●若者には謎多き「おじさんビジネス用語」

 「布団が吹っ飛んだ」のようないわゆるダジャレは、「おやじギャグ」と呼ばれてZ世代の若者には特に敬遠されがちですよね。職場でスマートに振る舞うために、このようなギャグを言わないよう心がけている方も多いでしょう。しかし、ギャグではないのにZ世代から敬遠されてしまう「おじさんビジネス用語」があるのをご存知でしょうか。

 「ビジネス用語」とは、ビジネスの業務上で使用する専門用語のこと。つまり、これのおじさんバージョンがおじさんビジネス用語です。ひとことでおじさんといっても年齢の幅は広いですが、主に50代以上の人が使う独特なビジネス用語をおじさんビジネス用語と呼ぶことが多いようです。

 語学の学習用アプリを提供するDuolingo,Inc.と、プロフェッショナルネットワークを運営するLinkedInが共同で行った「ビジネス用語の使用に関する実態調査」では、若い人ほどおじさんビジネス用語の意味がわからないという結果が出ています。この調査は日本やアメリカなど8か国に住む18〜76歳の約8000人を対象に行われており、おじさんビジネス用語に関する調査は日本のみの追加項目です。この結果によると、おじさんビジネス用語とされる10個の単語について正確な意味を答えられるものはどれかという問いに対し、「どれもわからない」と回答したZ世代は約29%いました。50代後半を含むベビーブーマー世代は約11%だったので、2倍以上の理解の差があるのです。このため、世代間でコミュニケーションに支障が起きてしまうこともあるようです。

●おじさんビジネス用語を見てみよう

 このように大きな世代間ギャップが出るおじさんビジネス用語とは、どのような言葉なのでしょうか。特徴で分類しながら具体例を見てみましょう。

 分類1・オノマトペ:音声や状態を言語的に音声で表した言葉です。擬声語・擬態語ともいわれます。

・ガラガラポン
<意味>やり直し。白紙に戻してやり直す。
<由来>福引きのカラフルな玉が出てくる回転式抽選器を回す音を表しています。一度リセットして、くじ引きでやり直そうというニュアンスです。

・エイヤ
<意味>気合い。根性でなんとかする。
<由来>気合いのかけ声からきています。根性論は近年の若者に煙たがられるので、意味がわかっても敬遠されてしまうかもしれませんね。

 分類2・昭和文化:昭和の世相を反映した言葉。ジェネレーションギャップが出やすいです。

・鉛筆なめなめ
<意味>帳尻を合わせる。改ざんする。
<由来>鉛筆の品質が現在より劣っていたころ、鉛筆の芯をなめると一時的に黒々と書けたため、鉛筆をなめながらじっくり考えることを指すようになりました。

・ドロンする
<意味>退席する。先に帰る。
<由来>忍者が姿をくらませるときの様子。オノマトペタイプでもあります。印を結ぶジェスチャーをしながら言うことも。昭和の時代に流行った言葉です。

 分類3・政治経済用語:もともと政界や金融界で使われていた言葉が一般化したタイプ。

・一丁目一番地
<意味>業務上の最も重要なポイント。
<由来>もともと政治家が政策の重要性を訴えるために使っていた言葉。昭和後期ごろから新聞でも使われるようになり、愛用者が増えたようです。

・あいみつ
<意味>複数の見積もりを取ること。
<由来>「相見積もり」の省略形。複数の企業や取引先に同条件の見積もりを依頼して比較検討すること。相場を把握するために必要な業務です。

 分類4・スポーツ用語:こちらはもともとスポーツ界で使われていた言葉が一般化したタイプ。

・全員野球
<意味>チームや部署全体で協力体制を築く。
<由来>レギュラーも補欠も含めた全選手が一丸となって試合に臨む様子。娯楽が少ない時代に人気が高かった野球を持ち出すところに昭和の雰囲気も感じます。

・うっちゃる
<意味>一発逆転。または放り投げる。
<由来>相撲の決まり手「うっちゃり」から。土俵際でこらえて相手を外に投げ出すため、2通りの意味があります。相撲は昭和に野球と人気を二分していました。

 分類5・独特な略語:略が独特すぎて意味の予想がつきにくいパターンです。

・ツーカー
<意味>なにも言わなくてもわかりあえる間柄。
<由来>慣用句「つうと言えばかあ」を極限まで省略したかたち。「つう」と「かあ」の由来には諸説あり、正確なものはわかっていません。

・ロハ
<意味>無料。
<由来>漢字の「只」を上部の「ロ」と下部の「ハ」に分割して読んでいます。大正から昭和の時代に流行した若者言葉といわれています。

 確かにおじさんビジネス用語はわかりにくい言葉が多く、若者が困惑してしまうのもしかたないかもしれません。しかし特有のコミカルさも持っているため、うまく使えば場を和ませることができます。単純に古くさいから使わないとは考えず、コミュニケーションの潤滑剤として活用するのもひとつの手ではないでしょうか。

<参考サイト>
・PR TIMES 【8カ国8000人以上対象 Duolingo×LinkedIn Report】ビジネス用語の使用に関する実態調査/半数以上の社会人が使用頻度を減らしたいと回答 ビジネス用語の多用は時間を無駄にする?
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000069537.html
・DIAMOND online クセになる「おっさんビジネス用語」どれだけ使ってる?エイヤ・全員野球・よしなに…
https://diamond.jp/articles/-/296677
・マネーポストWEB 使いこなしたい「おっさんビジネス用語」辞典 半ドン、ペライチ、よしんば、ロハ、ガラガラポンなど
https://www.moneypost.jp/1022576