きのこが文献にはじめて登場したのは万葉集、こんなにも昔から日本人がきのこを食していたなんて驚きですね。

時は経て江戸時代に入ると、数あるきのこの中で舞茸は「幻のきのこ」と呼ばれるように。そのため、舞茸を幕府に献上すると同じ重さの銀がもらえたそうです。

というわけで、今回は昔から愛されてきた舞茸の栄養と効果について詳しく解説します。特にダイエットに励む方にとって、有益な情報が盛りだくさんですよ。レシピもありますので、どうぞ最後までお付き合いください。

舞茸の栄養と効能効果

さっそく、舞茸に含まれる栄養成分と効能について見ていきましょう。


●丈夫な骨を作る「ビタミンD」
舞茸にはビタミンDが豊富です。

ビタミンDは、骨の材料となるカルシウムやリンの吸収を促す栄養素です。そのためビタミンDが不足すると、健康な骨が作り出せなくなります。

ビタミンDが不足し続けることで起こる高齢者の病気として「骨粗しょう症(※1)」が有名ですが、なにもダメージを受けるのは大人だけではありません。

子どもがビタミンD不足になると「くる病(※2)」を引き起こします。

どちらの病気も、カルシウムやリンの摂取量が十分であっても起こるため、ビタミンDの存在がいかに重要であるかがおわかりいただけるかと思います。

ビタミンDは野菜や豆類には含まれていないので、植物性食品のビタミンD摂取源はきのこ類だけです。つまりビーガン(完全菜食主義者)の方には、舞茸をはじめとするきのこ類の摂取が欠かせないといえるでしょう。

(※1)骨粗しょう症とは骨の量が減って中身がスカスカになり、折れやすくなる病気のこと
(※2)くる病とは、骨の強度が十分でないために骨折や痛みを引き起こし、身長が伸びなくなることもある病気のこと


●高血圧予防の立役者「カリウム」
舞茸に含まれるカリウムは、可食部100gあたり230mgと豊富です。

カリウムは、体内にある余計なナトリウム(塩分)を排出する働きがあるため、血圧を下げる代表的な栄養素です。普通の食事を摂っていれば欠乏のリスクはないといわれている栄養素ですが、高血圧予防のために積極的に摂っていきましょう。

ところで、カリウムは水に溶けやすい栄養素です。そのため「茹でる」「煮る」といった調理法よりも、「焼く」「揚げる」調理法がよいですよ。

加えて、カリウムの塩分排出効果を無駄にしないためにも、舞茸料理は薄味に仕上げるのがオススメです。

またカリウムは高血圧予防に効果的なだけでなく、筋肉をスムーズに動かす働きもあります。そこで足がつりやすい方は、予防のために日頃からカリウム摂取が大切です。


●造血作用を支える「葉酸」
葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を作る働きがあるため「造血のビタミン」と呼ばれています。そのため、葉酸が不足すると貧血になる可能性があります。

葉酸は赤血球を作るだけでなくDNAの合成にも関わっているため、性別や年代に関係なく大切な栄養素です。なかでも、妊活中や妊娠中の方は特に積極的に摂りましょう。というのも、妊娠初期に胎児の脳神経系や心臓などの重要な部分が作られるからです。

ゆえに厚生労働省では、葉酸の必要量が多い妊娠初期の方にはバランスのよい食事に加えてサプリメントの活用を勧めています。

なお、葉酸は水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、舞茸を調理するときは加熱し過ぎに注意しましょう。


●第六の栄養素「食物繊維」
舞茸には食物繊維が豊富です。

食物繊維には水に溶けにくい不溶性と、水に溶けやすい水溶性の2種類があり、舞茸には不溶性が豊富です。どちらの食物繊維も人の体内に吸収されることなく、大腸まで届きます。

以前は、体に吸収されないことから役に立たないと思われていましたが、健康のために重要な働きを持つため、今では「第六の栄養素」と呼ばれることも。

さて不溶性食物繊維には、腸内の水分を吸収して便のカサを増やすことで腸を刺激し、便通を促す働きがあります。

一方で、水溶性食物繊維は水に溶けてゼリー状となり腸内をゆっくり進みます。その結果、糖質の吸収スピードを緩やかにし、食後血糖値の急上昇を抑えることに。

参考までに生活習慣病予防の観点から、成人は1日あたり24g以上摂取するのが理想とされています。

しかし令和元年国民健康・栄養調査結果によると、実際の摂取量は18g程度と推定されており、当面の目標として1日あたりプラス3〜4gの摂取が望まれている栄養素です。

ちなみに、舞茸に含まれる食物繊維は100gあたり3.5gです。

舞茸を一度に100g食べるのは難しいですが、30g程度であれば副菜として丁度よい量といえるでしょう。プラスしたい食物繊維量を3gとした場合、舞茸から1g、残りを野菜や豆類から摂れたらバランスのよい食事となりますね。

舞茸を毎日食べるとコレステロールは下がるのか

舞茸を食べると、コレステロール値の低下が期待できます。

その理由として舞茸には、血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値を下げる働きのある、β-グルカンが含まれているからです。

β-グルカンは不溶性食物繊維の一種で、消化されることなく腸まで届き、腸内の悪玉コレステロールを吸着して体外へ排出する作用があります。


●悪玉コレステロールと動脈硬化
さて、悪玉コレステロールがわたしたちの体に及ぼす影響は、どのようなものでしょうか。

血中に増えた悪玉コレステロールは血管壁にこびりつき、コブとなります。コブができた血管は内部が狭く血液が通りにくい状態となり、血管は硬くもろくなるのです。この状態が「動脈硬化」です。

動脈硬化が進行すると血流が悪くなり、血管内が詰まります(血栓ができる)。一度できた血栓が剥が落ちて血流に乗って他の場所に運ばれますが、詰まった場所が脳の場合は「脳梗塞」、心臓の場合は「心筋梗塞」となります。

そして残念なことに動脈硬化が進行していても、気づけないことが多いです。自覚症状が出るころには、手遅れになることも。つまり、なによりも予防が大事なのです。


●一日の摂取量はどれくらい?
悪玉コレステロールを下げるためには、β-グルカンの摂取が効果的だとおわかりいただけたと思います。

β-グルカンは食物繊維の一種ですので、積極的に摂取していきましょう。

参考までに厚生労働省の「食事バランスガイド」によると、野菜・きのこ・いも・海藻を使った料理は、1日に5〜6皿(あわせて350g)程度が推奨されています。

重要なのは一度にたくさん食べるのではなく、毎日コツコツと継続して食べることです。食物繊維には便通を促す働きもあるので、ポッコリお腹の解消にも役立ちますよ。

舞茸は存在感を活かしてほぐさずにソテーすると、食べ応えがあるのでオススメです。

ちなみに悪玉コレステロール値を下げるためには、食事以外では有酸素運動(ウォーキングなど)も効果的ですので、ぜひ取り入れてくださいね。

ダイエットに効果的な食べ方

ダイエットに効果的な食べ方は、舞茸を毎回の食事に取り入れることです。

その理由は、舞茸に含まれる水溶性食物繊維には、太る要因となる食後血糖値の急上昇を防ぐ働きがあるからです。

食後に血糖値が上がるのは正常なことですが、血糖値が急上昇すると体は脂肪を溜め込みやすくなります。

そして血糖値が急上昇した後は、血糖値の急降下を招きます。血糖値が急降下すると、脳は「血糖値が下がり過ぎた」と勘違いを起こし、今度は血糖値を上げようと食欲が湧くように働き掛けてくるように。

お気づきの通り、この連鎖が続く限り食欲との戦いになるため、ダイエットを成功させることは難しいでしょう。

つまり血糖値を急上昇させないことが、ダイエット成功への近道というわけなのです。

さて舞茸は、和洋中どの調理法でも美味しく食べられる食材です。毎回の食事に取り入れて、ダイエットを成功させてくださいね。

女性にオススメ!舞茸を使ったヘルシーレシピ

今回お届けするレシピは、特に女性に食べてもらいたい一品です。厚揚げは、舞茸には含まれていない、たんぱく質・カルシウム・鉄分が補える最強のパートナーですよ♪

【舞茸と厚揚げのみぞれあん】
【材料】〜1人前〜
舞茸  50g
厚揚げ  100g
大根  100g
だし汁  100ml
しょうゆ  小さじ1
酒  大さじ1
みりん  大さじ1
片栗粉  適量
小ねぎ   適量
七味唐辛子 適量
油  大さじ1

【作り方】
①厚揚げは一口大に切り、油をひかないフライパンで両面に焼き目をつける
②焼き目のついた厚揚げを取り出し、フライパンに油をしいて舞茸をサッと炒める
③おろした大根は、だし汁と調味料と一緒に鍋に入れてひと煮立ちさせて、片栗粉でとろみをつける
④お皿に①②の順に盛り付けて③をかける
⑤お好みで小ねぎと七味唐辛子を振りかけてできあがり

【ポイント】
・舞茸のビタミンDと厚揚げのカルシウムで骨を丈夫に
・肉を使わないことでコレステロール低下作用を後押し!
・厚揚げを使うから高たんぱく&低カロリー
・厚揚げには舞茸に含まれていない鉄分が豊富

まとめ

舞茸には、ビタミンD・カリウム・葉酸・食物繊維が豊富だとわかりましたね。そのため、特にダイエットに励む方にとって、積極的に食べていただきたい食材です。

それでは当記事が参考となり、日々の生活に舞茸を取り入れていただけるとうれしいです。

■教えてくれたのは・・・
シンクヘルスブログ編集部
糖尿病に強みを持つ健康管理アプリを展開するシンクヘルス社のオウンドメディア。ダイエット、糖尿病の食事、マインドフルネスなど幅広い健康情報について、管理栄養士や臨床心理士、運動指導士などの専門家陣が確かな根拠をもとに執筆している。

構成/サンキュ!編集部