動時の制御はもう少し進化を期待したいところですが、東名高速上り線でおなじみの、海老名サービスエリア付近での渋滞に遭遇しても難なく通過することができました。

 帰宅後、気になる燃費をチェックしてみたところ、239kmの走行距離に対して19.1km/hという良好な数値をマークしていました。総走行距離の7割ほどが高速道路というルートだったこともありますが、マイルドハイブリッド仕様の3.3リッター直6ディーゼルターボの燃費のよさはやはり特筆すべきものがあります。

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 乗り心地が硬いという定評のあった「CX-60」だけに、当初は「ゴルフ場まで快適に移動できるかな?」と感じていた今回のゴルフ旅。改良に関するオフィシャルな発表こそないものの、最新仕様の「CX-60」は各部がアップデートされているようで、想像以上にロングドライブが快適なクルマに仕上がっていました。

 ワインディングでは豪快な走りを楽しめ、高速道路ではスムーズで意のままに移動できる「CX-60」。なかでも最新仕様は、ゴルフ旅の“アシ”としておすすめできるモデルといえます。