小学校で流行する、相手に罰を与える妖精のおまじない。いじめを受ける女の子が一縷(いちる)の望みをかけておまじないを繰り返したら、その効果は想像を超えるものになってしまい――。

「想定外」「予測不能」なショートホラー漫画をSNSに公開している、誰でもない( @daredemonaidare )さん。2024年4月に公開されたオリジナル作品「リリベルちゃん」は、小学校を舞台に、ささやかな仕返しを行う妖精“リリベルちゃん”が引き起こす恐怖の事態を描いた作品だ。作者の誰でもないさんに、本作のアイデアやホラーを描くうえでの意識を取材した。

■暴走する妖精の仕返しが恐ろしい
雑誌をきっかけに、小学生の間で広まる仕返しのおまじない「リリベルちゃん」。それはルールの通り行えば、ちょっとした怪我をする程度の“罰”で済む気軽でささやかなものだった。だが、クラスメイトの相沢さんから凄惨ないじめを受けていた本作の語り手の春香と、その友人の彩は、2人でそのおまじないを何度も何度もかけ続ける。

すると、相沢さんは怪我一つしないどころか、逆に春香たちは交通事故に遭ってしまう。しかも事故を起こした車には復讐相手の女子・相沢さんが乗っていて……と、一見罰が主人公たちに返ってきたような展開に。だが、いじめっ子の女子は突然土下座し、事故の一部始終を語り出し――。

罰の内容も、その範囲もおまじないではなく正真正銘の「呪い」になってしまう展開と、人間と怪異の恐ろしさが織り交ぜられて描かれる短編作品。作品の舞台裏を、誰でもないさんに教えてもらった。

――本作のアイデアのきっかけについて教えてください。

【誰でもない】子どもに流行るような軽いおまじないから怖いことが起きる、というものを描こうと思ったのがきっかけです。

――むごいいじめ、異形のリリベルちゃん、交通事故、事故の真相…と、種類の違う恐怖が立て続けに描かれます。本作を振り返って、ご自身で特に思い入れのあるシーンを挙げるならどこでしょうか?

【誰でもない】事故のあと、ガチャっと車から降りてくる相沢さんの表情の怖さですかね。その表情の理由は死に怯えていたゆえにだった、という。

――被害者と加害者の逆転、復讐のはずが救ったことに、と、立場や心境の入れ替わりが描かれているのが本作の魅力です。こうした描き方の狙いは?

【誰でもない】“人を呪わば穴二つ”に尽きます。

――また、リリベルちゃんの極端さが、人間の方が恐ろしいのか怪異の方が異常なのか考えさせられる作品でもありました。ホラーを描くうえで人間と怪奇の扱い方についてはどのように考えられているのでしょうか?

【誰でもない】怖いという感情は、辿っていくとすべて「死」に繋がるものなので、死と人間を繋ぐ流れを具現化した姿が怪異なんだと思います。

取材協力:誰でもない(@daredemonaidare)