昨年開催された24時間AIハッカソンの模様。筆者撮影

ハッカソンという言葉を最初に聞いたのは2000年代前半だった。
ハッカソンとは、コンピュータを手早く使うという意味の「ハック」とマラソンを組み合わせた言葉で、シリコンバレーを中心に広がり、ある時期まではシリコンバレーで毎週のようにハッカソンが開かれていた。

ハッカソンにはチームまたは個人で参加して、24時間や48時間といった短期間で、与えられたテーマに沿ったプログラムを組み上げることである種のプロトタイプを開発する。審査員がコンセプトやプロトタイプの出来栄えを審査し、優勝者には賞金が与えられる場合もある。

ただ、ハッカソンの魅力はあくまでも、与えられたテーマに対して自分たちがその時点で持つスキルを結集し、チームメイトと力を合わせて一人では達成困難な目標に挑戦するプロセスそのものだ。

つまり、ハックの楽しさとマラソンのカタルシスをあわせたもので、ハッカソンには必ず成長が伴い、できたものがどんなものであれ、ゴールに辿り着けば全員が達成感を得ることができる。筆者も初めて参加したハッカソンでは48時間の終了後に号泣してしまった。

日本で最初にハッカソンという言葉を聞いたのは2003年で、のちにスマートニュースを立ち上げる鈴木健が国立オリンピック記念青少年総合センターで日本で初めてではないかと思われるハッカソンを開いていたのを見学しに行ったことを覚えている。

ハッカソンと似た形態で、「ゲームジャム」というものがあり、これはゲーム開発に特化したハッカソンで、一定期間内でその場に集まった見ず知らずの人たちとチームを組んでゲームを一本作り上げるというものだ。ゲームジャムの中でももっと大規模なものはグローバルゲームジャム(GGJ)というイベントで、カリフォルニア州にある非営利団体が行う、全世界的なイベントとなっている。

2023年のグローバルゲームジャムの参加者は全世界4万人で、48時間で7000ゲーム以上が開発された。

日本でも一時期ハッカソンが活発に行われた時期があったが、「ハッカソン荒らし」などが問題になって少しずつ数は減っていった。

日本最大級のハッカソンと言われるYahoo!の「Digital HackDay」だけだったが、2022年大会を最後に開催されていない。もちろんこれにはコロナ禍という事情もある。

ハッカソンが難しい点は二つ。

まず、ハッカソンに参加するには、ある程度まとまった時間を確保しなければならないこと。

しかし一番の問題は、ハッカソンの中心にはハッカー、つまりプログラマーやエンジニアという人たちが必要なこと。しかも、それなりに経験豊富なエンジニアでなければ短時間でうまくものを作り出すことはできない。

ハッカソンに参加できるほどレベルの高いプログラマーはなかなかおらず、また、それくらいのスキルをもつプログラマーがまる二日も予定をあけるのは難しい。その結果、ハッカソンを開催したくてもエンジニアが集まらなくて開催できない、ということがあった。

しかし、ここ一年ほどで状況はガラリと変わった。
生成AIと呼ばれる一連の技術が進化したことでプログラムの基礎的な部分はAIが書けるようになった。そうなるとハッカソンの大前提条件であった「スキルの高いプログラマー」がいなくても、「ある程度のプログラマー」であれば参加できるようになったのである。

特に、ハッカソンに限らないが、あるアイデアをプログラムの雛形(プロトタイプとかスケルトンとか呼ばれる)に落とすにはプログラマにさまざまな知識が必要になり、負担が大きい。

ところが生成AIを使うと、この「最初のハードル」をAIが肩代わりしてくれる。

新しくプログラムを書こうとするときに面倒なのは、アイデアがいろいろ出ても、それを実現するために必要なフレームワークの知識をプログラマが知っているか、その場で学ぶ必要があった。これはあまりにも大変だ。

しかし、生成AIは、たとえば絵を描いて「こんなことをするプログラムをPythonで書いてくれ」といえばある程度は書いてくれる。

「こういうことをするPythonモジュールを教えてくれ」と言えば生成AIが知っているモジュールやフレームワークをいくつも教えてくれる。

モジュールの使い方の質問やフレームワークへの質問も生成AIに聞けばたいがいは解決できる。

昔のハッカソンは「わたしはゴリゴリのプログラマーです」という人を中心としてしか参加できなかったが、今は「プログラミングちょっと齧りました」という人でも参加できる。この差は大きい。

ただ、そう言われてもハッカソンを経験したことのない人にとって、「本当にそんなことできるの?」という疑念を抱くなというのは無理だろう。

でも実際にできてしまうのだ。
これを知ってるか知っていないかはこの先の生き方を大きく変えてしまうだろう。

「どのくらいのスキルがあればハッカソンに参加してもいい」と判断できるのか。
個人的には、「生成AIにプログラムを書かせてそれを自分で修正して動かせる程度」であれば十分参加可能だと思う。

ハッカソンで出てくるお題の多くは、Webアプリやゲームといった方法で表現できる(特定の技術を使えというハッカソンは別として)。

ということは、「生成AIにWebアプリを書かせてそれを修正して動作させる」程度のことができればハッカソンに参加する資格はあると言えるだろう。

今は生成AIのおかげでかつてないほど簡単にハッカソンに参加できるようになったので、コロナ禍も終息し、ハッカソン的なイベントが再び盛り上がっていくのではないか。

というわけで筆者は5月11日12日に大阪で開催される「24時間AIハッカソン」の司会をすることになった。
応募はこちら

大阪24時間AIハッカソン(https://www.aifestival.jp/hackathon-entry)