Wedge2024年2月号では、「霞が関の危機は日本の危機 官僚制再生に必要なこと」を特集しております。特集では、泉房穂・前明石市長からの緊急提言を掲載しております。今回はその記事の一部を公開いたします。

 誤解があるかもしれないので、自分のスタンスをはっきりと申し上げておきたい。

 私は、「官から民へ」派ではなく、官僚バッシング派でもない。「公の仕事は尊い」と考えている生粋の〝公派〟の人間である。

泉 房穂 Fusaho Izumi 前明石市長
1963年兵庫県明石市二見町生まれ。県立明石西高校、東京大学教育学部卒業。日本放送協会(NHK)、テレビ朝日、石井紘基衆議院議員の秘書を経て、1997年に弁護士資格を取得。2003年に衆議院議員となり、11年から23年まで明石市長を務める。

 もちろん、民間には民間の良さがあるが、この世の中、全てが民間だけでは成り立たない。儲からないことでも必要なことは山ほどあるからだ。行政サービスはその典型である。

 人は生まれた瞬間から人によって支えられながら生きている。人間は集団で生き、社会をつくる。社会を運営していくためには、みんなのために使うお金と、みんなのために働く人たちがいる。それが税金であり、公務員だ。両者はまさに社会の基盤である。

 私はまた、増税反対派ではなく、小さな政府派でもない。中負担高福祉派である。公務員がしっかりと汗をかいて知恵を絞り、国民が満足できる高福祉社会を実現したいと切に願っている。

自著の中でも述べてきたが、こうした思いを持つに至ったのは、幼少期の経験が大きい。

 私は兵庫県明石市二見町という小さな漁師町で育った。ずっと、貧乏であった。しかも、4歳下の弟には生まれた時から障害があった。チアノーゼ(酸欠状態)で息も絶え絶え。成長しても障害が残ることが明らかだった。

 当時の日本には、「優生保護法」があり、国を挙げて障害者を差別する施策を推進していた。なかでも兵庫県は1966年、当時の知事の旗振りのもと、「不幸な子どもの生まれない県民運動」という政策を推し進めていた。

 こんな状況だったから、弟が生まれた時、医師は両親にこう言った。

「このままにしましょう」