横浜育ちの学生が北海道の稚内へ就職!最北の地で目にした“北海道あるある”を綴る漫画「しろまる最北日記」。作品の中では、作者の高木さんが白丸あすか(@Asuka_Shiromaru) という架空のキャラクターとなり、現地での体験を漫画にして共感や笑いを誘っている。エピソードのテーマは「試される鉄路」。漫画に込める思いなどを聞いてみた。

■試される鉄路
北海道の鉄道は札幌近郊や函館周辺など一部を除き、大半が非電化区間。電車が走れず、ディーゼルエンジンを搭載したディーゼルカーが活躍している。そのため地元民が鉄道を指す時は、都会では呼び慣れた「電車」ではなく「汽車」「JR」を使うことが多い。

モータリゼーションの浸透や札幌への一極集中などもあり、北海道の鉄道は最盛期の半分近くまで減ってしまった。ここ5年でも廃止区間が相次いでおり、白丸あすかは少し寂しさを覚えるのだった。

稚内は日本最北の駅。駅舎は2階に映画館を備えた複合施設になっている。運行本数は少なく、普通列車なら10時台に乗り遅れると、次は18時台になってしまう。ICカードはまだ使えない。

北海道だけではなく全国の地方に見られる傾向だが、駅前より幹線道路沿いが栄えているため、住民は車を使いがち。一方、まだ車に乗らない学生が利用することで、「通勤ラッシュ」ならぬ「通学ラッシュ」が見られる。

都市近郊では味わえない絶景や旅情は北海道の鉄道ならではの魅力。北海道新幹線の札幌延伸により、北海道の鉄道事情はまた大きく変わることだろう。利便性などの課題は多く、事情は複雑だ。

■実際に住んでみると、北海道の鉄道へのイメージが変わった
移住前に比べ、北海道の鉄道に対するイメージが変わったという高木さん。「以前は、あくまで『旅行者』の視点で北海道の鉄道を見てきました。大自然の中をディーゼルカーが走る様は普通列車でも趣きにあふれていて、近年続々と路線が廃止されている現状に悲しさを覚えていました。しかし、いざ沿線住民の立場になってみると、自動車を利用してばかり。ほとんど鉄道に乗る機会がなく、申し訳ない気分になります」

そんなわけで、「私は鉄道の利用促進や沿線の魅力紹介等には大賛成ですが、行政やJR側から『経営難による廃止』が示唆された鉄道事業に関しては、自分の目で見てきた現状を踏まえ、無責任に『廃止反対!』とは言えなくなりました…」という。

■非冷房の車両や簡素な無人駅は独特
北海道の鉄道ならではだと思ったことは?「寒さに強い一方で、夏は過酷な『非冷房』の車両がまだ残っていることですかね(最近は新型車両への置き換えが進んでおり、かなり少なくなりました)。逆に朝晩に冷え込む北海道では、8月でも暖房をつけた列車が走ることもあります」

簡素な造りをした無人駅(秘境駅)も外せないとか。「俗に『朝礼台』と言われる板張りの簡素ホームがあるだけの駅や、貨車を改造した待合室を有する駅などが道内ではよく見られます。このような無人駅にはもちろん自動改札がなく、乗るときに整理券を受け取り、降りるときに運賃箱へ料金を支払います。まるでバスです」

■おすすめ鉄旅なら道東の路線へ
ぜひ旅してほしいおすすめの路線を聞いてみると「(稚内がある)宗谷本線!と言いたいところですが、これに関しては圧倒的に道東です。私が常におすすめしているのは、釧路〜網走を結ぶ『釧網(せんもう)本線』と釧路〜根室を結ぶ『花咲線』です。特急列車が走っていない極東のローカル線ですが、1両編成の汽車が広大な湿原を駆ける様は最果ての旅情を誘います。流氷を題材にした観光列車や、トロッコ・SLも走っています」

さらに「宗谷本線も雪や野生動物によるアクシデントをアトラクション感覚で楽しむことができれば、北海道をらしさを感じられる路線としてなかなかおもしろいです。稚内の手前で一瞬景色がひらけ、日本海に浮かぶ利尻山が見られるポイントは絶景です」。北海道を鉄道で旅する際は参考にしてみよう。

取材・文=折笠隆