●貯金箱の定番といえば豚ですが…

 昭和に連載が始まり、令和の現在も子どもたちに人気のギャグ漫画「あさりちゃん」。この作品を読んで育ち、今でもお気に入りという方も多いのではないでしょうか。そんなあさりちゃんは公式ツイッターで作品のお知らせやあさりちゃんの日常を発信しており、2023年2月6日に「トルコ・シリア地震」が発生したときには、無駄遣いばかりするあさりちゃんが寄付をするためにお金を貯めたことをツイートしています。

 このツイートには小さな豚を手に乗せたあさりちゃんのイラストが添えられているのですが、一体なにを意味しているのでしょうか……と疑問を挟むまでもなく、豚が貯金箱だということはすぐにわかりますよね。そう、日本では「貯金箱=豚」というイメージが、定番として広く根づいているのです。

 そして実は、豚が貯金箱の定番になっている国は日本だけではありません。むしろ世界中でメジャーな存在です。そもそも、豚の貯金箱発祥の国は海外なのです。

●豚の貯金箱誕生の経緯とは

 豚の貯金箱は14世紀のイギリスで誕生したとされています。もともとイギリスには、ちょっとした小銭を赤土でできた壺に入れておく習慣があり、この壺が発展して貯金箱になりました。ではなぜモチーフが豚になったのかについては諸説ありますが、貯金箱をつくる職人が発注を聞き間違えたという説が第一に上げられます。貯金箱の素材である赤土の粘土の名前は「pygg」といい、豚を意味する「pig」と発音がほぼ同じなので、「赤土(pygg)の貯金箱」を「豚(pig)の貯金箱」だと思ってつくってしまった……というわけです。

 つまり、できあがった貯金箱は欠陥品だったのですが、職人が試しに販売してみるとかわいらしい見た目が人気を呼び、イギリスからヨーロッパ全土にも広がっていきました。19世紀ごろにはヨーロッパでも豚の貯金箱が定番になったといわれます。

 また、豚は一度に10頭近く出産することから子孫繁栄の象徴であり、「子どもがどんどん生まれる=財産がどんどん増える」とも考えられている縁起がいい動物です。貯金箱にはぴったりといえるでしょう。お肉だけでなく、皮や骨も利用できる無駄のない動物であることから、「無駄遣いを避けられる」と考えられる点も貯金箱にぴったり。豚はまさに、見た目も縁起も貯金箱にふさわしいモチーフなのです。

●日本にはいつごろ上陸したのか

 イギリスからヨーロッパに渡った豚の貯金箱が、日本にやってきたのは20世紀に入ってから。1961(昭和36)年に、三菱銀行が口座を開設した預金者へのノベルティとして配った「ブーちゃん貯金箱」がはじまりといわれます。この貯金箱はなんと140万個も配布されたのだとか。無料のサービス品だったとはいえ、当時大人気だったダッコちゃん人形の販売数が40万個だったことと比較しても、その人気ぶりがうかがえます。ブーちゃん貯金箱は現在でもネットオークションやフリマアプリに出品されており、人気のレトロアイテムになっています。

 昭和に人気を呼んだ豚の貯金箱が今でも定番として愛され、令和の時代になっても昭和から続く人気漫画のキャラクターといっしょに描かれている姿を見られると、どんなに時代が流れても色褪せない文化があることを改めて感じさせられますね。

<参考サイト>
・レタスクラブ 聞き間違えが誕生のきっかけ? 世界中で最も多い動物の貯金箱は“豚”だった!
https://www.lettuceclub.net/news/article/190150/
・FUNDO 貯金箱のデザインはなぜブタが定番なの?その理由を解説!!
https://fundo.jp/328403
・LIMIA 世界中で愛される貯金箱の定番!ブタの貯金箱おすすめ10選!
https://limia.jp/article/119138/
・介護のみらいラボ 【今日は何の日?】12月1日=三菱銀行が「ディズニー預金」をスタート(1962年) / 雑学ネタ帳
https://kaigoshoku.mynavi.jp/contents/kaigonomirailab/news/today/20221201_00/
・あさりちゃん公式ツイッター
https://twitter.com/asarichan927/status/1628574362604560386