ダイハツの影響も大きいけれど登録車も落ち込んでいる! 2023年度の新車販売台数を分析した

この記事をまとめると

■2023事業年度締めでの年間新車販売台数が発表された

■軽自動車では2023事業年度締めのトップはスズキとなった

■昨年比で3月単月の販売台数全体の落ち込みが目立つ

軽自動車の事業年度締め年間新車販売台数はスズキが圧勝

 2024年3月単月の新車販売台数が自販連(日本自動車販売協会連合会/自販連)、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)から発表された。そして同時に2023事業年度(2023年4月〜2024年3月)締めでの年間新車販売台数も発表となった。

 3月単月、そして2023事業年度締め年間新車販売台数でも気になるのは軽自動車となるだろう。その理由はみなさんもご承知のダイハツの不正問題の影響があるからだ。

 結果としては、単月、事業年度締め年間新車販売台数ともにスズキの圧勝という結果となった。とくに事業年度締め年間販売台数トップについては、「18年ぶりにスズキがトップとなった」と各メディアが大きく報じている。

 今回の結果については、「ライバルの自爆行為」ともいえるものが大きく影響しているのは間違いないので、当のスズキも手放しで喜んでいるのかは気になるところではある。

 2023事業年度締め年間新車販売台数を分析すると、ダイハツが一連の不正をうけ全車種の出荷停止をはじめた2023年12月より前、つまり2023年4月から11月の累計販売台数をみると、軽自動車総台数では1万台強の差でダイハツがトップとなっていた。前年同期比、つまり2022年4月から2022年11月の累計販売台数をみると、約2.3万台差でダイハツがトップとなっていた。

 すでに2023年5月にはトヨタ向けに「ライズ」としてもOEM(相手先ブランド供給)している、ロッキーについての不正行為を発表しており、それなりにその影響が出ていたようなのだが、2023年12月末以降は軽自動車も出荷停止となり、流通在庫で凌ぐしかなかったのが今回の結果に至った大きな理由だと判断できる。

 今回トップとなったスズキとの差は約10万台となり、月販平均では約9000台とけっして「僅差」という結果でもない。しかし、軽四輪乗用車のみではスズキはトップだったが、軽四輪貨物では2023事業年度締め年間新車販売台数でもダイハツがトップとなっている。しかも、ダイハツについては前年同期比でも78.4%(軽四輪総台数)に落ち込みを抑えている。流通在庫台数の多さが、出荷停止後になっても落ち込み幅をできるだけ大きなものとしなかったともいえよう。

 中古車販売店などをまわると、今回のダイハツの不正行為に対する悪影響が限定的という話が聞けた。「試験などに不正があったわけで、車両自体に問題があったわけではない」と、ある意味では今回の件を冷静に判断するユーザーが多かったのである。これは「不正発覚後も軽自動車に関しては目立った中古車価格相場の落ち込みがなかった」という事情通の話も裏付けとして捉えていいだろう。

大きく出遅れたダイハツの今年度はどうなる?

 そこで気になるのが、全面出荷停止解除後の動きである。すでに順次出荷再開が行われており、本稿執筆段階では全面再開も時間の問題のようにも見える。本稿執筆段階では軽自動車に限れば出荷停止中となっているのは、コペン、タフト、ムーヴキャンバスのみだが、すでにコペンやタフトの再開が発表されており、ムーヴキャンバスを残すのみとなっている。ムーヴキャンバスは筆者が見た限りでは、届け出済み未使用軽中古車の台数もかなり多いので、ある意味「出荷調整」、そして他車への生産資源の集中などのため再開が最後になっているのかもしれないと見ている。※4月23日に全車種出荷再開を発表

 いずれにしても、消費者は今回の不正についてほぼネガティブに見ているわけではないので、今後のダイハツの販売促進の展開次第では、2024暦年締め上半期(2024年1〜6月)や2024事業年度締め上半期(2024年4〜9月)あたりですでに「軽自動車販売トップ爆走」という状況になるかもしれない。

 事実、2024年3月単月の販売台数をみると、商用車のハイゼットは2月末、そして軽乗用車で稼ぎ頭のタントが3月末から出荷再開しており、2024年2月比で5000台ほど販売台数を増やしている。とくにハイゼットは3倍近くに台数を増やしている。軽乗用車は2024年2月比でほぼ横ばいだが、これは流通在庫をほぼ使い果たした状態のなかでは仕方のない結果ともいえるが、4月以降は驚くほどの回復を見せているかもしれない。

 そしてもうひとつ気になるのは、ホンダが軽四輪総台数、軽乗用車台数ともに前年比でほぼ横バイになっているということ。現行N-BOXは2023年10月にデビューしているので、それまでは先代型を在庫処分という表現が適切かは別としても売りまくり、その後は新型車需要で盛り上がりを見せていれば前年同期比横バイはあまり考えにくい状況ともいえる。

 現行型は販売で苦戦傾向なのが統計を見ても伝わるようになってきている。

 登録車では、3月単月でみると26万8843台(前年比81.4%)となっているのがおおいに気になるところ。これを2023事業年度締め年間新車販売台数でみると、254万6921台で前年比プラスとなっているので、2024年3月の落ち込み具合がかえって目立って見える。

 2024年3月単月の販売台数をブランド別でみると、ダイハツが前年比でマイナス幅が大きいのは仕方ないとしても、レクサス、マツダ、トヨタのマイナス幅が少々目立っている。ただし、トヨタはダイハツからのOEM(相手先ブランド供給)車となるライズやルーミーが、3月中もほぼ出荷停止中だったため、3月実績扱い(実績にするには3月中に新規登録するのが条件)に貢献できなかったことも大きいようであった。

 ただ、トヨタについてはミニバン系を中心に新規受注停止扱いの車種が目立っており、そのような「生産調整」ともいえる動きも少なからず影響しているようにも見える。国内販売では圧倒的な販売シェアを誇るブランドで生産台数も多いこともあるので、一時の納期遅延からの軌道修正に時間を要するのは、これも仕方ないことなのかもしれない。