新紙幣の発行まで2カ月を切る中、県内の飲食店や小売店ではレジや券売機の更新が頭痛の種になっている。ただでさえ燃料や原材料の高騰が経営を圧迫しているのにキャッシュレス決済の導入も併せ検討するとなると…。やはりネックとなるのが「手間」と「費用」だ。特に設置台数が多い自動販売機は更新が進むまで時間がかかりそうだ。

 紙幣デザインの刷新は2004年以来20年ぶりとなる。新紙幣発行後も現行の紙幣は引き続き使うことが可能だが、スーパーのヤマザワ(山形市)は運営する全71店で新紙幣への対応作業を進めている。レジで使う自動釣り銭機はソフトウエアの入れ替えが必要で、作業は3月初旬にスタートした。6月中旬には全店で終える予定だという。

 20年前は自動釣り銭機が導入されていなかった。セルフレジが当たり前の時代となったため、新紙幣発行によるシステム更新作業は前回の変更時には、なかった「手間」で、初めての経験だという。情報物流部情報システム室の高橋俊悦室長は「作業に当たる業者の人員確保と作業する店のスケジュールを組むのに苦労したが、早めに準備したため予定通りに作業を終えられそう」と話した。

 券売機を設置する飲食店にも影響が出ている。グループ店も含めて県内外でラーメン店7店舗を展開する新旬屋(新庄市)は券売機と自動販売機計9台を所有。このうち1台は今回のタイミングで現金、キャッシュレスどちらにも対応でき、さらに多言語対応機能がある機種に交換する。導入費用は350万円ほどで、加えて他の8台は紙幣読み取り部分の交換に1台8万円ほどかかる。原材料費の高騰が続く中でのコスト増に半田新也社長は「出費がかさみ、頭が痛い」状態だという。

 自動販売機への対応はどうだろうか。菊地ベンディングサービス(山形市)の菊地英紀社長は「山形での自動販売機の切り替えの動きはまだ鈍い印象」と話す。飲料メーカーなどから依頼を受け、県内で自販機の設置やメンテナンスを行っている。各社とも首都圏などから対応していく傾向にあり、「山形は順次切り替わっていくのでは」とみている。キャッシュレス対応の自販機も増えたことも動きが鈍い理由と推測する。

 県内地銀3行のATMは既に対応を終えている。