インデーズレーベルの雑誌「COMIC IN THE HOLE」の編集も務める猪原秀陽(@inoharahideharu)さんの創作漫画『不思議なピストル』が話題を集めている。ある日少年が公園で拾ったピストルは、撃ったものをレコードに変えてしまう不思議な機械だった…という印象的な導入から、意外な展開を見せていく本作について、作者の猪原さんに話を伺った。


■「宇宙人たちはレコードの音楽を聞いて、その物の情報を読み取る」

ピストルで撃ったものがレコードとなり、その物体の「音楽」を聞くことができるという設定が印象的な本作。猪原さんは「音楽を漫画で表現するときに『どんな曲かを言葉で具体的に説明せず、読者に想像させるような表現をしてみたい』と思ったのが始まりだったと思います。

一方で、別のものを通して『変換』や『翻訳』するというようなことに興味を持っていて、その延長で物が音楽に変換・翻訳されたらどんな曲になるだろうか?という感じでストーリーを作り始めました」と、本作が生まれたきっかけを告白。

後半の展開を受けて「考えさせられる作品」といったコメントも寄せられたが、「人間誰しもネガティブな部分や悪い部分を持っているということを、自分的には肯定的に描いたつもりです。きっと同じようなことを感じている方がたくさんいるのだと思います。それが漫画を通して伝わったのだとしたらとてもうれしいです」と、本作に込めたメッセージを多くの人が読み取ってくれたことを喜んだ。

ところで、宇宙人は“あのピストル”を何に使っていたのだろうか。その疑問をぶつけてみると、「誰かに突っ込まれたら、答えようと思って考えていた裏設定があります(笑)。宇宙人たちは、長年地球を調査・研究していて、地球上のありとあらゆる物を収集している。音や空気の振動の技術を進歩させてきた種族で、地球の音楽はけっこう好き。

物質をもっと効率よくコンパクトにデータ化する技術を持っているが、地球のレコード文化に愛着を持っており、遊び心でレコードを模して地球の物をアーカイブ化している。宇宙人たちはレコードの音楽を聞いて、その物の情報を読み取る。地球人もその音楽を聞いて、なんとなく感覚的にその物をイメージできる――というような感じです」と、詳細な裏設定を明かしてくれた。

作中では感想が語られることのなかった「レコードになった人」の音楽。それがどのようなものなのかも気になってしまうが、猪原さんは「作品は素晴らしいのに作者の素行がひどかったりすることも多々あるので、たぶんすごくいい曲なのではないかと思います」と、自身の経験をもとに予想を語った。



取材協力:猪原秀陽(@inoharahideharu)