神戸大学のバドミントンサークルが、宿泊先の旅館で障子を破る、天井に穴を開けるなどの迷惑行為を行っている映像が拡散され、「精神年齢が低い」と幼稚さを指摘する声が出ている。

【映像】「精神年齢」何歳だと思う?20〜60代の年代別の答え

 精神年齢とは何か。『広辞苑』には(1)知能検査によって測定される知能発達の度合いを表す年齢。知能年齢。(2)俗に、物の考え方などが一般に何歳くらいに相当するかを表したもの、と2つの意味が記されている。一般的には後者の文脈で使われているが、何歳から指すのかといった定義はあいまいだ。

 マウンティングに使われたり、悩む人もいる「精神年齢」、そして「年相応」について、『ABEMA Prime』で考えた。

■精神年齢と“年相応”は関係ない?

 アラフォー女性のゆうさんは、「子どもっぽい性格」が悩みだ。当初はポジティブに捉えていたが、周りから「落ち着きなよ」と年相応を求められるように。同年代に自分のようなテンションの人がほぼいないため、自分を客観的に見て痛々しいと感じることもあるという。

 きっかけは同窓会だった。「同い年が集まり、家庭を持っている人や、大人っぽく、落ち着いた人もいる。私はアニメやコスプレが好きだが、日頃のSNSを見て『自由だよね』『好き放題やっているよね』『40手前でコスプレとかすごいわ』と嫌みたらしく言われる。迷惑はかけていないつもりでも、周囲の目はそうなんだなと感じる」。

 メンタルケア・コンサルタントで公認心理師の大美賀直子氏は、「大人っぽいほうが好ましく、子どもっぽいことは改めるべき」との風潮があるとした上で、「思考が年相応かは関係ない」と語る。「その人の言動が周囲に与える影響を、自分自身で俯瞰して、調整できるかどうかが大事。言いたいことを言うだけでなく、傷つけない言葉や、場にふさわしい言葉を選べるセルフコントロールが重要となる」。

■「精神年齢低いね〜」は“大人マウンティング”?

 コラムニストの河崎環氏は、日本での「精神年齢が高い」という表現に、「先生にとって統率が取りやすい、指導しやすい子ども」といった印象を受けている。「海外の『大人だね』は成熟を指すが、日本ではおとなしさや抑制、周囲から目立たないことが評価される。精神年齢で語るのは、“大人マウンティング”だ。加齢と成熟さは関係なく、賢さとも関係ない」との見方を示す。

 大美賀氏は、神戸大学の件を引き合いに出しながら、「自分のやりたいことだけを表出すると、誰かに迷惑をかけるかもしれない。しかし、俯瞰して見れば、セルフコントロールが利く。その認知を持っているかが、成熟や成長ではないか」と分析する。また、“大人”の条件として、「天真爛漫な自分らしさのように、素直な感情を持ち合わせながらも、周りの影響を考える。そのバランスを取れることなのではないか」とあげた。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「社会で活躍している人は、無邪気さがあるなど、一般的に『精神年齢が高い』と言われていない人の方が多い。精神年齢が高いと、毒も吐かず、飲みに行っても面白くなくなる。経営者は、個性的でわがままでも大成功している人が山ほどいる。精神年齢の“高い”と“低い”、両方を売りにする人がいていいんじゃないか」。

 脳科学者の茂木健一郎氏は、「人工知能の時代で一番重要な“創造性”は、精神年齢が低くないと発揮できない」と指摘。「イーロン・マスクは、毎日のようにやらかしているが、クリエイティブな人間。人の迷惑を考えずに生きたら、イーロン・マスクではないだろう。子どもっぽくないと、創造性を発揮できない」と述べた。(『ABEMA Prime』より)