たった9台の激レアなアルファロメオTZ3! V10 OHVエンジン搭載のその中身はなんと「ダッジバイパー」だった!!

 この記事をまとめると

◾️アルファロメオTZ3は世界限定9台の希少なモデル

◾️ジュリアTZをオマージュし、アルファロメオの100周年を記念して作られた

◾️ロードバージョンであるTZ3ストラダーレはダッジ・バイパーがベース

TZ3の源流であるジュリアTZ1とTZ2をおさらい

 1963年、それまでのジュリエッタSZの後継車として誕生したアルファロメオのレーシングスポーツが、現在でも貴重なモデルとして高い人気を誇るジュリアTZだ。TZとは、その基本骨格であるTubolare(チューブラーフレーム)を意味する「T」と、ボディの設計と製作を手がけたザガートのイニシャルである「Z」を組み合わせたもの。

 そのアルミニウム製ボディのデザインはじつにスタイリッシュで、リヤエンドをほぼ垂直に切り落とすコーダトロンカ(coda tronca=切断された尾)と呼ばれる手法は、このジュリアTZの大きな特徴となっているばかりか、エアロダイナミクスの観点からみてもそれは非常に優れたスタイルと評価されている。

 デザイナーは、当時ザガートのチーフスタイリストだったエルコーレ・ザガート。フロントに搭載されるエンジンは1.6リッターの直列4気筒DOHCで、その最高出力はわずかに112馬力だったが、それでも最高速は220km/hに達したのは、このボディの優秀なエアロダイナミクスにあったとしても間違いではないだろう。

 ジュリアTZは1965年にはさらに高性能なFRP製ボディが与えられ、さらに「TZ2」へと進化する。これによってそれまでのモデルは識別のために「TZ1」と呼ばれることになったわけだが、TZ1とTZ2の大きな違いは、後者はコンペティツィオーネ、すなわちレース仕様車のみが販売されたこと。

 したがって生産台数はTZ1が112台前後と語られるのに対して、TZ2はわずかに12台とされる。さらに、チューニングが進められた直列4気筒エンジンは170馬力にパワーアップし、最高速も245km/hに向上した。

 そのTZの車名が久々に復活したのは2010年にイタリアで開催された、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステでのことだった。2010年はアルファロメオがレース参戦を始めて100周年にあたる年で、それを記念してワンオフで製作されたモデルが、最初の「TZ3」だった。

超希少車! TZ3のスペックはいかに

 そのTZの車名が久々に復活したのは2010年にイタリアで開催された、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステでのことだった。2010年はアルファロメオがレース参戦を始めて100周年にあたる年で、それを記念してワンオフで製作されたモデルが、最初の「TZ3」だった。

 このTZ3は「TZ3 コルサ」と呼ばれ、ベルギーの小規模スーパースポーツメーカー、ジレ社が生産する「ヴェルディゴ」をベースとしたものだった。このヴェルディゴはオランダのドンカブートをベースに独自のボディをアルミニウム製デザインし、カーボンファイバー製フレームと420馬力を発揮する4.2リッターのV型8気筒エンジンを6速セミATとの組み合わせで搭載。ヴェルディゴの加速性能は0-100km/hで3.5秒を1994年に達成しているが、これは2005年にブガッティ・ヴェイロンが2.5秒を記録するまで破られることのない記録だった。

 そして、ヴィラ・デステで発表されたTZ3は大きな話題となり、アルファロメオはそのロードバージョンの製作を決断。このモデルは「TZ3 ストラダーレ」と呼ばれ、そのデザインはザガートのチーフ・スタイリストに就任していた日本人の原田典彦氏が担当。ベースはなんとダッジ・バイパーACR-Xがチョイスされることになった。生産台数はわずかに9台。それはアルファロメオのロードカー誕生100周年を祝したモデルでもあった。

 長いフロントノーズの中に収められるエンジンは、もちろん8.4リッターのV型10気筒OHV。最高出力と最大トルクはそれぞれ610馬力、760Nmというスペックとなり、これには6速のトレメトリックTR6060マニュアルトランスミッションが組み合わされている。駆動輪はもちろん後輪。イタリアン・スポーツならではの優美なエクステリアと、アメリカン・パワーユニットが生み出す豪快な加速感。TZ3はその両方をカスタマーに与えてくれるモデルなのだ。

 インテリアデザインは基本的にバイパーのそれに等しいが、エンブレム類はアルファロメオのものが使用される。

 この生産型のTZ3は、2012年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで一般公開され、ジェイソン・バトンによるデモンストレーション走行も行われた。

 すでにこの段階で9台のTZ3には、そのオーナーが決定していたことは間違いないが、そのコンセプトは2023年発表の2代目「33ストラダーレ」などにも受け継がれている。ちなみにこちらの製作は、カロッツェリア・トゥーリング・スーパーレッジェーラによって行われる。