人工知能(AI)搭載の暗視カメラを開発する中国スタートアップ企業「深知未来(DeepThink)」がこのほど、シリーズA+で景泰资本(King Tower Capital)から数千万元(数億円超)を調達した。資金は技術開発とグローバル市場の開拓に充てられる。

深知未来は2017年に設立され、中核技術の畳み込みニューラルネットワークをベースとするAI-ISP(AIによる画像信号処理)により、暗闇でもクリアなフルカラー画像を撮影できる暗視カメラの開発に成功した。21年にシリーズAで達晨财智(Fortune Capital)などから数千万元を調達して以降は、産業用ドローン向け暗視カメラやポータブル暗視カメラ、暗視スコープなどの製品を次々と打ち出している。現在の主な顧客は、ドローン最大手DJIなどの法人顧客だという。

暗視技術とその応用をめぐっては、光電管を利用してわずかな可視光を増幅する方式から、熱を利用したサーモグラフィーまで、これまでにさまざまな模索が続けられてきた。深知未来を創業した張斉寧氏は「海外の暗視技術が移り変わる様子を注視してきた。イベントなどでの交流を通じ、中国の暗視技術がすでにイスラエルや米国をリードしていることが分かった」と話す。

深知未来は、従来とは異なる暗視ソリューションを打ち出す。AI-ISP技術を用いたイメージングエンジンを自社開発し、コンピュータビジョンや畳み込みニューラルネットワークなどの技術を組み込んだ。さらに画像信号の増幅やノイズ低減を施すことにより、照度0.0001ルクスという極めて暗い環境でもリアルタイムで高精細なフルカラー画像が得られるようにした。

同社は、AIを活用した暗視ソリューションの大規模な商用化を実現している。ドローン搭載用の暗視カメラは、すでに確立されたチャネルを通じて大量出荷しており、今後はさらに多くのドローンに適合するよう汎用性を高める計画だという。車載向けの暗視カメラについては、中国の大手自動車メーカーとの共同開発を進めている。また、一般消費者のニーズに応え、より小型で手軽に持ち運べるポータブル暗視カメラも段階的に発表しているところだ。

2023年下半期以降は、海外展開を本格化させている。北米では小規模なローカライズチームが発足し、主な顧客とオフラインチャネルで連携したほか、シンガポールや韓国、オーストラリア、ドイツなどでも、同社のAI暗視カメラはすでに一定の評価を受けている。

創業者で最高経営責任者(CEO)の張氏は、武漢大学でコンピュータサイエンスを専攻し、華為技術(ファーウェイ)と騰訊控股(テンセント)で10年以上にわたってプロダクトや技術、マネジメントの分野で経験を積んだ。共同創業者で最高技術責任者(CTO)の郭奇鋒氏は、西北工業大学でソフトウエアエンジニアリングを専攻し、テンセントや百度(バイドゥ)、小米(シャオミ)などの中核部門で技術責任者を務めた。

シリーズAで出資した景泰资本の張英飈会長は「深知未来は、世界最高レベルのAI-ISPアルゴリズムと、それに基づく暗視カメラを打ち出している。グローバルな視点、最先端の技術力、そして高い事業化能力を併せ持つ深知未来を今後も長期にわたりサポートしていきたい」と述べている。

*2024年4月4日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・田村広子)