【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は1日、政府が医師不足などの対策として打ち出した大学医学部の入学定員増に反発する医療界の集団行動を受けて発表した国民向け談話で、「医療界が増員規模を2000人から減らさなければならないと主張するためには、集団行動ではなく確実な科学的根拠を持ち、統一された案を政府に提示するべきだ」として「より妥当で合理的な案を持ってくればいくらでも議論できる」と述べた。

 また、政府の政策は常に開かれているとして、より良い意見と合理的根拠が提示されれば政策を改善することができると強調した。

 医学部の定員増を巡っては医療界の中でも意見が分かれており、内部で調整して合理的な「統一案」を用意すれば増員規模についての議論に応じるという柔軟な姿勢を示したものと受け止められる。

 尹大統領が増員規模を巡る議論の可能性に言及したのは初めてで、政府が固守してきた「2000人増員」に対し、条件付きながらも調整の余地を残したといえる。

 一方で尹大統領は、2000人は必要最低限の増員規模と言明。数字が算出されるまでには医師団体などとの十分な議論を経たとして、増員の必要性を強調した。

 一部で出ている段階的・漸進的な増員の提案については、漸進的な増員が可能だったとすれば、なぜこの27年間にどの政権も増員できなかったのか問いたいとして、受験生間の公平性を確保するためにも目標人数を平均した人数を毎年増員するべきだと述べた。

 尹大統領は、深刻な高齢化により急増する地域・必須医療分野の需要を満たすためには一定規模の増員が必要だと強調し、 フランスやドイツ、日本など海外の事例も挙げて韓国の医師不足を指摘。医療の構造的・慢性的問題を改革することが国民に選ばれた政府の役割だとしながら、政治的思惑を離れて必ず改革を成し遂げるという意志を改めて示した。

 医療界の集団行動については「きちんとした論理と根拠もなく、力でぶつかって自分たちの考えを貫こうとする試みは決して受け入れられない」として、政府が十分に検討した正当な政策を力の論理で止めることはできないと断じた。

 なかでも、大韓医師協会などが医療改革の白紙化、保健福祉部長官・次官の罷免などを要求していることについては「このような行動は大統領である私を脅かすものではなく、国民を脅かすものだ」と批判した。

 研修医が職場を離脱してから7週目に入り、医療の混乱が深まっていることに対しては「国民の不便を速やかに解消することができず、大統領として申し訳なく思う」と述べた。

 尹大統領は研修医に対して「独占的権限を武器に義務を投げ捨て、国民の命を人質に取って不法な集団行動をすれば、国は法と原則にのっとって対応せざるを得ない」として「(医師は)国民の上に君臨することはできない」と非難した。