堂島取引所(大阪市西区)が今年2月に農林水産省と経済産業省へコメ先物取引本上場を申請した。両省は6月21日までに認可の可否を行い、順調にいけば8月にはコメの先物取引がスタートする。

私たちが普段手にするコメはどのように価格が決まっているのか(gyro/gettyimages)

 コメ先物取引に関しては、2021年8月に10年にわたって続けられた試験上場からの本上場への「否認可」の決定が下されていた。わずか2年半で再び本上場への動きが出ているのは、農業界の意識の変化がある。

 「公平で自由な市場がなければ、コメは産業として成り立たない」コメ先物取引の行方は、農業・食品業界だけでなく、日本経済全体に影響を及ぼし得る。

否認可から2年半で本上場申請に動いた堂島取引所

 これまでの日本のコメ取引は、JAグループが農家に概算金を支払って委託を受け、卸に販売する流通ルートが主流だ。その流通過程における販売価格の決まり方は一般消費者からは〝ブラックボックス〟となっている。コメの生産には、さまざまな公的支援を受けているのにもかかわらず、どのように価格が決まっているかわからないのは、納税者としてもに説明できない状況となっていた。

 これに対し、堂島取引所が11年から、コメ先物取引の試験上場を行っていたが、当業者の利便性を図るべく新潟県産コシヒカリや秋田県産あきたこまちといった特定産地銘柄を取引していたが、十分な取引がなされるかとの懸念から否認可とし、灯が消えた。

 この流れに大きな変化を及ぼしたのは、コメの先物取引に否定的であったJAグループが容認する姿勢に転じたことが挙げられる。水面下の政治情勢では本上場阻止に動いた大物政治家から「ちゃんとした現物市場があることが先」という言質を得て、新たに「みらい米市場」という現物取引組織が昨年10月に立ち上がったことが大きい。取引はまだほんの一部に過ぎないが、これまでコメ産業になかった「価格設定の見える化」がなされるようになった。

 こうした情勢の変化を受けて農水省は大臣官房新事業・食品産業部が主導して「コメの将来価格に関する実務者勉強会」を23年5月から24年1月まで4回にわたり開催。とりまとめとして「現物相対取引や現物市場取引に加え、予め取引価格を決めることのできる取引形態 を組み合わせて活用することにより、各事業者が将来の価格変動に対するリスクを抑制する選択肢が広がることが期待される」という結論を公にしている。