SNSを中心に漫画を公開している乃田ユウキ(@nd___yk)さんの漫画「かわいそうな私たち」が話題を集めている。かわいくて勉強もできるクラスの人気者・藤島さんが“本当の幸せ”について考えていく本作は、「誰もが羨む存在だからと言って悩みがないわけではない」という、見過ごされがちな事実にフォーカスした作品だ。本作について、作者の乃田ユウキさんに話を伺った。



■「自分を自分で慰めてあげるのは、真面目な人ほど難しいことなんじゃないか」

本作を描いたきっかけについて、乃田さんは「自分のことを『かわいそう』と認めてあげるのが難しい時代だなと感じ、その息苦しさを漫画にしました。SNSが普及して、自分より恵まれている人、恵まれていない人の生活が見えるようになって、自分の幸せ度の偏差値がわかりやすくなったと思うんです。

そんな中で、例えばとっても悲しいことがあったときに、『今とっても悲しい気持ちだ。今の自分はかわいそうだ』と自分を自分で慰めてあげるのは、真面目な人ほど難しいことなんじゃないかなと思い、この漫画を描きました」と、自分の辛さを正直に口に出来ない息苦しさが創作の根底にあったことを告白。

美少女の藤島さんと写真部の松崎さんという2人の人物像も魅力的だが、それぞれモデルとなった人物がいるそう。「2人とも、私の友達がモデルです。ある友達は、悩み相談の中で『でもこんな悩み、ほかの人に比べれば大したことないから』と笑顔で言い、ある友達は、ときには周りの目を気にしながらも『これが私がしたいことだから』と自分の信じる道を突き進んでおり、この2人をモデルに藤島さんと松崎さんのキャラクターを考えました」と教えてくれた。

藤島さんがミスコンへの参加を断らなかった理由について深掘りすると、「『出場したい』という意思はなかったと思います。藤島さんは周りの期待や視線を無意識に考えて行動する癖がついているので、出場しなかったときに周りからどんな風に思われるかを考えたうえで、最終的に出場したんではないでしょうか」とのこと。周囲の期待に応えなかった時の“面倒臭さ”を知っている人ほど、やりたくないことでも「がんばらなければ」と思ってしまうのかもしれない。

最後に、乃田さんは「生きづらさの中で一生懸命生きる人たちを描きたいです。今まではどんな作品を描きたいかわからず手探りで描いていたんですが、担当さんや読者の皆さまのおかげで、最近は描きたいことが見つかってきた気がしています。これからどんどん挑戦して、ばんばん失敗して、それでも少しずつ前進できるように全力で頑張ります!」と、自身の今後について語った。



取材協力:乃田ユウキ(@nd___yk)