アクリルシートやボタンの製造会社「カナセ」(本社・和歌山県上富田町)が、上富田町朝来の大内谷に建設していた新しい「本社工場」が完成した。アクリル事業を担う工場で、本社も構える。6日に竣工(しゅんこう)式を行う。
 同社は以前、田辺市稲成町に本社を置き、朝来にボタン事業の「荒堀工場」とアクリル事業の「富田川工場」があったが、2021年に本社を荒堀工場に移し、老朽化した富田川工場に代わる工場を新たに建設することとし、22年に着工した。
 新工場の面積は約3万3千平方メートル。一部3階建てのアクリル工場や平屋倉庫、2階建ての本社事務所など計8棟(延べ床面積計8700平方メートル)がある。総工費は約60億円。
 アクリル生産能力は年間約2千トンで、富田川工場とほぼ同規模。これまでは厚さが最大50ミリまでだったが、60〜100ミリのアクリル板も生産できるようになる。アクリルシートは、装飾・ディスプレーや水槽などに使われる。
 新工場は4月中は試運転期間とし、5月7日から本社を移して本格稼働する予定という。富田川工場は閉鎖する。
 金谷清道社長は「作業効率も大幅に改善され、従業員にはより快適に働いていただける職場環境ができた。われわれは上富田町でものづくりを続ける、という強いメッセージを市場に発信する」と語る。
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 カナセは1919年、上富田町朝来で貝ボタンの製造から始めた。その後、34年にナットボタン、49年にユリア樹脂ボタン、56年にポリエステル樹脂ボタン、59年にはアクリルシートの製造を開始した。
 現在売り上げの9割をアクリル事業が占める。同社の工場は上富田町(アクリル、ボタン)のほか、長野県(アクリル)、中国(ボタン)にもある。従業員は約190人。