物を火で燃やすともくもくと煙が出ますが、煙によって色が白だったり黒だったりします。なんとなく白い煙より黒い煙のほうが臭いがキツく、体に悪そうというイメージですが、実際にはどのような違いがあるのでしょうか。

●物はどうして燃えるのか

 「熱」「可燃物」「酸素」の3つがそろうことで、物は燃えます。「可燃物」の粒子が空気中の「酸素」と結びつくことで“酸化”が起こり、この酸化反応によって「熱」が発生。これが持続することで熱運動エネルギーが増えて高温となり、やがて火となり物が燃え上がります。火は可燃物、または酸素が尽きるまで燃え続けます。

 なおマッチやライター、雷など「着火源」と呼ばれるものは、可燃物と酸素を強制的に酸化させ、素早く高温にさせる役割となります。

 さらにその着火源がなくても、可燃物と酸素が少しずつ結びつき、その熱が外部に逃げずに蓄積することで高温となり、火が発生する場合があります。この現象が「自然発火」です。

●煙が生まれるメカニズム

 物が燃える時、そこに十分に酸素があれば、燃焼物は水と二酸化炭素となって空気に溶けこみます(完全燃焼)。もう少し詳しく言うと、可燃物には「炭素」が含まれており、この炭素が熱せられることによって可燃ガスに変化(気化)するのです。

 しかし、物が燃えたとしても、状況下によっては酸素が少なかったり、火となるほど高温にまで至らない場合があります。

 酸素が不足している、あるいは燃えにくい成分によって十分に熱が高められないなど「不完全燃焼」が起きると、ガスと酸素がうまく結びつかずに冷えて液体、または固体となり、その小さな粒子が空気中にあおられ、目に見えるようになります。これが「煙」の正体です。

 通常、固体は空気より重いので下に落ちていきますが、火に近い場所は空気が温められるため上昇。この上昇気流にのって、固体も上へと上がります。煙が立ちのぼって見えるのはこのためです。

●白煙と黒煙の違い

 煙の色は、構成する粒子が何でできているか(ガスの中に何が含まれているか)で変わってきます。おおむね色は白か黒で、白煙は主に工場や銭湯などの煙突から、黒煙は燃えるロウソクやトラックの排気ガス、火事などで見られやすい煙です。

 白い煙の主成分は水と二酸化炭素で、十分な酸素を取り込んでできた時に発生します。前述した「完全燃焼」の状態でできた煙です。煙といっても、水が蒸発してできる水蒸気や湯気、霧のようなもので、白く見えるのは冷たい外気に触れて液体の粒となり、太陽の光で乱反射しているからです。水と二酸化炭素だけなので、体には無害です。

 工場の煙突から出ている白煙は、工場内で適切に処理された排ガスの中の水蒸気が放出されたものです。太陽光が差し込む方向によっては灰色や黒っぽく見えることもありますが、もちろん人体に影響ありません。

 ただし湯気や霧と違い、白煙には二酸化炭素も多く含まれるため、密室に充満すると酸素不足で呼吸困難を引き起こす危険性があります。

 一方、黒煙は、「不完全燃焼」により炭化した固体の粒子が集まってできたものです。俗にススと呼ばれるものがこれにあたります。

 不完全燃焼だと、この炭素粒子のほかに一酸化炭素など有毒ガスが発生するため、多量に吸い込むと中毒を引き起こし、体に深刻な影響を与える可能性があります。

 白煙と黒煙、いずれの場合でも吸い込まないのが一番です。火を取り扱う時は十分に注意しながら、こまめな換気を心がけましょう。

<参考サイト>
・ものはなぜ燃えるのか(消防庁消防大学校 消防研究センター)
https://nrifd.fdma.go.jp/public_info/faq/combustion/index.html#:~:text=回答,る現象を指します%E3%80%82
・けむりはどうしてでるの(学研キッズネット)
https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0566/
・火炎の科学と物理 ―物質と燃焼の基礎知識―(東京大学メディアネットセンター)
https://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/combustion/comb01/basic02.html
・煙突から見えるのは水蒸気(水滴)です(福岡都市圏南部環境事業組合)
https://f-nanbukankyo.jp/2021/12/post.php