2024年も4月になると、続々と春ドラマの放送がスタートします。人気俳優の久しぶりの作品から、毎回話題になる日曜劇場や月9など、さまざまなジャンルのドラマがスタンバイ。各局で多くのドラマを放送する中で、どの作品を選んで見たら良いのか、迷うところだと思います。

ここでは、毎シーズン全てのドラマをチェックしている元テレビ局スタッフが、独断と偏見で「抑えておくべき」作品を紹介します。

■『コード・ブルー』継承なるか? 山下智久5年ぶりの民放主演

まず1本目に紹介するのは、『ブルーモーメント』(フジテレビ系)です。山下智久さんが民放ドラマでは5年ぶりに主演を務める作品で、今回は「気象災害」を相手に奮闘します。毎週水曜日の22時から放送され、初回は4月24日です。

ドラマは、気象災害の現場において救助を行う組織「SDM(特別災害対策本部)」を舞台として、山下さんはチーフ・気象研究官を務める主人公の「晴原柑九朗(はるはら かんくろう)」を演じます。小沢かなさんの漫画が原作で、気象学者・荒木健太郎さんが監修を務めるなど、本格的な作品として人気です。

フジテレビのドラマで山下さんが主演、さらに救助といえば思い出すのは映画版も大ヒットした『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』でしょう。今回の『ブルーモーメント』は、設定などを見ると、『コード・ブルー』の後継作となれるポテンシャルを持っています。



現実にもさまざまな気象災害が起き関心が高まっている中、すでに漫画でも評価を得ている『ブルーモーメント』は注目ドラマになります。脚本を務めるのは、『イチケイのカラス』(フジテレビ系)を手掛けた浜田秀哉さんで、同作は『映画 イチケイのカラス』として映画化も。『ブルーモーメント』もシリーズ化や映画化が期待できる作品で、初回から見逃し厳禁となりそうです。

さて、山下さんが演じる晴原は気象学の天才。頭脳明晰(めいせき)で、人命がかかる緊迫した状況で「気象災害」を相手に一手先を読む力を披露します。そんな完璧なキャラクターながら、毒舌で周囲とぶつかることも多い役柄です。そんな晴原が、仲間とぶつかり合いながら唯一無二の「最強SDMチーム」を作り出すストーリーになります。

共演は、ヒロイン役が注目の若手俳優・出口夏希さんで、水上恒司さん、ハナコ・岡部大さん、夏帆さん、真矢ミキさんら実力派ぞろい。しかも、舘ひろしさんが、SDMを支える特命担当大臣の園部肇一を演じることが発表されています。重厚な人間ドラマを見られそうで、この春ドラマで1番の注目作になりそうです。


■“篠原涼子×バカリズム”コンビが異色のコメディー作品を生み出す

次に紹介するのは、篠原涼子さんとバカリズムさんがダブル主演を務める『イップス』(フジテレビ系)です。完全オリジナルのミステリーコメディー作品で、脚本は人気放送作家のオークラさんと、さまざまなドラマを手掛ける森ハヤシさんが担当予定。毎週金曜日の21時から放送されるドラマで、初回は4月12日となります。

篠原さん演じる“書けなくなった”ミステリー作家・黒羽ミコ(くろば みこ)と、バカリズムさん演じる“解けなくなった”エリート刑事・森野徹(もりの とおる)がバディを組む作品です。

ドラマタイトルの「イップス」は、心の葛藤などが原因で「できていたことができなくなってしまう」心理的症状。同作品は“イップス”を抱えた2人が手を取り合い事件を解決していく、これまでになかった設定となります。

しかも、今作では小気味良い会話劇が繰り広げられるようで、軽妙なストーリー構成で『古畑任三郎』(フジテレビ系)をほうふつとさせる構成を予定。篠原さんとバカリズムさんの力量をたっぷり堪能でき、ハマる人も多そうです。

篠原さんは、バカリズムさんが脚本を担当した映画『ウェディング・ハイ』で主演を担当。初共演ながらコンビネーションが良さそうで、コメディエンヌとしての篠原さんの魅力を感じられそうです。

篠原さんはここ最近ではシリアスな演技や母親役を演じることが多かったですが、代表作の『ハケンの品格』(日本テレビ系)や『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ系)など、コメディー作品でも魅力を発揮。今回は、クセ者のバカリズムさんとの共演で、これまで見たことのない新たな篠原さんが引き出されそうです。

また、脚本や出演を務めた作品が次々とヒットし、『殺意の道程』(WOWOWプライム)、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)などで評価を得ているバカリズムさんに大注目です。

役者としても底知れぬ実力を持つバカリズムさんが、今回は演じることに注力していることで、とんでもない爆発力を見せる可能性が大。すでに公開されている先行映像を見ても、篠原さんとの掛け合いが抜群で、ドラマにグルーヴ感を生み出しています。

犯人役には個性的なゲストが多数出演する予定ですが、第1話はトリンドル玲奈さんが担当。「熱波界の魔法少女」をうたう熱波師・電撃ウィッチ麻尋を演じるとのことで、早くも普通ではないドラマの匂いがプンプンとし、期待が持てる作品になりそうです。

■前作越えなるか? 今田美桜が魅せる『花咲舞が黙ってない』に期待

最後に、外せないのが『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)でしょう。主演の今田美桜さんは今1番勢いに乗っている俳優と言っても過言ではなく、注目度が抜群です。2014、2015年に杏さん主演でドラマ化された『花咲舞が黙ってない』の新シリーズで、原作は池井戸潤さん。前作が大ヒットを記録した作品で、毎週土曜日の21時放送となり初回は4月13日の予定です。

大手銀行の窓口係から本部の臨店班へ異動になる主人公・花咲舞(はなさき まい)が、さまざまな騒動や不祥事を解決するストーリー。間違っていると思ったことは徹底的に追及する舞が変わらずに描かれ、心がスッとするようなドラマとなります。

このドラマのポイントは、少し下世話になりますが杏さんが完成させた「花咲舞」を、今田さんがどう演じるかにあります。

映画『東京リベンジャーズ』でヒロインを務め、「第45回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞。映画『わたしの幸せな結婚』、ドラマ『トリリオンゲーム』(TBS系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)と、次々と話題作で主要キャラクターを演じ、2025年のNHK連続テレビ小説『あんぱん』で主演にも抜てきされた今田さん。さまざまな役を魅力たっぷりに演じられる繊細な演技力を持ちあわせているので、「花咲舞」としてどんな化学変化を起こすのか大いに注目です。

また、そんな今田さんを支えるのは、山本耕史さんと菊地凛子さんという実力ある個性派俳優。

山本さんが演じるのは、舞の上司となる相馬健(そうま けん)で、出世コースから外れた“あきらめた男”が、舞のバディとしてどんな掛け合いを見せてくれるのか期待大。山本さんは常に圧倒的な存在感で素晴らしい演技を見せているだけに、どんな相馬を描き出すのか楽しみです。

また、菊地さんは、舞のライバルとなる昇仙峡玲子(しょうせんきょう れいこ)を演じます。いずれは銀行初の女性取締役になれると言われるスーパーエリートで、どんなバトルを見せるのか楽しみです。また、前作で相馬健役を演じた上川隆也さんが、舞の叔父で理解者・花咲健役として出演。どんなサポートを演出するのかにも注目が集まります。

■月9や日曜劇場、朝ドラなど注目ドラマが豊作
ここまで3作品を厳選しましたが、他にもさまざまな良作が勢ぞろいしています。月9作品は『366日』(フジテレビ系)、日曜劇場は『アンチヒーロー』(TBS系)、さらには、伊藤沙莉さん主演のNHK連続テレビ小説『虎に翼』も放送が開始しています。

リアルタイムでの視聴を逃してもTVerなど見逃し配信もある中で、ぜひとも今回紹介した作品を見て、楽しい春を過ごしましょう。

この記事の筆者:ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。